updated: 2024
防災訓練のアイデア25選を紹介!防災訓練を行う目的別に解説
目次
台風や地震など災害の多い日本では、定期的に防災訓練を行うことが大切です。個人や地域、企業単位で防災・減災への意識を高めておくことは、自身や地域、企業を守ることにつながります。そのため、地域や企業のなかには、防災訓練の実施を検討しているところもあるでしょう。
そこで今回は、災害の種類に合わせた防災訓練や、初動対応や応急救護、救助の仕方を学べる防災訓練についてお伝えするとともに、被災や災害の理解を深める防災訓練や、企業や自治体向けの防災訓練について紹介します。
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防災訓練とは
防災訓練とは、災害時に素早く最適な行動を取り、被害を最小限に食い止められるようにするための訓練です。台風や地震など自然災害が多い日本は、平時からいざという時に備えておくことが大切です。
また、防災・減災への取り組みでは、一人ひとりの備えはもちろん、地域や組織全体でも日頃から防災訓練を実施して備えておくことが大切です。しっかりと準備しておくことで、災害時に助け合うことができます。
防災訓練はとても重要な取り組みですが、訓練にはさまざまな種類があり、地域や企業などによって防災訓練の重要度が異なります。
たとえば、初動対応や応急救護などは、多くの方が訓練しておくとよいものでしょう。しかし、水害や火山噴火などの災害については、防災訓練が必要ないと判断できる地域もあるかもしれません。防災訓練は、目的を定めて効果的な訓練を行うことがポイントです。ここからは目的別に、防災訓練のアイデアを紹介します。
【初動対応を学べる】防災訓練のアイデア2選
防災訓練のなかでも、初動対応に関する訓練は命を守るうえでとても大切です。まずは、災害発生直後に必要な初動対応のアイデアについて紹介します。
1.連絡・通報訓練
連絡・通報訓練は災害が発生した際に、スムーズに救急や消防に通報するための訓練です。
救急・消防に通報する際、災害発生場所や負傷者・逃げ遅れた方の有無など、伝えるべき情報が多くあります。しかし、災害発生により気持ちが動転した状況だと、必要な情報を正確に伝えられないことも考えられます。あらかじめ伝えるべき内容を確認しておくことで、いざという時に焦らず落ち着いて通報できるようになります。
また、団体や企業内で災害発生時の安否確認方法を定めている場合は、その訓練も実施しましょう。連絡網であれば、連絡先の確認や伝えるべき内容を決めて連絡を取り合います。オンライン上の安否確認システムなどを利用する場合には、メンバーや社員全員が正常にシステムにアクセスできるか確認しましょう。
2.初期消火訓練
火災が発生した際、延焼を食い止めるためには、火が小さいうちに鎮火を目指す初期消火活動が重要です。初期消火訓練では、消火設備が施設や地域のなかでどこにあるのかを確認し、その使い方を学びます。
通報から救急隊が到着するまでにかかる時間は、約9.4分といわれています。身近な消火設備である消火器や消火栓の操作手順を確認しておくことで、その場にいる方で初期消火活動が行え、被害の拡大を防げます。
【災害やシーン別】防災訓練のアイデア5選
日本は地震や台風、火山噴火など、さまざまな種類の自然災害が起こります。災害別の対応を学んでおくことは、適切な判断をくだすうえで大切です。
1.火山噴火対策訓練
日本には活火山が多くあり、火山噴火を想定した訓練も大切です。火山周辺では噴石、溶岩流、火砕流、火山ガスなどの被害が考えられ、特に火山灰の被害は広範囲におよびます。たとえ遠いエリアであっても、その被害を受ける可能性について念頭に置いておく必要があるでしょう。
火山噴火の被害は、数週間単位での長期化が想定されます。また、火山活動レベルは刻々と変化するので、臨機応変な対応と的確な情報収集能力が不可欠です。
そのため、火山噴火対策訓練は、消火訓練などに見られるルーチン型の訓練ではなく、ロールプレイング型の訓練が有効です。参加者は、気象庁や市町村役の「コントローラー」と「プレイヤー」の二者に分かれ、プレイヤーはコントローラーから与えられる情報を基に判断し行動します。決められたシナリオ通りに動く訓練ではないので、より実践に近いものになるでしょう。
出典:火山噴火に対応したロールプレイング型防災訓練企画のご紹介|一般社団法人砂防・地すべり技術センター
2.水害対策訓練
