updated: 2023
社員の自己効力感を高める方法とは?4つの要因と注意点も解説
目次
「自分なら上手くいく」と自信がある人は、目標に向かって前向きに取り組むことができ、その目標を達成する確率はきっと高いでしょう。目標を達成すればさらなる挑戦を行い、失敗しても「次こそは達成してみせる」と諦めずに挑むことができます。
このような個々の自信にもとづき、「自分の成功を信じることができる認知」を自己効力感と呼びます。
ビジネスにおいても、成果や生産性の向上、前向きな振る舞いが周囲にもポジティブな影響を与えることが期待できます。個人の性格や感覚によっても左右されますが、企業側がサポートすることで社員の自己効力感を高めることも可能です。
本記事では、自己効力感とはなにか、自己肯定感との違いを説明し、自己効力感によって得られるメリット、自己効力感のタイプや、影響する4つの要因、社員の自己効力感を高める方法と注意点を解説します。
自己効力感とは
自己効力感とは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、「ある行動を遂行することができる、と自分の可能性を認知していること」です。英語では「self-efficacy」(セルフ・エフィカシー)と呼ばれます。
「自分ならこの業務をうまくこなせる」、「自分ならこの計画を成功させられる」など、自分の成功を信じることができる「自信」ともいえるでしょう。また、自己効力感において「他者から見てどうであるか」、「自信となる根拠が事実であるか」といった点は重要ではなく、自分が成功の可能性を認知し、成功を信じているという点が重要です。
自己効力感の効果
自己効力感は主に「実際に行動に移せるか」に関わります。行動の動機には「行動が成功することにより得られる良い結果」という「期待」が根底にあります。期待できる結果があって初めて行動することを検討しますが、その行動が成功可能かどうかを判断する材料が「自己効力感」です。
たとえば、自己効力感が低く、「自分にはできない」と思ってしまえば、成功した先に良い結果が待っていたとしても行動に移す気概は生まれないでしょう。しかし、「自分にはできる」と思うことができれば積極的に行動に移すことができます。そのため、自己効力感は行動の原動力ともいえるでしょう。
自己効力感が低いとどうなるか
反対に、自己効力感が低い場合には、先にも述べた「行動に移しづらい」という点以外にも、さまざまな悪影響を及ぼすことがあります。たとえば、問題に直面しても解決するために動くことができない、自分にはできないと思っているため努力もできない、いざ行動に移せたとしても最初の1回の失敗を自分の全てだと認識して「やっぱり自分にはできなかった」とさらに自己効力感を下げるなど、悪循環に陥りやすくなってしまいます。
自己効力感と自己肯定感の違い
自己肯定感は「ありのままの自分を認めること」であり、他者との比較はせず、あくまで自分が自分としての価値を認める感情のことです。容姿が優れている、業務をこなせる能力をもっている、財力があるといった理由がなくとも自分を否定することなく、認めることができます。
自己効力感は、最初に目的や、取るべき行動があり、それに対して「自分ならできる」と思う認知のことです。「自分には成功できる可能性がある」など、自信につながる認知が必要な点で自己肯定感とは異なります。
また、自己効力感は「自分にできるかどうか」が軸になりますが、自己肯定感はそれにすらとらわれず、たとえ「自分にはできない」としても自己を肯定することができます。そのため、この2つは必ずしも連動しません。
なかには「自分に自信をもつことはできないが、そのままの自分でよい」と思う、自己肯定感は高く、自己効力感が低いといった人も存在します。
自己効力感を高めるメリット
自己効力感が高いことで得られるメリットを紹介します。いずれもビジネスシーンでも生かせるメリットでしょう。
目標達成率が上がる
自己効力感が高ければ、目標に対する自信をもてるため、モチベーションが高く、前向きに取り組むことができます。これは目標に向かう力が強いともいえ、成功のための対策を事前に考えるなどの取り組みも多くなります。
また、成功すればより高い目標に挑戦できるでしょう。
不安や緊張が軽減される
どれだけ高い能力をもっていても、不安や緊張を抱えていると普段通りのパフォーマンスを発揮することは難しくなります。初めて行う業務や、苦手な人と行う業務などの場合はなおさらです。
そのような場合でも、自己効力感が高ければ、不安や緊張が軽減され、パフォーマンスも発揮しやすくなります。
失敗してもへこたれない
自信をもって臨んでも時には失敗することもあるでしょう。自信があったからこそ、ショックが大きいこともありますが、自己効力感を高く保つことで失敗してもへこたれず、「次こそは対策を立て、成功させよう」という前向きなモチベーションを保つことができます。
自己効力感の測定方法
自己効力感は、自分の内側にある認知ですが、測定する方法があります。
臨床心理学者である坂野雄二氏と東條光彦氏によって開発された一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)が測定方法としては一般的です。カウンセリングや看護、教育や職場のストレスチェックなど、幅広い分野で使用されています。
