防災企業研修

updated: 2024 

企業に必要な避難訓練とは?従業員の命を守るための防災訓練について解説

企業に必要な避難訓練とは?従業員の命を守るための防災訓練について解説

企業が行う避難訓練は一般市民向けの避難訓練とは異なります。従業員の安全を確保することに加え、事業の継続や顧客の損失回避に関する対策が求められるでしょう。災害時、従業員の命や事業を守るためには、企業として備えておくべきポイントがあります。

本記事では、企業が避難訓練を実施する際の手順や、従業員向け・管理職向けの防災訓練について紹介します

 

年間1000件以上のイベント・研修を支援。IKUSAのサービス総合カタログ【デジタル版】を無料配布中
⇒無料で資料を受け取る

アクティビティを通して防災を学べる防災研修・防災イベントの事例集を無料配布中
⇒無料で資料を受け取る

避難訓練とは

避難訓練とは、被災時、いち早く安全な場所を判断し、そこへ移動できるようにする訓練です。建物の中にいるのであれば、避難経路をたどり屋外へと脱出する流れを確認します。「地震発生時は机の下へ入る」「火災時は低い姿勢で移動する」などの動作確認も避難訓練に含まれます。

避難訓練と意味の近い言葉に「防災訓練」があります。防災訓練とは、災害時に最適な行動を取り、被害を最小限に食い止められるように備える訓練です。防災訓練のなかの1つに避難訓練が含まれています。

避難訓練の必要性

中小企業庁が行った「19852018年までの自然災害の被害額」についての調査によると、日本の被害額は世界全体の14.3%を占めていることがわかりました。日本の国土は決して広くないですが、地形や気候による影響は大きく、世界でも自然災害が多い国であることが伺えます。

日本国内に目を向けると、自然災害の発生件数として一番多いのは台風(57.1%)である一方、被害額は地震が全体の8割以上を占めます。地震はひとたび発生するとその被害が甚大になる傾向にあります。内閣府の調査によると、平成23年に発生した東日本大震災での死者・行方不明者は22,318人、住宅全壊は122,039棟に及びました。

また、中小企業庁が公表する図「災害救助法の適用実績」によると、19952017年にかけては「災害救助法」がほぼ全ての都道府県に適用されています。

出典:中小企業庁「2019年版中小企業白書 第3部中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革 第2章:防災・減災対策」

災害救助法は、それぞれの市町村に定められた一定数以上の家屋が全壊するか、災害により多数の人命が危害を受け(もしくは受けるおそれがある)、継続的な救助が必要と判断された場合に適用されます

このデータからも日本での自然災害は、地域によらず各地で発生していることがわかります。企業は、従業員や顧客の命を守るために、普段から備えておく必要があるといえるでしょう。

参考:内閣府「最近の主な自然災害について(阪神・淡路大震災以降)」

避難訓練の目的

企業で行う避難訓練は、「人の安全を確保する」という目的のほかに、「事業を継続させ、顧客への損害を最小限に留める」という目的を持って行う必要があります。避難訓練をはじめとした防災訓練を企業が実施する場合には、従業員の安全を確保したのち、いかに早く通常の状態へ戻せるかという観点も持って取り組むことが大切です。

自治体が市民に向けて開催している「避難訓練」「炊き出し訓練」「消火訓練」などは、市民自身および隣近所での助け合いを目的として実施されますが、企業はこれらに加え、事業継続のための対策を講じる必要があります。

避難訓練の種類

企業で行うべき避難訓練にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

避難誘導訓練

避難誘導訓練は、災害時、従業員や訪問者を安全な場所に誘導するための訓練です。火災や地震など、あらゆる災害を想定して、避難ルートを考えておく必要があります。

避難誘導時のポイントは以下の通りです。

  • 広範囲の人に伝わるように大きな身振り手振りで行う
  • ビルからの避難誘導時は、なるべく階段を利用する。
  • 階段での避難が難しい場合は避難器具を使用する。
  • エレベーターは中に閉じ込められる可能性があるため使用しない。
  • 日頃から避難出口を確認しておく

