updated: 2024
アクティブラーニングの手法9選
多様な価値観への理解力や、激しい時代変化に即応した発想力・応用力など、企業が社員に求める能力はこれまでと大きく変化しています。これからの人材育成に必要とされ注目を集めているのが「アクティブラーニング」です。従来型の受動型のセミナーや社内研修と異なり、受講者が能動的主体的に学習へ取り組むのがアクティブラーニングの特長です。
本記事では、企業研修などにアクティブラーニングを導入するメリット、注意点、9つの手法について紹介します。
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アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、受講者が能動的に取り組む学習形態を指します。まずは、アクティブラーニングについての概要と導入が進む背景について紹介します。
アクティブラーニングの概要
アクティブラーニングは、1990年代にアメリカの大学で導入されはじめた学習法です。従来型の教育は、講師が前に立って受講者に指導、板書をうながすもので、受講者はおのずと受け身の姿勢になります。対して、アクティブラーニングはグループワークやディスカッション、ディベートなどのように受講者が主体となって能動的に学ぶ手法です。そのため単に知識を得るだけではなく、主体性や認知力、論理的思考力、発想力などの能力を育成できるのです。
日本でも、まずは大学に導入され、小、中、高校へと広がっていきました。
アクティブラーニングの導入が進んでいる背景
日本の大学でアクティブラーニングが導入された背景には、大学教育改革に向けた文部科学省(以下「文科省」)の発信があります。2012年8月に行われた中央教育審議会では、第82回総会において「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」が取りまとめられています。
この中で、アクティブラーニングは「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」ものであると位置づけられました。
また、2017年に文科省により公開された教育課程に関連する調査研究では、アクティブラーニングの視点から学習・指導方法を改善させるための実践研究を行うことが掲げられています。教育現場において、アクティブラーニングは今後も広がりを見せていくことでしょう。
アクティブラーニングを採用する企業が増えている
アクティブラーニングは企業にも広がりを見せています。20世紀後半の高度成長期に社員として求められた資質は、「指示通りに業務を正確に行う力」でした。しかし、グローバル化やIT化が日進月歩で変化する現代においては、自ら考え、情報を収集し、課題を見つけ、率先して解決する力が求められています。
それができる人材を育てるために、社内研修等においてもアクティブラーニングを導入する企業が増えているのです。
企業がアクティブラーニングを導入するメリット
アクティブラーニングを採用するメリットには、以下のものが挙げられます。
- 業務の流れや個々の作業の実体験により、早期戦力化が期待できる
- 問題を見つけて本質をとらえ、解決に向けて考えられるようになる
- 得た知識や情報を深く考え、実践へのアプローチを見いだせるようになる
- 自分とは異なる意見を傾聴し、周囲の人と協調する力がつく
- 物事を多面的にとらえて論理的に考えるようになる
- 情報取捨選択してわかりやすくまとめ、発信できるようになる
- リーダーシップが身につく
また、ただ聞いているだけのセミナーと異なり受講者が能動的に学びに取り組むため、知識をより早く身につけ、それが長く定着しやすいのも大きなメリットです。
アクティブラーニングによって身につく力は、企業イノベーションの下地作りにも役立ちます。社内コミュニケーションが円滑になったり、チームの結束力が強まったりと、ビジネス環境において社員に求められるスキルを学び向上させるカギが、アクティブラーニングによって見いだされるはずです。
企業研修にアクティブラーニングを導入する際の注意点
以上のように、アクティブラーニングには企業にとっても数々の導入メリットがあります。しかし、「とりあえずアクティブラーニングを導入してさえおけば万事解決できる」というわけではありません。
アクティブラーニングにはさまざまな手法があり、それぞれで身につけられる能力が異なります。まずは、社員に何を身につけてほしいのか、導入の目的をはっきりさせておきましょう。さらに導入目的を定期的に振り返ることで目的に沿った結果が出ているのかを確認し、都度つど見直しを図ることが大切です。目的以外でも参加人数や研修に割ける時間の長さなどによっても適した手法が異なります。常に最適な手法を選べているのかについても留意したいところです。
