updated: 2024
フォロワーシップとは?リーダーシップとの関係性、重要性、5つのタイプや具体例、実践のポイントまで解説
目次
組織やチームを率いるスキルとしてリーダーシップがありますが、それを支え、相乗効果をもたらす「フォロワーシップ」にも注目が集まっています。リーダーを支える力が加わることで組織はより強いものとなり、活性化していきます。
本記事では、フォロワーシップとリーダーシップの関係性や、その重要性、フォロワーシップにおける5つのタイプ、行動例、実践のポイントを解説していきます。
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フォロワーシップとは?
フォロワーシップとは、リーダーや他のチームメンバーに対して自律的かつ主体的な支援をおこなうことです。
たとえば、リーダーが示した計画が円滑に進むようにチームメンバーに働きかけたり、リーダーの方向性が間違っている場合には、軌道修正できるように助言したりする役割があります。
リーダーの指示を遂行するだけ、という受け身の姿勢ではなく、周囲を見渡して主体的に動いていくことで組織やチームが活性化していくという考えがフォロワーシップです。
フォロワーシップの歴史
かつては、アメリカをはじめとした世界中でリーダーシップ理論の研究を進められていましたが、リーダー以外のメンバーには着目しないものがほとんどでした。
しかし、1990年代はじめ頃になると、「リーダー1人では組織は成立しない」、「それ以外のメンバーの力も含める必要がある」という考えが出始めます。
そのような中で、1992年にカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が、著書である「The Power of Followership(指導力革命―リーダーシップからフォロワーシップへ)」を発表しました。その中で、メンバーがリーダーシップを補完する概念として、フォロワーシップという言葉が使用されたのが始まりです。
フォロワーシップはなぜ求められているのか
フォロワーシップが組織において重要な理由を、2つのポイントで解説します。
1.メンバーの影響が組織の成果の9割に及ぶ
実際にメンバーが成果に及ぼす影響の度合いはとても大きいことがわかっています。
カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によると、成果に対して「リーダー」が及ぼす影響力は全体の1~2割程度なのに対し、「メンバー」が及ぼす影響力は8~9割程度にものぼります。
人数構成がメンバーの方が多いため、この比率はごく自然なものともいえますが、中核をなしているのはリーダー以外のメンバーであることを改めて認識しなくてはなりません。
2.リーダーを支える存在の必要性
変化の激しい現代のビジネス環境に対応していくためには、誰か1人の決断だけで進めてしまうことはリスクを伴います。そのため、必ずしもリーダーの決定が正しいとは限らず、時には異議を唱えていかなければ組織全体が誤った方向へ進んでしまうこともあります。
また、人材不足により、現場の管理をおこないながら実務もおこなうプレイングマネージャー型のリーダーが増えています。リーダーの負荷が高くなってしまうことから、リーダーが適切な判断を常におこなえないこともあるでしょう。
このようにリーダーを支える存在がなければ、組織として誤った方向に進むだけではなく、体制として不健全な組織にもなってしまうため、フォロワーシップは欠かせないものです。
リーダーシップとフォロワーシップの関係性
リーダーシップとフォロワーシップの関係性について以下で解説していきます。
リーダーのビジョンとフォロワーの実行
リーダーには組織が目指すビジョンをメンバーに示す役割があります。対して、フォロワーシップはそのビジョンを具体的な計画にして実行する役割をもちます。
リーダーがどれだけのビジョンを持っていたとしても実行するメンバーがいなければ成果にはつながりません。また、組織の成果の大半を占めるフォロワーシップもビジョンや方向性がなければ動くことができません。
つまり、どちらかが欠けても組織としては成立しないのです。このように、リーダーシップとフォロワーシップは相互関係にあります。
リーダーの意思決定とフォロワーの健全な批判
リーダーの意思決定に対して、フォロワーシップは「健全な批判」をする役割も持っています。
リーダーの意思決定にただ従うのではなく、疑問を感じることがあればそれを率直にぶつけます。1つの意思決定に一石を投じることで議論が交わされ、そこで初めて組織が「リーダー主体のもとで進んでいく」という直線構造から脱却できます。
その結果、チームの活性化につながり、フォロワーシップの力でリーダーを支え、組織を動かしている関係へと繋がっていきます。
フォロワーシップの2つの傾向と5つのタイプ