近年の異常気象の影響もあり、大雨や台風への対策の重要性は増しています。ハザードマップで浸水や河川の氾濫へのリスクを確認し、被害をあらかじめ想定しておきましょう。
浸水を食い止めるための土嚢や止水板の設置訓練、避難誘導訓練のほか、被災後の片付け作業までシミュレーションしておくと、復興の目処を立てやすくなります。企業では大雨や台風の情報収集体制や、災害時の勤務体制の調整なども検討しておくとよいでしょう。
3.地震対策訓練(シェイクアウト訓練)
日本では各地で地震発生のリスクが存在し、東京都が発表した首都直下地震(都心南部直下地震)の都内での被害想定は、死者6,000人以上におよぶとされています。
さまざまな地震対策訓練のなかでも、日本シェイクアウト提唱会議が運営するシェイクアウト訓練は、地域全体で行える訓練です。おもに市町村が主体となり、決められた日時に防災無線や緊急情報配信サービスなどで地震発生の情報を発信します。参加者はそれを合図に「まず低く」「頭を守り」「動かない」の安全行動を取ります。
参加するためには、あらかじめホームページや自治体を通じて登録する必要があります。規模の大きい訓練となることから、周囲にもインパクトを与えるため、防災に目を向けるきっかけとなるでしょう。
出典:東京都総務局総合防災部防災計画課「東京都の新たな被害想定」
4.自治体アカウント登録訓練
情報収集の手段として、SNSをはじめとしたオンラインサービスは欠かせない存在となりました。各地域自治体も、SNSアカウントを活用した情報提供に取り組んでいます。しかしこの方法は、「オンラインサービスを利用していない層に情報が届きにくい」という課題があります。
そのような層に対しては、自治体アカウントの登録や使い方の講習会を開催するとよいでしょう。受講者が効率的に情報を得られるだけでなく、ハッシュタグを用いた投稿や写真添付ができるようになることで、防災情報の発信者として協力を仰ぐことにつながります。
5.避難誘導訓練
避難誘導とは、災害時に人々が安全な場所や屋外へ逃げられるようにするために誘導する訓練のことです。災害が起こった時には、被災者はいち早く安全な場所を判断し、そこへ移動する必要があります。しかし、慣れない場所での避難はうまくいかないものです。企業は訪問者がスムーズに避難できるよう、平常時から避難誘導の訓練をしておく必要があります。避難誘導時のポイントは以下の通りです。
- 遠くから確認できるように大きな身振り手振りで行う。
- ビルなど多層階の建物からの避難誘導時は、なるべく階段を使用する。
- 階段の使用が難しい場合、避難器具を使用し、エレベーターは閉じ込めを避けるため使用しない。
避難誘導訓練では、避難出口への経路を確認し、その周辺に避難を妨げる物が置かれていないかもチェックしましょう。避難誘導灯は、いざという時に出入り口への方向を示す大切な役割を果たします。正常に機能するかも日頃から点検しておくことが大切です。
【応急救護を学べる】防災訓練2選
負傷者が発生した際、救急車両が到着するまでの処置によって生死を分けることがあります。助かる命を助けるためにも、多くの方が応急救護の知識を身につけることは大切です。ここでは、応急救護を学ぶための防災訓練を紹介します。
1.AED講習
AEDとは、心停止状態になっている心臓に対して電気ショックを与え、機能を回復させるための装置です。総務省消防庁の発表によると、心肺停止時に応急手当を受けた場合の1カ月後生存率は、受けなかった場合の約2倍とされています。その場にいる方の対応が、いかに重要かが分かります。
AED講習では、まずAEDがどこに設置されているかを把握し、その使い方について学びます。自治体で講習会が開かれていることもあるので、団体や企業として参加するとよいでしょう。
出典:総務省消防庁「令和4年版 消防白書 第2章消防防災の組織と活動 第5節救急体制」p.141
2.心肺蘇生法講習
心肺蘇生法を身につけておくことは応急救護において重要です。心肺蘇生法を行うためには、正しい手順を学ぶ必要があります。「反応(意識)の確認」「呼吸の確認」「胸骨圧迫」「気道確保」「人工呼吸」といった一連の手順を身につけましょう。
なお、子どもに対する心肺蘇生は留意点が異なります。自社・自団体の事業内容や活動範囲を考慮して、必要であれば子どもを対象とした講習の受講も検討しましょう。
【救助の仕方を学べる】防災訓練3選
被災時は周囲の人々との助け合いがより重要です。救助の仕方を学んだり、周囲への理解を深めたりしておくことが、いざという時に役立ちます。
1.シミュレーション訓練