評価方法やフィードバックのあり方も、あらかじめ検討しておきましょう。
アクティブラーニングでは、テストの採点のようにわかりやすく数値で結果が出るわけではありません。理解度や習熟度、あるいは参加者の言動や周囲との協調性などの評価項目と判定基準を明確にしておき、各項目に対して講師や観察者がどう判断したかを記録する必要があります。もし、研修に対して受け身になっている人がいたら、プログラム内容自体を再考することも必要でしょう。
また、講師には、コーチングスキルやファシリテーションスキルが求められます。期待通りの効果を得るためには、適切にスキルを有した人に講師を依頼することが大切です。講師を自社内でまかなう場合は、その社員に対して必要なスキルを身につけるための能力開発が必要でしょう。トレーナーズトレーニングなどの専門的な育成プログラムを利用すれば、時間はかかるものの社内講師を確保することができます。
オフラインの他、オンラインで受けられるアクティブラーニングも
アクティブラーニングのなかでもディスカッションやディベートなどは、オンラインでも取り入れやすい手法です。
特にコロナ禍以降は、リモートワークを採用している企業がたくさんあります。オンラインによるアクティブラーニングであれば、社員にスキルを身につけてもらう機会を与えられます。その手法がディスカッションであれば「聞く、話す」機会が格段に増え、社内コミュニケーションの促進にも一役買うはずです。
顔を合わせて話す機会が減っている現在において、社員は「これで大丈夫なのか」という漠然とした不安を抱きがちです。他の社員とのオンタイムで話せず、作業や進捗に対する確認がしづらいからですないからです。オンラインでのアクティブラーニングなら、社内コミュニケーションの絶好の機会となりえるだけでなく、社員の不安を払しょくし、スキルを伸ばすことも不可能ではないのです。
参考:アクティブラーニングとは?具体例や企業研修に導入するメリット・注意点を解説|あそぶ社員研修
アクティブラーニングの手法9つ
アクティブラーニングには20種類以上の手法があるといわれています。ここでは、企業の研修に役立つアクティブラーニングをいくつか紹介します。
- Think-Pair-Share
- ラウンド・ロビン
- ピア・レスポンス
- ジグソー
- マイクロ・ディベート
- LTD(Learning Through Discussion)
- フィールドメソッド
- チーム対抗型多人数討論
- ケースメソッド
1.Think-Pair-Share
「Think-Pair-Share」は、他者と意見を比較することにより、自分自身の考えを深めながら明確にしていく手法です。やり方は簡単で、テーマに対して考え、討議し、発表します。
1. 講師が出した問いかけに対して、ひとりで数分間考えます
2. ふたりペアになって互いの考えを伝え合い、議論を行います。
互いの考えが異なった場合は、「なぜそう思ったのか」根拠を伝え、可能ならひとつの答えに統合します。統合ができなければ、それぞれ独立させた答えとします。
3. その後4~6人ほどのグループ、または全体に対して自分たちのペアが話し合った内容を紹介します。
2.ラウンド・ロビン
「ラウンド・ロビン」は、ブレインストーミングの簡易版。4~6人のグループにわかれ、順番にアイディアや意見を出していく手法です。
1. 講師から与えられた質問や課題を受けます
2 グループで時間制限や何周意見を言い合うかを決めます
3. グループ内で順番に意見を出し合います。
ポイントは、意見に対して質問や評価をしないこと、簡潔に新しい考えを次々に発言していくことの2つです。必ず全員が発言しなければならないため、ふだんあまり発言しない人からも発言を引き出せる点がメリットです。
3.ピア・レスポンス
「ピア・レスポンス」は、ペアやグループで「書く・話す」と「読む・聴く」双方の立場を体験できる手法で、レポートやプレゼンテーションの準備過程で内容を発表し合い、感想や改善策を伝え合う方法です。相手にわかりやすく伝える表現力や、他者の意見や批判を受けて改善する力を強化できるのが特徴です。
- 発表するレポートやプレゼンテーションのアウトラインを確認
- 自分のアウトラインを他のメンバーに伝えます
- 聞き手は内容についての質問や確認、よかった点や改善点を伝えます
- 交代しながら全員が発表します
- 聞き手から得た意見を踏まえてレポートやプレゼンテーションの内容を改善します。
4.ジグソー
「ジグソー法」は、4~6人ほどのグループにわけ、各メンバーに異なる役割を与えた上で、役割の専門家としてグループ内で協力し合いながら与えられた課題を解決する手法です。各メンバーが互いに自分しか知らない知識や情報をわかりやすく説明するため、表現力や説得力を培うほか、聞き手はそれを理解する力、そこからの発想力やまとめあげる力を伸ばせます。
