防災

updated: 2024 

AI防災とは?AIが防災に必要な理由とメリット、活用事例20選を紹介

AI防災とは?AIが防災に必要な理由とメリット、活用事例20選を紹介

昨今、災害予測や早期復旧など、防災に関するさまざまな分野でAI技術が活用されています。そのため、今まで以上に精度の高い防災対策を実現できるAI防災に期待が集まっています。

本記事では、AIが防災分野に求められる理由やメリットについて解説するとともに、AIの導入事例を紹介します

 

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AI防災とは

AI防災とは、AI技術を用いてデータを分析し災害対策に生かすことです過去の災害データなど大量の情報を、AIを使って分析し、災害発生やその規模を予測し対策を検討するといったことに役立てられています

AIが防災分野に求められる理由

日本は世界から見ても屈指の自然災害大国です。日本では地震や台風、線状降水帯などの自然災害が各地で多発する一方で、少子高齢化により人手不足が加速しています。災害時の人手不足を補うためにも、AIを活用した避難支援、災害対策が必要です。

これまでは大量の情報を集めても、それを効率的に共有、分析、活用する術がありませんでした。AIが導入されることで、これまで人間には扱えなかった大量の情報の処理が可能となるため、より精度の高い防災サービスの提供につながります。

AI防災のメリットと課題

防災分野にAIが実用化されることで、次のようなメリットと課題が明らかになってきました。

AI防災のメリットと課題

AI防災のメリット

AI防災の課題

  • 災害分析、被害想定が素早く行える
  • 災害が発生してすぐに支援できる
  • 分析結果への責任の所在が曖昧
  • 機械学習のため、精度の高いデータを大量に用意しなくてはならない困難さ

発生したデータを素早く分析・共有できるようになったことで、災害発生後の素早い対処ができるようになりました。これは人命に関わる防災の分野においては非常に大きなメリットといえるでしょう。AIを防災に取り入れる際には、これらのメリットや課題を理解したうえで、どのように活用していくかを検討していく必要があります。

防災におけるAIの導入事例20

ここからは、AIを防災分野に活用した具体的な事例を紹介します。どのように導入するか検討している際にはぜひ参考にしてください。

1.津波避難におけるAI活用

富士通株式会社は、国立大学法人東北大学災害科学国際研究所、国立大学法人東京大学地震研究所、川崎市と進める津波避難訓練において、AI活用の実証実験を行っています。

2011年に発生した東日本大震災では、自身の現在位置まで津波が到達することが予想できなかったという事例がありました。そこで、現在位置の浸水可能性をAIによって判定し、その結果を個人のスマホに送信することで、避難の意思決定を後押しするアプリを開発しています。

参考:富士通株式会社「津波避難におけるAI活用の実証実験を実施」

2. SNSを活用したAI防災

LINE株式会社は国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)と連携して、ユーザー数の多いコミュニケーションアプリ「LINE」において災害時に役立つ機能の充実や活用方法の研究を行っています。

LINE」に防災向けAIチャットボットアカウントを開設し、災害発生時に収集した情報を、NIEDの持つ情報共有・統合技術と連携させています。府省庁、自治体などが災害状況を迅速に把握し、効果的な対応ができるよう取り組んでいます。

参考:LINE「【コーポレート】LINE、防災科学技術研究所と「インターネット・AI技術を活用した防災・減災に向けた連携協力に関する協定」を締結」

3. AIを活用して河川水位の判定

株式会社日立ソリューションズ・クリエイトは、同社の強みである画像認識技術をベースに、収集した画像からAIで水位を判定する「河川水位判定サービス」を開発しました。河川の水位監視業務の負担を軽減するとともに、監視員の安全確保や周辺住民への早期避難を促せます。

「河川水位判定サービス」はあらかじめ学習を済ませた状態で提供されるため、導入直後からさまざまな河川で利用できるのが特徴です。

参考:株式会社日立ソリューションズ・クリエイト「エンジニアリング会社との協創により「河川水位判定サービス」を提供」

4.AIで全世界の降水分布を可視化・予測

株式会社ウェザーニューズはアメリカのNVIDIAと連携し、ディープラーニング技術を活用したAIを使って全世界の雨の状況を可視化し、予測することを目指しています。

東南アジアなど大雨被害の多い地域では、特に気象状況の予測が重要です。しかし、これらの地域は発展途上国が多く、人材の育成やインフラ整備に課題がありました。本プロジェクトでは衛星画像を基に雨雲レーダー画像を生成するため、従来の気象観測インフラを利用する必要がありません。そのため、設備がない地域でも気象予測が可能となります。