シミュレーション訓練は、閉じ込めや下敷きなど、実際に想定できる場面をシミュレーションして、救出、搬出する訓練です。担架や階段避難車など、普段使い慣れない器具の使い方をあらかじめ知っておくことで、一刻を争う救助の際に役立てることができます。
器具の使い方を学んだら、要救助者と救助者に分かれて実際に使えるとなおよいでしょう。より実践に近い訓練が、いざという時の冷静な救助につながります。
2.防災グッズ制作ワークショップ
災害時は限られた物資を活用して避難生活を送らなければなりません。そのため、身近な材料で被災時に役立つ防災グッズを作る訓練を行うのもおすすめです。
手作り防災グッズとして、以下のような物が挙げられます。
- 新聞紙で作る防災スリッパ
- ポリ袋で作るレインコート
- 段ボールで作る簡易トイレ
工作感覚で取り組めるので、防災に関心が低い層や子どもをターゲットにした防災訓練としても効果的です。
3.相互理解訓練
障害を持つ方は、災害時の避難がより困難になることが予想されます。それぞれのハンディが、生活にどのような影響を与えているかを理解することで、適切なサポートができるようになるでしょう。
相互理解訓練は、ハンディを疑似体験する訓練です。たとえば、視界がぼやけ、狭くなる「視界ゴーグル」の着用や、指関節などが動かしにくくなる「特殊ジェル手袋」などを活用して、足場の悪い道を歩いたり、非常食を食べたりしてみましょう。実際に体験することで、要救助者がどのようなところに不安を感じ、困るかを想像しやすくなるため、スムーズな支援へとつながります。
【被災・災害の理解を深める】防災訓練のアイデア10選
災害がもたらす被害を実感することは、災害の自分ごと化につながります。被災や災害への理解を深めることも、重要な防災訓練です。
1.被災生活体験
体育館や地域のコミュニティスペースなどを活用し、被災生活を想定した宿泊体験を行います。非常食や水など限られた物資を使って食事の用意をしたり、被災時に使用する寝具での仮眠をとったりなど、災害時の集団生活を体験しましょう。
自治体により異なりますが、避難所での1人当たりの専有面積は「2平方メートル(約1畳分)」が基準となることが多いようです。普段の生活との違いやその不自由さを感じることで、何が必要か、どのような点に困難が生まれるかを考える機会となります。
2.災害VR体験
限りなく実体験に近い体験ができるVRの技術を活用し、地震や火災、風水害などの災害を体験する訓練も効果的でしょう。災害の恐ろしさを肌で感じることで、防災意識を高め、普段からの備えへとつながります。
東京消防庁には「VR防災体験車」があり、地震、火災、風水害の3つの災害を、360°の立体映像と揺れ、風圧、熱によって体験できます。防災VR体験サービスを提供している地域の防災センターや企業もあるので活用するとよいでしょう。
3.煙体験
無害な煙が充満した建物や部屋からの避難体験をすることで、煙の危険性や避難の難しさを実感する訓練です。煙は高いところに集まりやすいなど、性質を理解することで、火災時の避難に活かせます。
市町村などが有している煙体験ハウスを活用したり、体験イベントに参加したりすることで、煙体験が実施できます。訓練後に反省や意見交換を行うと、より災害の理解が深まるでしょう。
4.地震体験
地震体験は、起震車や防災館などを利用し、震度6や7のような巨大地震の揺れを実際に体験する訓練です。強い揺れのなかで自分がどれほど身を動かせるか、揺れなどで落下したり倒れたりして危険な物が身近にないかなどに気づくきっかけとなるでしょう。
職場や自宅の危険箇所に気づいたら、高いところに物を置くのを避けたり、倒れやすい家具を固定したりといった対策を講じましょう。
5.水害体験
体験装置を利用して、水害時を疑似体験します。浸水した時の扉にかかる水圧を体験したり、強い水流のなかを歩行したりすることで、いかに水により避難を阻まれるかを実感できます。
ドアの外側の水深が50cmになると、扉を開けるのに必要な力は100kgにもおよぶとされています。そうなると成人男性でもドアを開けるのは困難です。水害時はいかに早期に避難できるかが、体験を通じて実感できるでしょう。
6.災害図上訓練(DIG)
災害図上訓練DIGは、Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の頭文字を取り、地図を用いて非常時の行動を検討する訓練です。自分たちの住むまちについて、複数人で議論しながら防災への理解を高めます。