進め方としては、以下の通りです。
- 講師からグループ全体の課題内容と解決に必要な学習内容を聞います
- グループ内で学習内容の分担を「専門家」という形で決めます
- グループを離れ、専門家だけが集まり、担当する学習内容について学び、グループでアウトプットする最適な方法を話し合います
- 再びグループで集まり、それぞれが「専門家」として学習内容を伝え、課題の解決方法をグループでまとめます
5.マイクロ・ディベート
「マイクロ・ディベート」は、名前の通り小規模なディベートのこと。3人一組で行う、ディベートの簡易版をイメージするとわかりやすいでしょう。一般的なディベートと同じように、異なる立場での論理的思考力や表現力を高められることに加え、短時間で実施できるのが大きなメリットです。
- 3人一組になります
- 講師から与えられたテーマに対し、3人が肯定・否定・ジャッジ係にわかれます
- 肯定側・否定側はそれぞれの理由を5つ以上書き出し、ディベートを行います
- 3人の役割を交代しながら、3回ディベートを行います。
6.LTD(Learning Through Discussion)
「LTD(Learning Through Discussion)」は、「話し合い学習法」という名で知られている手法です。個人で行うステップ1と、グループで行うステップ2にわかれており、自己学習能力や思考力、チームワークを高められる点が特徴です。詳しい進め方は以下の通りです。
ステップ1
- 課題文を読み、全体像を把握します
- 課題文の中にわからない言葉があれば調べてます
- 課題文の中で1番重要な部分を把握し、自分の言葉でまとめます
- 3でまとめた主張を支持する事例、根拠を複数見つけます自分の経験やニュース、書籍などから得た情報をもとに、課題文との類似点、相違点、疑問点など関連付けられる点をまとめます
- 課題文と関連する自分の体験や考えをまとめます
- 課題文の優れている点、改善点をまとめます
- ステップ2で発表するシミュレーションを行い、質問を想定と回答を用意します
ステップ2
- グループで共に学ぶ意識を共有、雰囲気作りをする
- わからなかった言葉の意味を質問したり、新しい発見があった言葉を紹介したりします
- 課題文の著者の主張について、内容をグループで話し合い、相違点についても考えます
- 何か話題を選択し、議論します
- ステップ1の5の部分でまとめた情報について、グループで共有し議論します
- ステップ1の6の部分でまとめたものをグループで共有し、議論します
- 課題文の優れた部分や改善点についてグループで議論します
- 議論について振り返り、評価します
7.フィールドメソッド
「フィールドメソッド」は、主に屋外で行うアクティブラーニングです。現場に出向き、体験・発見を通して課題解決力を養います。たとえば、「実店舗を観察して客の行動を観察し、改善点を導きだす」など、課題の設定の仕方によって新人研修から経営層対象の研修まで、幅広い層に有効です。
フィールドメソッドには、主に以下のものが挙げられます。
- 発見研修:自分の発見によって習熟できるように導いていく方法
- 問題解決研修:自分で問題点を発見して解決できるようにする方法
- 体験研修:ボランティア活動や異なる職場・部署での体験から、習熟していく方法
- 調査研修:さまざまなことを自分で調査し、課題の発見から解決までの一連のプロセスを考えさせる方法
いずれも受講者は個別またはグループで、テーマについての仮説を立て、講師から調査方法のレクチャーや動機づけを受けたのちに現場に出向きます。現場では、対象について観察、調査、分析を行います。体験を終えたあと、課題や解決方法をグループで話し合います。
8.チーム対抗型多人数討論
「チーム対抗型多人数討論」は、名前の通り多人数の場で取り入れられるディベートです。対戦型の課題発表なのでゲーム感覚で入り込みやすく、また相手への競争意識からスキルを伸ばしやすい面があります。
流れは以下の通りです。
- 講師が用意した10個ほどのテーマから、関心があるものを選択します
- 同じテーマを選んだ受講者3~4人でチームを組みます
- チームでもうひとつテーマを選び、計2テーマについてチームで調査し、まとめます
- 発表用のレジュメ案を講師に提出します
- 講師が各テーマの上位2チームを選んで発表し、質疑応答を行います。質問内容はチーム単位で考えます
- 発表した2チームの勝敗を投票で決めます
チーム対抗型多人数討論は、受講者と講師との密なコミュニケーションが前提とされています。そのため社員研修に取り入れる場合は、講師役を社内から募る、もしくは定期的に依頼している外部講師にお願いする必要があるでしょう。
9.ケースメソッド