これらのポイントを訓練で実践しながら確認することで、従業員がとっさのときでも適切な行動が取れるようになるでしょう。

情報収集訓練

情報収集訓練とは、従業員の安否や取引先・顧客の状況、災害状況などの情報を災害時に収集できるようにするための訓練です。情報収集のためのフローは、災害が起きる前に作成することで、迅速に正確な情報を収集できます。

たとえば、従業員の安否確認のために、連絡網やオンライン上の安否確認システムを用意し、それらが正常に機能するよう、訓練にて実際に使用しておくことも大切です。

災害時は、インターネット回線がつながらなくなることも想定されます。そういったときに頼りになるのは、携帯キャリアが災害時に開放する無料の公衆無線LAN00000JAPAN」です。利用することで、手元のスマートフォンやパソコンを使ってインターネットに接続でき、情報収集が格段にしやすくなります。このような情報を社員間で共有し、いざというときに活用できるようにしておきましょう。

被災直後はなすべきことが多く、災害が起きてからではフローに抜け漏れができる可能性が高まります。正しい判断には、正確な情報が不可欠となるため、あらかじめ対応方法を決定しておきましょう。

参照:通信障害の発生時における公衆無線LAN「00000JAPAN」の無料開放 | お知らせ | NTTドコモ

設備や装備品、備蓄品、持ち出し品等の確認訓練

避難や情報収集に必要な備品等を、被災時にもしっかり持ち出せるよう備える訓練です。必要となる備品としては以下のようなものがあげられます。

情報収集用

ラジオ、予備電池、インターネット接続されたタブレット端末等

避難誘導用

懐中電灯、ビブス、従業員名簿、ハンドマイク、雨具、救急用品、ヘルメット等

避難生活用

水、食糧、衛生用品

訓練時はまずこれらが持ち出しやすいようにまとめられているか、どこに置いてあるかを確認します。また、備品のなかで不足しているものはないか、食糧は期限内であるかもチェックしましょう。被災時は、どのタイミングで、誰が持ち出すかも決めておけると、災害時の対応がスムーズになります。

屋内安全確保訓練

主に洪水や高潮などで、建物の高層階への避難により身の安全を確保するための訓練です。ハザードマップなどから自社の建物の浸水時間などを想定したうえで、避難計画に盛り込む必要があります。

福祉施設など、要介助者や要配慮者が多く利用する施設では、被災時に誰がどのようにサポートするか、上階に移動する際に優先的にエレベーターを使用する要介助者などを細かく想定しておく必要があります。

避難訓練を実施するための手順

企業で避難訓練を実施するにあたり、どのようなステップを踏んで準備すればよいのでしょうか。避難訓練を実施するための手順について見ていきましょう。

避難経路の確認

まずは自社の避難経路を確認しましょう。階段、非常口、非常ハッチなど、ルートや障害物などの有無について確認します。地震や火災など実際に災害が起きた場合には、障害物がルートを塞ぐこともあるため、避難経路は複数用意できると安心です。

実施時間を消防署に通知

避難訓練の日時が決まったら、あらかじめ消防署に通知しておきましょう。「通報訓練」として、消防とのやりとりを訓練できる場合があります。119番通報では、正確に伝えるべき情報があり、その伝達が迅速な救助につながります。平常時は問題なく対応できたとしても、災害時には気持ちが動転してうまく伝えられないこともあるでしょう。訓練で必要な内容を把握しておくことが重要です。

また、非常ベルや災害時放送などを使用する場合、近隣の方が、実際に災害が起きたと誤解して通報してしまうことがあります。避難訓練実施の旨はあらかじめ近隣へも周知しておきましょう。誤解から119番通報がなされても訓練とわかるようにするためにも、消防署へは通知しておくのがおすすめです。