ロバート・ケリー教授の著書では、フォロワーシップを2つの傾向をもとに、5つのタイプに分けています。
フォロワーシップの2つの傾向
フォロワーシップの大枠の傾向として以下の、「積極的関与」「批判的思考」の2つがあります。
1.積極的関与
「貢献力」とも呼ばれ、リーダーの決定に対して、積極的に支援し、組織の目標達成へと貢献する能力です。
2.批判的思考
「批判力」とも呼ばれ、リーダーの決定に対して、自ら意見を述べることや、方針を正すことができる能力です。
フォロワーシップの5つのタイプ
上記の「積極的関与」、「批判的思考」の2つの度合いから、5つのタイプに分類したものです。
これらはメンバーの優劣をつけるものではなく、メンバーがどのタイプであるかを把握することが目的となります。タイプを把握することにより、どこをサポートすればよいのか、また、「積極的関与」、「批判的思考」それぞれをどう伸ばしていくべきかが明確になります。
1.模範的フォロワー
「積極的関与」、「批判的思考」の両方の傾向が高い、理想的なタイプとされています。
主体的にリーダーへ意見をし、より良い意思決定をリーダーと目指しながら、チームメンバーをまとめる積極性を持ち、組織へ貢献するフォロワーとなっています。
課題に積極的に向き合い、リーダーを含めたチームメンバーを支えることから、次世代のリーダー候補になりうる存在です。
2.孤立型フォロワー
「積極的関与」の傾向は低く、「批判的思考」の傾向が高いタイプです。
リーダーへの建設的な意見はおこなえるものの、積極的な行動はあまりしないため、周囲から孤立しがちで、「評論家フォロワー」と言われることもあります。
思考力は高いため、リーダーやメンバーが積極的にコミュニケーションを取り、孤立させないようにしましょう。信頼関係を築いていくことで、自らの実行や組織への貢献を意識してもらえるようになり、「模範的フォロワー」へと転身することも期待できます。
3.順応型フォロワー
「積極的関与」の傾向は高いものの、「批判的思考」の傾向が低いタイプです。
チームでの行動力や協調性も高いため、良いフォロワーとして見られることが多いといえます。しかし、あくまで指示に従順であり、リーダーへの意見が少ないため、順応型フォロワーが多いと組織の成長という意味では不安を抱えるでしょう。また、リーダーからすると「自身への批判がなく、指示通りに動いてくれる」ため、順応型フォロワーを優先してしまいがちな点に注意が必要です。
順応型フォロワーには、議論の場では積極的に意見を出してもらうなどの働きかけが必要です。
4.消極型フォロワー
「積極的関与」、「批判的思考」の両方の傾向が低いタイプです。
フォロワーという名前はついているものの、組織への改善提案を出すこともなく、組織への貢献度も低いため、「フォロワーシップ」には当てはまりません。
改善するには、本人の目標や希望をヒアリングしてみることや、小さい仕事からおこなってもらい責任感や自信を持ってもらうといった働きかけが必要でしょう。
5.実務型フォロワー
「積極的関与」、「批判的思考」の両方の傾向が中程度のタイプです。
一見するとバランスの良いフォロワーに見えますが、与えられた範囲の仕事は順当にこなしてもらえるものの、期待以上の働きはしてもらえないタイプといえます。
高めの目標を設定してもらいチャレンジしてもらうことや、未来に向けた期待を伝えると、伸びていくかもしれません。
フォロワーシップに当てはまる行動例
フォロワーシップに当てはまる行動の例をいくつか紹介します。
1.自身の仕事をこなし、他の人の仕事も積極的に引き受ける
自身の仕事をこなすことで余裕が生まれ、周囲を見渡す余裕も生まれます。そのため、組織の状況がどうなっているかを確認しやすくなります。
たとえば、リーダーは管理以外に現場の仕事もおこなっていて、業務負荷が高くなっている可能性があります。その場合はフォロワーが自分にできる仕事を考え、自分以外の仕事も積極的に引き受けることで、リーダーが自身の業務に集中できる環境へとつなげることができます。
2.リーダーへの提言を普段からおこなう
リーダーの意見に対して、必ずしも従順である必要も、反対する必要もありません。必要なのは組織として良い方向に向かうための提言です。もしも、リーダーの示す方向性が組織を良くするものではない、と判断したら、それを正せるように提言をおこなう姿勢を持っておきましょう。
自身の発言によって対立することや否定されることを恐れずに、普段から議論をしていく体制を作っておくことで、組織としてリーダーとメンバーに責任を持ち、他人事ではない緊張感を保つことができます。
3.リーダーの意見を全体に浸透させる
リーダーの意見や考えが全てのメンバーに十全に伝わるとは限りません。それぞれの考え方があり、捉え方も異なるため、時には意図と逸れた伝わり方をしてしまうこともあるでしょう。
そういった際にメンバーに再度説明するなどをして、リーダーの意見が全体に正しく浸透すればするほど、作業も円滑に進んでいくでしょう。
