updated: 2024
被災時や災害に備えて共助できることは?共助の課題についても解説
災害時は、住民がお互いに助け合う「共助」が大切だといわれています。特に災害発生直後は、救助隊や避難所運営などをする職員の人数に限りがあり、全ての対応を行政や自治体に任せることはできません。災害時に自身や家族などを守るためには、地域住民がお互いに助け合う「共助」が大きな役割を果たします。
けれども、地域のつながりが弱まっていると、いざという時、共助がうまく機能しない可能性があります。平時から助け合いの仕組みづくりについて考え、地域で備えることが大切でしょう。
本記事では、被災時や災害に備えて共助できることをわかりやすく説明します。
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共助とは
「共助」とは、地域の人や市民らが、お互いに助け合うことをいいます。
町内会、自治会などの助け合いや、災害ボランティア、企業による支援活動も共助に含まれます。東日本大震災が起きた時は、全国から被災地復興のためボランティアが集まり、共助による支援活動が大規模に行われました。また、共助とともに災害時の助けとして使われる言葉に「自助」「公助」があります。共助と「自助」「公助」の違いについて見ていきましょう。
自助との違い
自分や家族の身を自分で守ることを「自助」といいます。災害が発生した直後は、一人ひとりが自分の命を自分で守る「自助」を意識するのが大切です。
災害時は、「共助」によって助かる命もありますが、一方で、自分の命が危険にさらされる場合も少なくありません。西日本豪雨の時には、住民を助けようとして命を落とした人がいました。まず自分の命を守ることを忘れずに、助け合う方法を考えることが大切です。
また、災害に備えて、地域のリスクや自分の身を守る方法を知っておくことで、共助に役立てることができます。自分や家族を守ったうえで、地域や身近な人と助け合うようにしましょう。
公助との違い
行政や消防、警察、自衛隊などによる公的な支援を「公助」といいます。大規模災害における火災や救急対応などは、交通網の寸断が起こったり、人員に限りがあったりすることから、平時と比べて対応に限界があることが明らかになっています。
阪神・淡路大震災の時は多くの家屋などが倒壊しましたが、自力で脱出したり、家族に助けられたりした人(自助)、友人、隣人、通行人に助けられた人(共助)がほとんどを占めました。発災後、迅速な救助活動をするためには、「公助」による助けを待つだけでなく、住民同士の「共助」が重要です。
共助のために地域住民ができること
都市への人口集中、地方の過疎化と高齢化で、地域のつながりは弱くなったといわれています。しかし、災害が起きた時、地域住民が助け合うためには、顔の見える関係をつくっておくことが大切です。平常時から防災活動に取り組み、住民同士の交流を図ることで、地域のつながりを強化できるでしょう。ここでは、共助のために地域住民ができることについてお伝えします。
災害時に必要な備品などの準備
災害の発生に備えて地域住民ができることに、備蓄品の保管や防災訓練、ハザードマップの活用、防災マップの作成などがあげられます。
備蓄品の保管
大災害が発生した時は交通網が寸断される可能性があり、食料や水などの公的な支援物資がすぐ届くとは限りません。コンビニやスーパーに買い物客が殺到し、商品が売り切れてしまう可能性もあります。
支援物資の到着が遅れる場合を考えて、自治会などの組織は、水や非常食、非常用トイレなど3日分の備蓄品を保管しておくと安心です。
防災訓練
地域住民による防災訓練を定期的に行うと、防災意識が高まり、住民同士の関係づくりにも役立ちます。共助の力は、以下のような取り組みを繰り返すことで高まります。
- 実施する防災訓練を検討・準備
- 住民へ防災訓練の実施について広報
- 参加者の感想や意見を参考に改善案を検討
自治会によっては、情報収集、避難誘導など、災害時の担当を決めているところもあるでしょう。訓練を通じて、災害時に自分がどう行動すればよいか、理解が深まると、助け合いがしやすくなります。訓練後にアンケートをとることで、地域の課題を知ることにも役立つでしょう。
ハザードマップの入手や周知
地震、台風などによる被害が表示されたハザードマップは、自治体のホームページなどから見ることができます。ハザードマップを見ると、地域の防災上の課題がわかり、対策を立てるのに役立ちます。
ただし、ハザードマップとは何か、種類や何が書かれているのか、知らない人がいるかもしれません。自治会などで入手して勉強会などで周知すると、防災意識の向上に役立つでしょう。
参照:身のまわりの災害リスクを調べる|ハザードマップポータルサイト
防災マップの作成
地域住民によるフィールドワークを行い、地域の危険個所や魅力をまとめた防災マップをつくりましょう。避難場所や避難経路についての理解が深まり、いざという時に助け合いやすくなります。若い世代や子どもたちと一緒に作成することで、防災の知識を次世代に伝えられるでしょう。過去の災害発生個所や、その内容を記入するのも有効な取り組みです。