これまでとは全く異なるアプローチでの気象予測が確立できれば、従来の気象レーダーなどをベースにした予測技術が持つ課題も解決すると期待されています。

参考:ウェザーニューズ「ウェザーニューズ、全世界の降水分布を高精度に可視化・予測するAIプロジェクトでNVIDIAとコラボレーション」

5.通信ケーブルの台風被害をAIで予測

NTTは、大型台風による全国各地の通信ケーブルの被害について、AIで予測し、迅速な初動対応につなげるシステムを導入しています。AIの予測に基づき、復旧に必要な資材や人員を台風上陸3日前に把握しておくことで、復旧完了までの期間を1週間程度短縮できるとされています。

これまでは、担当者の経験によって判断されていたため、作業員の宿泊場所や資材置き場の確保といった初動の遅れが課題でした。AIを導入することにより初動対策の強化が期待されています。

参考:ニュースイッチ「NTTが被災予測にAI導入、通信ケーブル早期復旧につなげる」

6.より安全な避難経路をAIで分析

株式会社Agoop(アグープ)では、人の動きを視覚化した「流動人口データ」を使って、「避難行動分析」「異常検知AI」の実証実験を行っています。

これまでの避難訓練では一斉に決められた経路で避難していましたが、その経路が被災時に本当に安全なのか、それぞれの自宅から実際にはどう避難するのかなどのデータが不足していました。

そこで、避難訓練参加者がインストールしたアプリを通じて、人の位置情報から「避難行動分析」を行い、「異常検知AI」が平常時の人の流れと比較して滞留が多いエリアを異常地点として導き出します。分析を通じて、現状の避難経路に隠された危険をあぶり出し、より安全な避難経路へと見直す取り組みとなっています。

参考:ソフトバンクニュース「平常時の人流データを防災に生かす。ビッグデータとAIを活用した実践的避難訓練」

7.AIによる画像解析で被災建物数を予測・公開

MS&ADホールディングスは、安心・安全な社会を実現するため、防災や減災の分野で官庁や大学との共同研究を進めています。その取り組みの1つである「cmap」は、台風や豪雨、地震によって起こると予測される被害を無料で一般公開しているサイトです。台風や豪雨の情報については1時間ごと、地震情報については観測してから約10分後に、地図上に表示・更新されます。

また、地図上にはAIが解析した気象・災害・ライフラインに関するSNS情報が表示され、被害予測と実際の被害の両方が、1つのサイトで確認できます。

参考:MS&ADホールディングス「データや AI を活用した防災・減災」

8.119番通報の会話記録から対応提案までをAIでサポート

兵庫県姫路市では、消防司令業務においてAIによる支援機能を構築し、運用を開始しました。119番通報の通話中に、AIの音声認識システムを利用して司令員と通報者の会話をリアルタイムで解析します。会話データからキーワードを抽出して、その対処法をタブレット端末に表示。司令員はデータを基に通報者に対応を提案します。

これまでは、問い合わせに対し、紙の資料で対応してきましたが、量が膨大なため情報の扱いに苦慮してきました。AIによる支援を導入することで、個人の経験に依存せず、さまざまな通報に対応できるようになっています。

参考:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】43 AIを活用して緊急時の消防指令員の負担軽減・業務支援【兵庫県姫路市】」

9.画像認識技術で車中泊を含めた避難者数を把握

関東学院大学ではAI・ビッグデータを活用した地震災害の分析に取り組んでいます。携帯電話の位置情報や航空写真からAIで車両台数を計測し、車中泊にて避難している人数の分析・予測を試みています。

これまでは避難所に避難する人を中心に避難計画が策定されていました。しかし、車中泊を選択する避難者もいることから、その人々も含めた計画を立てる必要性が高まっています。関東学院大学では、自動車画像をディープラーニングさせたAIによる航空写真の画像認識を利用し、正確な避難者数を把握することで、防災計画に役立てることを目指しています。