「ケースメソッド」とは、実際にあった事例をもとに課題を明らかにし、最善策を探っていく手法です。解決策を主体的に検討するには、受講者自身にある程度の知識や経験が求められます。そのため、新人研修よりも中堅以上の社員研修に適している手法といえるでしょう。
まずは取り上げる事例を決めます。受講者が個々でその事例について分析を行い、意見をまとめておきます。その後、数人でグループを作り、討議します。チームメイトの意見を取り入れながら持論の修正、強化をし、グループとしての意見をまとめていきます。最後に、まとめた意見を全体で発表し、講師が取りまとめます。
ケースメソッドを行うスタイルには、主に以下のものがあります。
- グループ・ディスカッション:受講者同士で討論を行い、結論を出させる方法
- ディベート:受講者がテーマに対し肯定側、否定側にわかれて議論し、課題の解決策を考える方法
- グループ・ワーク:受講者同士がグループになり、調査や討論、作業を実施。課題の解決策を考える方法
自分の意見をわかりやすく伝える力、課題を多角的にとらえる力を磨ける手法です。
アクティブラーニング研修ができるサービス3選
アクティブラーニング研修ができるサービスを外注することもできます。ここでは、株式会社IKUSAが提供するものを3つご紹介します。
合意形成研修 コンセンサスゲーム ONLINE
コンセンサスゲームとは、参加者同士でコンセンサスを得る(合意形成)ことで、与えられたテーマ課題の解答を導き出すゲームです。コンセンサスゲームでは、ジャングルや宇宙などを舞台としたストーリーの中で、グループで所有しているアイテムに優先順位をつけ、グループ全員からのコンセンサスを得ることで、危機的状況から脱出することを目的としています。
合意に達することはとても重要ですが、簡単にできることではありません。このアクティビティを通して、よりスムーズな合意形成へとつながることでしょう。
IKUSAが提供する合意形成研修 コンセンサスゲームは、対面とオンラインのどちらでも実施可能です。
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OODAチャンバラ合戦
IKUSAが提供するOODAチャンバラ合戦は、勝つためのフレームワークであるOODA LOOPと、チャンバラ合戦を融合した体験型研修です。
OODA LOOPとは、Observe(見る)、Orient(わかる)、Decide(決める)、Act(動く)という意思決定の4つのプロセスを高速で回す(LOOP)ことです。これにより、判断・意思決定を素早く行えるようになります。OODA LOOPを講義で学び、チャンバラ合戦で体を動かしながらOODA LOOPを繰り返し実践し、振り返りを行うことで定着させます。
このOODA LOOPは、合戦で相手チームに勝つための戦略立案に大いに役立ちます。
楽しく実践的に研修を行いたい方におすすめのアクティブラーニング研修です。
リアル探偵チームビルディング
リアル探偵チームビルディングは、ジグソーメソッドを活用した推理ゲームです。仲間と協力をしながら推理を進めるなかで、コミュニケーション力や情報整理能力、論理的思考力を身につけることができます。
参加者は大グループとその中にある小グループに所属し、小グループで獲得した情報の断片を大グループで共有、という手順を繰り返し、謎解きを進めていくゲームです。
ゲームをクリアするには参加者同士の協力が必要不可欠。アクティブラーニング研修をお探しの方に、ぜひおすすめしたい内容となっています。
また、リアル探偵チームビルディングのオンライン版として、「リモ探」もございます。リモートワークでのオンライン研修をお探しの方におすすめです。
まとめ
変化が激しい現代においては、指示を待って指示内できっちり動ける能力より、自分で状況を把握し、思考し、行動に移れる能力が必要です。ところが実際は「社員に積極性がない」「言われたことはできるが、自分でどうすればいいのか考える力がたりない」と感じる管理職・経営者も多いでしょう。
アクティブラーニングによる社員研修は、社員に能動的に取り組んでもらう内容です。おのずと主体性や論理的思考力など、身につけさせたい能力が養われ、戦力の底上げへとつながります。
アクティブラーニングにはさまざまな手法があり、今回紹介したもの以外にもユニークなプログラムがいくつもあります。自社の課題や目的に沿ったものを選び、ぜひ一度試してみるとよいでしょう。
IKUSAでは、年間1000件以上のユニークなイベントや研修を支援しています。90種類以上のイベント・研修サービスからお客様のニーズに合わせてご提案させていただき、ご要望に応じたカスタマイズも可能です。サービスの詳細や具体的な事例は下記の資料でご確認ください。
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