「行動の積極性」、「失敗に対する不安」、「能力の社会的位置づけ」という3つの大項目に対して、全16の質問があり、「はい」「いいえ」の二件法で答えていくことで自己効力感を測定できます。得点は最大16点で、得点が高いほど自己効力感が高い状態となります。
自己効力感の3つのタイプ
自己効力感にはタイプがあり、3つに分類することができます。
1. 自己統制的自己効力感
自己統制的自己効力感とは、自分の行動のコントロールに関する自己効力感のことです。3つのタイプのなかでもっともスタンダードで、「自己効力感」といった際には「自己統制的自己効力感」を指すことが多いです。
ここまで説明してきた自己効力感の「自分ならこの目標を達成できる」などの、自分を信じられる状態です。
自分を信じているため、目標に対しても積極的で成功率が高く、失敗しても自分を信じているからこそ諦めずに、再度チャレンジできる心をもつことができます。
2. 社会的自己効力感
社会的自己効力感とは、対人関係に関する自己効力感のことです。社会的自己効力感は、乳児期から発達が始まり、発達したものは大人になってからも失われないといわれています。
「自分は他者とうまく関係を築いていける」と信じている状態のことで、相手の気持ちに寄り添うことができ、人間関係が円滑になりやすい特徴があります。
また、気難しい相手や、周囲から敬遠されている相手でも「自分なら良いコミュニケーションがとれる」と自信をもっているため、前向きに接することができます。
3. 学業的自己効力感
学業的自己効力感とは、学業に関する自己効力感のことです。試験で学年トップを取ったことがある、受験でレベルの高い大学に合格したなど、学業に関する成功を過去におさめていると強くなる自己効力感といわれています。
「学ぶことに対して自分は自信がある」と信じている状態のことで、ビジネスシーンにおいても有効です。新しいスキルやノウハウを学ぶ際に真剣に取り組むことができ、習得の早さや精度の高さが期待できます。
自己効力感に影響する4つの要因
アルバート・バンデューラは自己効力感に影響する要因として下記の4つを挙げています。
これらは自己効力感を高めることができるといわれています。
1. 直接的達成経験
直接的達成経験とは、自分が経験した成功のことで、「成功体験」ともいえます。
直接の経験のため、自分のもっている能力、成功したときの状況は実感を得やすく、「自分はやればできる」という手ごたえがあります。そのため、もっとも「自分が成功できる」と認知しやすい要因でしょう。
注意点
経験にもとづくため、失敗経験が多く、それが多く思い出されるような状態であれば自己効力感が低下する恐れがあります。
2. 代理的経験
他者の成功体験を目にすることも自己効力感に影響します。代理的経験は、他者を観察し、自分が成功するイメージと重ね合わせることで「自分も成功できそう」という自信につなげるものです。
同じ部署の同僚など「自分と似た能力をもつ他者」の成功や、顧客への難しい対応を先輩がこなしているのを観察して学ぶことなども代理的体験に含まれます。
また、身近な人でなくとも、「過去に危機的な状況に陥った人が逆境に打ち勝った」、「小さな知恵から大ヒット商品を生み出し企業を大きくした」などの体験談も、自分のなかのやる気が刺激され、自己効力感が高まります。
注意点
代理的体験はあくまで他者の成功であり、直接的達成経験と比較すると根拠が弱い認知といえます。そのため、代理体験によって得た自信で失敗してしまうと、「他の人はうまくいくのに自分はダメなのか」と自己効力感が低下する可能性が高いでしょう。
3. 言語的説得
言語的説得とは、他者から褒められる、励まされるなど、他者の言葉によって自己効力感を得ることです。
ポジティブな言葉は心を豊かにします。取り組む業務に不安がある場合でも、「大丈夫だよ」「貴方ならできる」といわれれば自分のなかでも「できる」という認知が生まれます。
必ずしも上司など、自分よりも上の立場である人からの言葉である必要はなく、同僚などでも効果があるとされています。ただ、自分が尊敬している人など、より信頼を寄せている相手からの言葉あれば効果が高く、自分とまったく関りのない相手だと効果がないこともあります。
注意点
言語的説得は他者の言葉に左右されるものであり、必ずしも褒められるなど、ポジティブな言葉だけがかけられるとは限りません。そのため、褒められれば自信がつくものの、批判されれば自己効力感は一気に低下してしまうこともあります。また、自分では他者の発言をコントロールできないため、「自己効力感を高めたいから褒めてもらう」といった自発的に自己効力感を高める行動も難しいです。
発言一つに浮き沈みし、他人の顔色をうかがうようになってしまう恐れもあるため、自己効力感を高める方法として言語的説得だけに頼らないことが重要です。
4. 生理的情動的喚起
自分の体調や精神状態によっても自己効力感は上下します。生理的情動的喚起は、体調がよい、心にゆとりがあるなど、身心の状態によって高まる自己効力感です。
風邪を引いたときなど、体調が悪いときは自信も失いやすいものですが、よく寝た次の日や、体力が十分なときは「なんでもできそうだ」と思いやすいものです。