避難訓練のシナリオ作成

避難訓練を行うにあたり、シナリオは非常に重要です。シナリオ作成の手順は以下の通りです。

  1. 目標を設定する
  2. 災害の状況を設定する
  3. 被害への対応を時系列で決める
  4. 対応に必要な役割を、参加者へ割り振る

完成度の高いシナリオを作成するためには、以下のポイントを押さえましょう。

  • 目標を明確にする
    「現行の防災マニュアルが有効か確認する」「社員にBCPの重要性を認識してもらう」「災害後の復旧レベルの目安を会社全体で共有する」など、訓練を実施する目的を明らかにしたうえで、シナリオを作成しましょう。実現したいことをはっきりさせることで、シナリオの道筋が逸れることを防げます。また、その目的を社員にも周知することで、訓練への参加意欲も高められます。
  • 災害状況はできる限り細かく設定する
    災害の種類、発生日時、発生場所、災害規模、企業外への影響は必要最低限の項目として設定します。特に災害規模は時間経過によって変わるため、その変化を盛り込むとより実践に近い訓練となります。
  • できる限り多くの参加者に役割を割り振る
    参加者それぞれに役割がある方が、主体的に訓練に参加しやすくなります。役割は指揮者、救護チーム、避難誘導チームなどが考えられます。チームのなかでリーダー、サブリーダーまで決めておけると、まとまって動きやすくなります。
  • 定期的にシナリオ内容を見直す
    同じシナリオを繰り返し行っていると、訓練が形骸化し、思った効果が得られない可能性があります。定期的に見直し、参加する側にとっても学びが多い訓練としましょう。シナリオを訓練前に非公開にしたり、社内で実施するだけでなく、各地の防災センターでの研修を取り入れたりするのもおすすめです。

参加者にとってリアリティのあるシナリオは、災害時に訓練での経験を生かしやすくなります。企業側も、用意しているBCPや防災マニュアルが被災時に有効なものかをきちんと確認できるでしょう。避難訓練を実施する際は、シナリオ作成をしっかりと行うことが大切です。

【従業員向け】あわせて実施したい防災訓練

初期消火や応急救護など、避難方法以外にも災害時に知っておきたい知識や技術があります。ここでは従業員に向けて実施しておきたい防災訓練について紹介します。

初期消火訓練

初期消火訓練では、消火設備が施設や地域のなかでどこにあるのかを確認し、その使い方を学びます。火災が発生した際、延焼を食い止めるためには、火が小さいうちに鎮火を目指す初期消火活動が非常に重要です。

初期消火の仕方を把握していないと、自社の建物から発火したときに、自社の被害が大きくなるだけではなく、近隣に被害を広げてしまうかもしれません。賠償問題や企業の信頼を失うことにつながりかねないでしょう。

身近な消火設備である消火器や消火栓の操作手順を確認しておくことで、その場にいる人で初期消火活動が行え、被害の拡大を防げます。消防車両が到着するまでに、従業員で適切な初期消火ができるよう備えておくことが大切です。

応急救護訓練

災害時に負傷者が発生した場合、その場にいる人で応急救護を行えるかは非常に重要です。総務省消防庁の発表によると、心肺停止時に応急手当を受けた場合の1カ月後生存率は、受けなかった場合の約2倍とされ、応急処置がいかに重要なのかがわかります。応急救護訓練として取り入れたいのは、AED講習および心肺蘇生法講習です。

AEDとは、心停止した人に電気ショックを与え、心機能を回復させる装置のことですAED講習では、設置場所や使用方法を学びます。心肺蘇生法講習では、負傷者の意識や呼吸を確認し、正常な呼吸がない場合には心臓マッサージを行うといった手順を学びます。そのほか、気道確保や人工呼吸などがあり、心肺蘇生法の一連の流れを身につけることができます。

自治体によっては2つの講習を同時に受けられる場合もあります。地域で実施されている講習を団体で受講するなども防災訓練となります。

出典:総務省消防庁「令和4年版 消防白書 第2章消防防災の組織と活動 第5節救急体制」p.141

救助訓練

閉じ込めや下敷き、負傷者の救出など、実際の被災場面をシミュレーションして、救出、搬出する訓練です。担架や階段避難車など、普段使い慣れない器具や、ブルーシートを活用した救助法などを身につけておくことで、一刻を争う救助の際に役立てることができます。

【管理職向け】あわせて実施したい防災訓練

被災下において、企業では、全体の指揮を執り企業の機能を回復させる役割があります。通常業務とは全く異なるため、その動きを想定した訓練を実施することが必要です。

災害対策本部立ち上げ訓練

災害対策本部立ち上げ訓練とは、その名の通り、大地震や豪雨被害などの大きな自然災害が起きた際に必要となる災害対策本部を設置するまでの訓練です。本部立ち上げのためのステップを確認しておくことで、災害発生時に迅速な対応が取れます。