4.本来の目的を考えて行動をする
組織の一員として目的に向かって動いていると、どこかで意見が分かれ、対立してしまうこともあります。
しかし、対立することは本来の目的ではありません。意見を通すことにとらわれず、本来の目的を忘れないことが重要です。
5.相手の気持ちを汲み取る
リーダーだけではなく、さまざまなメンバーと関わり、意見を交わす際には、相手の気持ちを汲み取り、不快にさせないマナーを持つことも重要です。
組織内の相手であっても取引先のように丁寧に接し、コミュニケーションが円滑になると、組織が活性化し、生産性向上にもつながります。
6.自身の行動を振り返る
リーダーに助言し、方向性を正していくことも大切ですが、自身の行動が組織にどれだけ貢献できているかを検討する時間も必要です。
不満を伝えるだけでは組織は改善されていきません。自身がどのように行動していくべきかを検討し、自身から改善していく姿勢を持つことで、組織の改善へとつながっていきます。
7.未来的思考で組織を思う
時には失敗することもあるでしょう。その際に反省することも重要ですが、過去にとらわれすぎず、「明日の自分たちには何ができるか」という未来に目を向けることが成功に近づく一歩ともいえます。
失敗も次に生かす経験とポジティブに考え、沈んでいるメンバーがいれば励まし、リーダーのことも前向きに支えることが大切です。
フォロワーシップを実践する際のポイント
ここではフォロワーシップを実践していくうえで、より効果を発揮するためのポイントを説明していきます。
1. 自分のフォロワーシップのタイプを知る
自分が5つのフォロワーシップのどのタイプであるかを知ることで、自分の強みや弱みを把握することができます。
たとえば、模範的フォロワーを除いた、いずれのタイプもフォロワーシップのタイプを決める2つの軸である「積極的関与」、「批判的思考」のどちらか、あるいは両方の傾向が不足しています。不足している傾向とどう向き合い、新たに身につけていくかを考えることで、誰もが理想的なタイプである「模範的フォロワー」へと近づくことが可能です。
強みをどう生かしていくのか、また弱みをどう補っていくのかを考えていきましょう。
2. クリティカルシンキングを心掛ける
リーダーへの意見をする際に、それが感情的なものであってはいけません。感情的に出した意見が正しいかどうかは、誰にも判断することができないからです。
クリティカルシンキング(批判的思考)では、「自分自身を疑う」ことがポイントで、客観的な検討を加え、物事の本質を見極めることが必要です。自分の意見は思い込みではないか、理屈のうえで述べられているのか、なぜそうであると自分は思ったのか。このように自身への「問い」をフローとして組み込み、それから意見を述べます。
こうした「健全な批判」をおこなえるようになることで建設的な意見交換につながります。
3. コミュニケーションの強化
普段から会話がなく、リーダーとも関りづらいと感じていると、問題に直面した時にも意見を伝えづらくなり、組織の動きも停滞してしまいます。
まずは業務と関係ない話からでも会話することを意識してみましょう。たとえば、朝に5分間程度の短いミーティングを入れて会話を促進し、メンバー同士の距離を縮め、風通しの良い人間関係を構築するのも1つの方法です。
4.フォロワーシップ研修の実施
上下関係が強い職場などではフォロワーシップという考えが浸透しづらく、また実践するにあたって何から始めればいいのかわからないかもしれません。そうした際にフォロワーシップ研修に参加してもらうことは1つの手です。メンバー全員で参加すれば、理解度の足並みをそろえることができます。
5. 誰もが完璧ではないことを知る
自分を含めた誰もが一人の人間であり、常に完璧に振る舞うことはできず、欠点も持っていることを知りましょう。誰かがミスをしないかを見張ることや、欠点を非難するのではなく、どうしたらフォローできるかを考えるのがフォロワーシップです。
それが実行できた時、組織を支える良いフォロワーシップになっているでしょう。
まとめ
リーダーがいなければメンバーは働きかけができず、メンバーがいなければリーダーのビジョンを実現することができません。
現代では、一人のカリスマ的なリーダーが組織を引っ張るのではなく、メンバー全員で組織を支えていくことが、より良い組織づくりに求められています。
自身のフォロワーシップのタイプを知り、どうすれば強みを組織に生かせるのか、また弱みはどうやったら補うことができるのか考えていきましょう。その先にあるのは組織全体での大きな成果と、分かち合える喜びです。
ぜひ、フォロワーシップを身につけ、より良い組織づくりにつなげてください。
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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。