参照:避難場所の確認と経路を調べる|地理院地図の使い方|国土地理院
防災活動をする組織の立ち上げ
災害が発生した時、共助できるよう備えるためには、防災活動をする組織をつくり、継続的に取り組んだ方がよいでしょう。組織同士が連携して取り組むと、さらに効果が期待できます。
自主防災組織
自主防災組織とは、「自分たちの地域は自分たちで守る」という考えのもとに、町内会や自治会が自主的につくるボランティア組織です。平常時は、防災知識の周知や災害危険個所の把握といった訓練を行います。災害発生時は、情報の収集と伝達、出火防止と初期消火、避難誘導、救出・救護、給食・給水などを受け持ち、地域住民同士の共助をサポートします。
民生委員・児童委員など
民生委員とは、厚生労働大臣からの委嘱により、生活に困っている人の相談に応じ、助言や援助をする人たちです。民生委員は、児童や妊産婦の支援をする児童委員も兼ねており、避難に支援が必要な人々の個人情報を把握している場合もあります。
民生委員・児童委員は、災害対応の専門家ではありませんが、普段の活動をいかして、高齢者などに必要な支援が届くよう、配慮する役割が期待されています。
消防団
消防団とは、火災や災害が発生した時に現場に駆けつけ、消火・救助活動を行う非常勤特別職の公務員です。団員は他に本業を持ちながら、地域に密着した活動をしています。最近は、女性の消防団参加も増える傾向にあり、一人暮らしの高齢者への防火訪問、応急手当の指導などに取り組んでいます。
災害時に地域住民ができる共助
災害が発生した時、救助、避難、炊き出しなど、共助の力が必要な場面が多くあります。親しい人だけではなく、よく知らない人とも協力して共助を進めるには、いざという時の役割分担など、助け合いの仕組みづくりを考えておくことが大切です。災害が発生した時、住民が行う共助の活動について、詳しく見ていきましょう。
救助、応急手当、搬送
災害時では、自分の安全を確保したら、家族や近隣の人の安否を確認しましょう。必要に応じて救助や応急手当をし、安全な場所へ搬送します。防災訓練で、応急手当の方法や、毛布と竹竿で担架をつくる方法を学んだり、搬送の道具がある場所を把握したりしておくと、災害時でもスムーズに対応ができます。
出火防止、初期消火
地震が起きた場合は、揺れが収まったタイミングで素早く火気を消すことが大切です。ガスの元栓を閉め、電気のブレーカーを落とすといったことが出火防止対策となります。避難する際に、こういった注意点について近隣住民同士で声かけし合うことも共助となるでしょう。
火災発生時は、できる限り初期消火を行います。消火器や可搬式ポンプの使い方を把握している場合は初期消火をしましょう。火が大きく燃え広がっている時は、無理をせず自身の安全を最優先することが大切です。
情報収集、伝達、物資
災害が発生すると、情報や物資は行政に集まります。どのような物資が届いたかの情報は、特に重要です。行政職員との連絡方法など、あらかじめ決めている手順にしたがって行動しましょう。
災害発生直後は、間違った情報が広まることがあります。自主防災組織が中心となり、正確な情報を住民や関係機関に伝えましょう。日本語が苦手な外国人にもわかりやすいような方法を考えておくとよいでしょう。
避難誘導、避難所支援
災害時、一人での避難にはリスクが伴います。隣近所の住民同士が声を掛け合って一時集合場所に集まり、複数で避難することで、避難と安否確認が同時に実施できます。
また、自宅に戻れない場合は、避難所で生活することになります。避難所を運営するのは地域住民となるため、あらかじめ作成した運営方法のマニュアルにしたがって行動しましょう。
炊き出し、給水
災害が起きた時は、炊き出しや給水が行われます。ボランティアがつくった温かい食事は、被災者にとってありがたいものです。食中毒が起きないよう衛生面に注意して、安全な食事を提供しましょう。自治会などが用意する災害セットに、使い捨ての手袋を備えておくと便利です。
避難所によっては、座板を外すとかまどになる「かまどベンチ」があるところがあります。訓練などで使い方を学んでおくと、スムーズに使えるでしょう。
要配慮者支援
障害がある方や高齢者は、災害が起きた時、さまざまな困難に直面します。自力で避難することが難しかったり、避難を呼びかけるアナウンスが聞こえなかったりするかもしれません。障害の特性に応じた支援が必要となるでしょう。
たとえば、避難所での滞在スペースに配慮するのも支援となります。視覚障害がある方にはトイレに行く際あまり移動しなくて良い場所、車いすの人には段差が少なく出入口に近い場所を選びましょう。聴覚に障害がある人には、文字や絵、スマートフォンを使って説明すると、コミュニケーションがスムーズになります。
災害時に被災地外から共助できること