たとえば、災害時、顧客や取引先などから今後の事業見通しについて多くの問い合わせが寄せられる可能性が考えられます。情報整理の仕方や、報道機関への対応などを想定した訓練を行うと安心でしょう。

訓練は机上形式で行います。災害対策本部に必要な役割をメンバーで確認してその担当者を決めましょう。災害状況が書かれた付箋などを用意し、メンバーは緊急を要するものから順番に処理していきます。各対応についてメンバー同士で振り返り、対応が正しいものだったか検討します。

意思決定訓練

災害時、必要な対応は刻々と変化していくことが予想されます。被災直後では負傷者対応などの被害への処置が中心となりますが、時間が経つごとに、取引先への連絡や帰宅困難者対応、操業開始に向けた調査へと内容は変化していくでしょう

たとえば、業務時間内の地震発生を想定した場合、以下のような状況が考えられます。

  • 負傷者が多数発生している
  • オフィスにある棚が倒れかかって危険な箇所がある
  • 地震発生から3日経ち、取引先からの問い合わせが殺到している

メンバーで対応方法を話し合うことで、正確で迅速な意思決定へとつながります。

帰宅計画の立案

地震などで交通インフラが麻痺した場合、従業員が帰宅困難となることがあります。企業はそのような事態にも対応できるよう、あらかじめ数日分の食糧の確保や宿泊設備の準備をしておきましょう。宿泊時の社内レイアウトを検討しておくと、いざというときに役に立ちます。

内閣府が発表している「大規模地震の発生に伴う 帰宅困難者対策のガイドライン」では、帰宅者による緊急車両通行の妨げを懸念し、一斉帰宅は抑制するよう基本方針を出しています。企業に対しては3日程度の一時滞在場所としての役割が期待されています。

出典:内閣府が出している「大規模地震の発生に伴う 帰宅困難者対策のガイドライン」

自衛消防隊編成訓練

自衛消防隊とは、火災、地震などの災害による被害を最小限に食い止めるために、防火の観点において編成された組織です。防火管理が義務付けられた建物に編成されます。利用者や従業員の命を守るため、初期消火よりも本格的な消火活動を消防隊到着前に行えるよう訓練することが目的です。

訓練内容としては、設定された被害状況を全て確認し正確に報告するための訓練や、火災状況や負傷者の発生を想定した対処法を学ぶ訓練などがあります。

避難訓練を外部委託して防災意識を高める

避難訓練を重ねていくうちに、内容が形骸化してきてしまうと、従業員が訓練に身が入らず、思ったような成果が得られないことも考えられます。従業員に訓練へ目を向けてもらい、防災の意識付けを行うためには、主体的に訓練に参加してもらうことが大切です

株式会社IKUSAでは、防災の要素を競技種目に取り入れ、体を動かしながら知識を身につけられる、災害体験型アクティビティ「防災運動会」を提供しています。運動会としての楽しさと防災に関する学びが両立できるサービスです。

これまでにない形での避難訓練を試してみたいという場合には、ぜひ一度IKUSAまでご相談ください。

⇒防災運動会の詳細をまとめた無料資料を受け取る

⇒防災謎解きの詳細をまとめた無料資料を受け取る

まとめ

企業で行う避難訓練、防災訓練には、一般市民向けにはない、事業継続性や顧客・従業員の安全性の確保が念頭に置かれた対応が求められます。シナリオを丁寧に作成し、役割分担を細かく確認して、限られた時間で最大の効果が上がる訓練を実施しましょう。

 

IKUSAでは、年間1000件以上のユニークなイベントや研修を支援しています90種類以上のイベント・研修サービスからお客様のニーズに合わせてご提案させていただき、ご要望に応じたカスタマイズも可能です。サービスの詳細や具体的な事例は下記の資料でご確認ください。
⇒無料でサービス総合カタログ【デジタル版】を受け取る

お問い合わせはこちら

この記事を書いた人

さおり
インタビューやコラム記事を中心に執筆・編集に携わっています。その場の雰囲気やその事の魅力がぎゅっと伝わる文章がつくれるよう邁進中。関東在住。犬とゴルフが好き。
RELATED ARTICLES関連する記事
RECOMMENDおすすめ記事
PAGE TOP