参考:関東学院大学「AI・ビッグデータを活用して都市防災を進化させる新たな手法を模索する」

10.衛星データのAI解析による土砂崩れ災害検出

株式会社Ridge-iAIに土砂災害に関する情報をディープラーニングさせ、衛星データを解析し、土砂崩れ箇所を高速で自動検出できるシステムを開発しました。システムを利用することで、熟練の検査員が行っていた作業が1秒以内に処理できるようになり、作業を大きく効率化させています。

今後は、過去に土砂災害が起きた土地の降水量や地形を学習し、災害が起こりうる箇所を予測できるようなシステム開発も視野に入れています。

参考:株式会社Ridge-i「第4回宇宙開発利用大賞 経済産業大臣賞を受賞」

11.SNS上の災害情報を3D地図上に可視化

株式会社JX通信社は、自社が提供する「FASTALERT(ファストアラート)」を使ってSNSやニュースアプリの利用者から寄せられる災害や事故、事件などの情報をAIで解析し、位置情報とともに即時配信してきました。これらの情報を防災分野でも効果的に活用できるように、国土交通省が提供する「Project PLATEAU(プラトー)」の3D地図上に防災情報を可視化する実証実験を行いました。

防災情報を可視化することで、被害をリアルタイムで分析したり、事前に被害を予測したりするシステムの開発へとつなげることを目指しています。また、場所に紐づいた情報が蓄積されることで、その地域・地点における災害リスク低減も期待されています。

参考:JX通信社「JX通信社、「3D地図」上でSNSをはじめとしたビッグデータ上の災害・事故情報を可視化する実証実験を開始」

12.災害情報を収集・提供するAI防災チャットボットの実装

AI防災協議会は、2021年にLINE公式アカウント「AI防災支援システム」を開設しました。このアカウントでは、避難支援機能や災害情報に加え、災害時に住民同士の助け合いや自治体の災害対策に活用できる「AIチャットボット『SOCDA』」の「情報投稿機能」が実装されています。

「情報投稿機能」では、まず被災地にいると思われるユーザーに対し、AIチャットボットが「大丈夫ですか」と質問します。ユーザーは質問に対して文章で答えたり、位置情報をつけた写真を送信したりすることで、AIがリアルタイムで届く被害状況を整理するとともに、地図上に情報を可視化します。不足している情報をAIが補うことで、被害状況の早期把握につながります。

参考:防災・減災 | LINE Corporation

13.画像解析と気象データから路面状態を判別

一般財団法人日本気象協会と株式会社Specteeが共同開発した「AIによる路面状態判別技術」を、福井県の路面状況確認カメラに応用する実証実験が行われました。

路面状態の判別は、計測機器を使うのが一般的です。しかし、計測機器は高額なため、十分な台数を道路に設置するのが難しく、「凍結」「積雪」などの判別ができない路面があることが課題でした。カメラによる判別が可能になることで、低コストで広範囲に路面状態を判別できるようになります。豪雪地帯では積雪時の車の立ち往生や車両スタックが課題となっており、この技術が道路交通の安全確保につながると期待されています。

参考:株式会社Spectee「AIによる「路面状態判別技術」の実証実験を福井県にて開始~スペクティ、日本気象協会、福井県による共同実験 ~ 道路の安全や防災対応に」

14.AI解析を利用し、崩落危険箇所の抽出

応用地質株式会社では、同社の積み上げてきた地質調査および防災・減災事業における知見を学習した AIIoTの防災センサーを連携させた「ハザードマッピングセンサソリューションシステム」を提供しています。センサー設置箇所をシステムによりリアルタイムで監視できるため、運用コスト削減や監視員の負担を軽減できます。

参考:気候変動適応情報プラットフォーム「防災・減災に役立つ各種情報サービスの提供」

15.大規模言語モデルを活用し、被災現場画像をフリーワードで絞り込み

NECは災害時の現場画像の絞り込みに大規模言語モデル(LLM)を活用し、画像分析をより効率的に進める技術を開発しました。

近年はテキスト情報以外に、SNSにアップされた写真やドライブレコーダーなど、画像情報が重要性を増しています。しかし、画像での情報は検索性が低く、大量の画像のなかから意図に沿ったものを探し出すのが難しいという課題がありました。