「共助」は、近隣に住む人々の助け合いだけに限りません。自分が暮らしているまちから遠く離れたところで、大規模な災害が発生した時に支援活動をする場合も共助となります。ここでは、被災地外からの共助について詳しく説明します。
義援金・募金・寄付
日本赤十字社は、大規模な災害が発生した時、被災者に生活資金として配分する義援金を受け付けています。こうした義援金や被災地外での募金活動、寄付も「共助」だといえるでしょう。また、被災地で生産された物品を購入し、経済的に応援する方法も広く行われています。
災害ボランティア
大規模な災害が発生すると、各地から災害ボランティアが復興支援に被災地を訪れます。こうしたボランティアも「共助」に含まれる取り組みです。
災害ボランティアには大きな期待が寄せられていますが、参加する場合には事前準備が欠かせません。被災地でボランティアをするかの判断や、宿泊場所や必要なものの用意などが必要です。一人ひとりが被災地の負担にならないよう注意して行動することが求められるでしょう。
阪神・淡路大震災の時には137万人がボランティアに参加し、「ボランティア元年」と呼ばれました。大規模な災害が発生するたびに、さまざまな専門性を持ったボランティアが支援に加わり、行政とボランティアが連携することも増えてきました。企業のなかには、育成講座を開いてボランティアに参加する社員を応援するところがあり、災害ボランティアによる共助に期待が集まっています。
共助が抱える課題
災害が起きた時、共助はとても重要な役割を果たします。しかし、地域コミュニティのおける共助には課題があります。ここでは、共助が抱える課題について説明します。
地域コミュニティの弱体化
災害時、安否確認や救助・救出活動、避難所の運営は、住民同士が互いに良く知り合っている方がスムーズにいきます。そのため、地域住民の関係を築くことは防災対策となるでしょう。
住民同士の関係を構築する方法として、町会や自治会といった地域活動の活発化があげられます。ところが、町会、自治会への加入率は低下傾向にあり、地域の人の結びつきは弱くなっています。防災活動に参加する人が少なく、地域コミュニティが弱体化している地域がある点は、共助が抱える課題といえるでしょう。
また、こうした背景には、高齢化、単身世帯の増加、女性や高齢者の就業率の向上といった生活様式の変化が考えられます。「時間がとれないこと」を理由に地域活動に参加しない人がいる一方で、地域活動に参加している一部の住民に負担が偏っていると不満の声もあがっています。コミュニティを強化する以前に、住民の分断を生む恐れがあることも共助が抱える課題でしょう。
共助を活性化するために
地域住民のつながりが弱まるなか、共助を活性化し、いざという時に助け合う関係をつくるにはどうすればよいでしょうか。以下のような方法が考えられます。
防災学習会の開催
災害への対応を「自分ごと」として考える機会として、防災学習会を開くと、住民の交流にも役立ちます。
- 地域の災害リスクがわかるハザードマップの見方
- 大雨が降った時の防災行動を時系列にまとめた「マイ・タイムライン」のつくり方
- 防災まちあるきと意見交換を組み合わせたもの
上記のような内容の防災学習会が考えられます。参加者同士が自己紹介し、顔見知りになる機会をつくるとよいでしょう。
他分野の団体などと連携
自主防災組織に参加する地域住民が増えない場合には、異なる分野の団体などと連携して防災訓練を行うのも方法です。
たとえば、地域の高校生と高齢者が多い地元の町内会が連携し、避難訓練を行うのもよいでしょう。生徒が高齢者の家を訪問し避難誘導をすることで、世代を超えた交流に役立ちます。あるいは、地元町内会と高齢者向け配食サービスが連携することで、炊き出しなどの防災訓練を行うこともできるでしょう。
この他に、商店街・町内会・大学が連携した要援護者への取り組み、耐震診断士や研究者がつくるNPO法人との連携など、コミュニティの活性化を目指すさまざまな試みが各地で行われています。
参照:災害対応能力の維持向上のための地域コミュニティのあり方に関する検討会 報告書|消防庁国民保護・防災部 防災課
地域活動のデジタル化
コロナ禍をきっかけに、地域活動も、オンライン会議などデジタル化が進みました。
自治会費の電子決済や電子回覧板など、地域活動をデジタル化することで、若い世代の参加者を増やしたり、効率化につなげたりできないか、模索する動きがあります。
まとめ
災害が起きた時は、みんなで助け合う「共助」が大きな意味を持ちます。共助は、近隣、地域の人同士の助け合いだけではなく、全国から駆けつける災害ボランティアや義援金、寄付なども含まれます。
共助の課題としては、ライフスタイルの変化によって、地域の人間関係は希薄化していることがあげられます。いざという時に助け合うため、普段から顔が見える関係をつくっておくことが大切です。
防災活動をする組織の立ち上げ、役割分担などの備えをしっかりして、災害に強いまちづくりを目指しましょう。
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