どこでどのような規模の災害が発生する可能性があるかをメンバーで考え、地図に書き込んでいきます。まちの構造や危険箇所を見直すことで、必要な対策を事前に講じることができます。
参照:特集 想像力を高めて「もしも」に備える! 災害をイメージし、防災につながる行動へ【コンテンツ編】 : 防災情報のページ – 内閣府
7.避難所運営訓練
避難所運営について事前に運営方法や留意点を学んでおくことは、避難生活の不便さを改善するためにも大切なことです。避難所運営ゲーム(HUG)は静岡県が開発したゲームで、避難所運営に特化した訓練が実施できます。
避難者の年齢、性別、国籍など、それぞれの属性や事情が書かれたカードを、避難所に見立てた平面図にどのように適切に配置するか、また避難所で起こる出来事にどう対応していくかを疑似体験できます。要援護者へのサポートの仕方や、情報共有方法などを参加者同士で意見交換しながら学べます。
参照:避難所運営ゲーム(HUG)について|静岡県公式ホームページ
8.防災街歩き
自治体が発行しているハザードマップを参考にしながら、実際に街を歩いて避難場所や避難経路を確認します。普段暮らしたり働いたりしている街の危険箇所や事前対策について検討します。
街歩き後は参加者同士で気づいた点を共有し、防災マップとしてまとめ、危険箇所やその対策を参加者以外にも共有しましょう。
9.家具類の転倒・落下・移動防止講習
地震時の家具類の危険性を学び、正しい固定方法を身につけるための講習会も、重要な防災訓練です。自宅や職場の危険箇所を見直すことで、災害による被害を最小限に食い止められます。
高齢者など、参加者のなかに自力での固定が難しい方がいる場合には、自治体での助成やサポート業者の案内までできると、より親切です。
10.地域の防災イベント企画
地域のイベントに防災要素を組み込むことで、防災に関心のない層も巻き込んだ防災訓練を実施しやすくなります。イベントとして楽しみながら参加できるので、自然と防災に必要な知識が身につき、地域の防災意識の底上げにもつながります。
株式会社IKUSAでは、災害時をテーマとした謎解きゲーム「防災謎解き」や、“防災借り物競走”といった種目で実施する「防災運動会」など、楽しみながら学べるコンテンツを提供しています。
- 学び要素のあるイベントを開催したい
- 思わず参加したくなる防災イベントを行いたい
- 子どもなど防災意識のない層にもリーチしたい
そんなご要望のある方はぜひ一度IKUSAへご相談ください。
【企業・自治体向け】防災訓練のアイデア3選
企業や自治体では、対策本部の設置など一般的な防災訓練とは異なる防災対策が必要です。ここでは、企業・自治体に必要な防災訓練を紹介します。
1.災害対策本部設置防災訓練
企業や自治体では、大地震や豪雨被害などの大きな自然災害が起きた際、司令塔となる災害対策本部が必要です。そのため、本部を設置や運営をする災害対策本部設置防災訓練を実施しておくことは、企業や地域を守るためにも大切でしょう。
この訓練では、情報整理の仕方や、住民、報道機関からの問い合わせが集中した時の対応方法などを想定した訓練を行います。机上形式の訓練では、災害対策本部の役割や担当者を割り振り、災害状況が書かれた付箋を緊急順に振り分けるといった訓練を実施後、各対応の内容や役割分担について参加者で議論します。本部立ち上げのプロセスを明らかにしておくことで、いざという時の迅速な対応につなげられるでしょう。
2.住民協力要請の訓練
被災現場に何らかの理由で自治体職員や社員が駆けつけられない場合を想定し、地域住民へ協力を要請する訓練です。どこから、どのように情報を集めるか、誰が真偽を確認するかなど、事前に役割分担を決めると、災害時でもスムーズに対応できるでしょう。
特に近年はオンラインでの情報提供が重要となっています。たとえば、自治体が住民に協力要請をする場合には、位置情報をつけた写真を添付して情報提供するなど内容を決めておくことが大切です。
3.災害関連情報発信訓練
災害発生時の情報発信訓練も重要です。自治体の持つSNSなどで、発信する情報内容やその形式、担当などを決めておきましょう。
まとめ
防災訓練はいざという時に適切な行動を取るための事前準備です。初動対応や応急処置、災害理解など目的別に訓練を実施しておくことで、災害時に必要な知識を広く身につけることができます。
自団体や自企業にどのような訓練が必要か検討し、実施してみてはいかがでしょうか。
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