そこでNECは、LLM による言語解釈と画像分析を掛け合わせることで、「火災が起きている建物を探してください」というようなフリーワードによる画像の絞り込みが可能になりました。画像情報をより生かせるようになることで、救助活動や初動対応の迅速化につながるとされています。

参考:NEC「NEC、大規模言語モデル(LLM)と画像分析により被災状況を把握する技術を開発」

16.AIで余震場所を予測

Google AIの深層学習を活用して、世界中の大地震に関するデータベースを基に、余震が発生する可能性のある場所を予測する研究を進めています。余震のタイミングはある程度予測できるものとされていますが、発生場所の特定は困難とされてきました。

まだシステムは確立されていないものの、将来避難計画や復旧作業計画などに活用されることが期待されています。

参考:Google「AI支援科学で地震の余震場所を予測」

17.地震波形のAI解析で起こりうる地震を推定

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)では、AIを活用した地震波形ビッグデータ処理により断層を解析し、日本内陸部で発生しやすい地震断層の特徴を把握できるストレスマップを作成しました。

これまでは、データの解析に時間がかかったため、地域を限定したマップが作られていました。AIを活用した解析によって、従来より多くのデータが分析できるため、日本全国の地震断層マップが作成できます。

このマップにより、その地域でどのようなタイプの地震が発生するかの予測が立てられ、さらに巨大地震による誘発地震が発生する可能性も評価できます。

参考:産総研「日本内陸部のストレスマップをオンライン公開」

18.監視カメラ映像をAI分析して災害アラートを発信

AIカメラ総研では、「AI搭載クラウドカメラ」の可能性について言及しています。AI搭載クラウドカメラは、録画映像がリアルタイムでクラウドに保存されるので、どこにいてもその映像にアクセスできるメリットがあります。さらに、集まった録画映像をAI解析することで、たとえば、川の急な増水や規定水位の超過をアラートや避難勧告メールとして利用者に知らせるといったことに活用できるでしょう。

「いつもと違う」状況をカメラ搭載のAIが判断することで、リアルタイムの情報が提供され、迅速な避難行動につながります。

参考:AIカメラ総研「災害時のAI搭載クラウドカメラの可能性を考察 急激に変動する気象変化をタイムリーに把握、AIが“いつもとの違い”を認識」

19.AIアナウンサーによる災害情報の24時間放送

有限会社日本メディテックスは人工知能「Amazon Polly」を利用した災害用連続放送システム「Da Capo」を提供しており、入力した原稿を生成AIが読み原稿に変換し、自動アナウンスできます。

24時間連続でのアナウンスが可能で、災害時の情報提供と相性が良いのが特徴です。平成30年に発生した西日本豪雨では、夜中に発令された避難情報を、放送スタッフがクラウドを経由してアクセスした「Da Capo」で放送し、その後人間のアナウンサーが出社できるまで最新情報を提供し続けられた事例があります。

参考:有限会社日本メディテックス「Da Capo Version.7.00」

20.AIを用いた洪水予測システムを開発

IDEホールディングスが提供する洪水予測システムは、AIの深層学習を用いて多数の雨量観測所・水位観測所から寄せられるデータを解析し、より精度の高い水位予測が可能になることが期待されています。

従来から国土交通省や気象庁、自治体により主な河川でのリアルタイム洪水予測は行われてきましたが、数時間先の水位を正確に予測することは難しいのが現状でした。このシステムにより、16時間先までを予測可能となっています。さらに、精度評価の結果から、もっとも誤差が小さいと評価されました。今後は、さらに改良を重ね、これまで未経験の規模の洪水に対する予測精度も高めていくことを目指しています。

参考:ID&Eホールディングス「AI(人工知能)を用いた洪水予測システムを開発」

まとめ

AI技術は防災に関するあらゆる分野で応用され始めています。防災分野は人命を左右するものであり、最新の技術を取り入れ、これまで以上に効果的で精度の高い策を講じることは重要です。

紹介した事例を参考に、事業や活動にAIを取り入れてみるのはいかがでしょうか。

 

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この記事を書いた人

さおり
インタビューやコラム記事を中心に執筆・編集に携わっています。その場の雰囲気やその事の魅力がぎゅっと伝わる文章がつくれるよう邁進中。関東在住。犬とゴルフが好き。
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