また、緊張していることに気づいてしまうと自己効力感を低下させますが、リラックスしていることに気づければ「問題ない」と判断でき、自己効力感を高められます。そのほかにも、好きな音楽を聞く、本を読む、詩を書くなど、安らいだり、高揚したりする行動も自己効力感を高めることにつながります。
注意点
体調や心の小さな変化などにも左右されるため、生活習慣に注意する必要があります。自己効力感が低いときには生活習慣を見直すことも考えるとよいでしょう。
社員の自己効力感を高める方法
自己効力感は認知であると述べたように、本人の気づきの部分も大きいです。そのため、本来は能力があっても本人がそれに気づいていなければ自己効力感は高まらないでしょう。
企業が社員の自己効力感を高めたいと考える場合は、自分の成功する可能性に気づいてもらえるようなサポートを行い、自己効力感が自然と高まるような環境を構築することが重要です。
以下で、社員の自己効力感を高める方法を紹介します。
目標設定の工夫
直接的達成経験は、実際に本人が経験した成功のため自信をもちやすい認知ですが、経験がないことにははじまりません。また、既に自信をなくしている人の場合は過去の成功体験を思い出しづらいということもありえます。
そのような場合には、小さい目標を立て、成功を積み重ねていくことがよいでしょう。小さい成功は小さい自信となり、積み重なれば自己効力感を高めることにつながります。
ただし、簡単に達成できる目標ばかり立ててしまうと手ごたえがなく、自信にはつながらず、簡単すぎて油断してしまうこともあります。
そのため、少しずつ難易度を上げて目標を設定していくことが重要です。上司が部下の能力を見て、目標設定のサポートを行うとよいでしょう。
コミュニケーションの活性化
チーム内で日常的に声を掛け合ったり、成功や頑張りを褒めたりする環境があると、言語的説得が生まれやすいでしょう。チーム内でのコミュニケーションを重視し、会話しやすい環境を作ることも有効です。
また、相手によってどのような言葉をかけるのがよいのかも異なるため、相手を知る意味でも日ごろのコミュニケーションが重要になります。とくに上司から部下へのフィードバックは良くも悪くも影響が大きいため、注意が必要です。
フィードバックに批判や注意を含む内容のときは悪い点だけでなく、良い点も述べるようにすることや、成功する方法を一緒に考えるなど、ネガティブな内容だけにならないように心がけましょう。
自己効力感の注意点
自己効力感は、他の人の目には映らないもののため、知っておきたい注意点があります。
個人差がある
たとえば、言語的説得である「他者から褒められる」ことにあまり喜びを感じない人もいます。また、代理的経験である「優秀な同僚や先輩を観察する」も、自分と重ね合わせてイメージをもつことが苦手な人もいるでしょう。
また、もともと自分に自信がない人が自己効力感を高めようと直接的達成経験の知識をつけたしても、「自分はできる」と信じることができず、うまくいかないことがあります。それどころか失敗した経験や、ネガティブな過去ばかり呼び起こされ、より自己効力感が下がる可能性もあります。
このように自己効力感は、知識だけでなく、感覚や、情動、本人の性格によっても左右され、個人差があります。
サポートする際の注意点
社員の自己効力感を高めようとする際には、全員で同じやり方にするのではなく、個々に合った方法を見つけ出し、偏らないようにすることが重要です。
「他者から褒められる」ことに実感がわかない人や、「他者の観察」が苦手な人であれば、他者よりも自身にもとづいた「直接的達成経験」を用いるのがよいかもしれません。
また、もともと自分に自信がない人であれば、過去の成功体験を思い出してもらうのではなく、誰かの言葉で「貴方ならできる」といってあげる「言語的説得」の方がよいでしょう。
短期的に下がる可能性がある
自己効力感は、高まったら終わりではなく、短期的に下がる可能性がある点に注意が必要です。
本人は頑張っていて、周囲がそれを認めていても、仕事で偶然失敗が続いてしまうと自信を失い、自己効力感が下がってしまう場面があります。また、どれだけ周囲が気をつけていてもなにげない一言に傷つき、自信を失う場合もあるでしょう。
サポートする際の注意点
自己効力感が下がってしまったことを責めず、「自己効力感は突然下がることもある」と考えるように日ごろから心がけ、その都度サポートする姿勢が必要です。
また、態度や言動から察することはできても自己効力感は他者から正確に見えるものではありません。組織に属している以上、自信がなくとも業務には取り組まなくてはならないこともあり、社員の自己効力感が下がっていることを認知できないこともあります。
生理的情動的喚起もあるように、社員の体調が優れずに自信をなくしていることもあるため、日々のコミュニケーションを大事にし、自己効力感が下がっていることに周囲が気づけるような環境を作ることも重要です。
自己効力感を高めることにつながるビジネスゲーム「チャンバラ合戦」
「チャンバラ合戦」は、社員同士で安全に合戦を楽しめる戦国時代の合戦をイメージしたアクティビティで、株式会社IKUSAが展開するビジネスゲームです。
チームを組み、スポンジの刀を武器に、相手チームの腕についた命(ボール)を落とし合います。相手チームにどう攻め入るかを話し合う「軍議」と、軍議で話し合ったことを実践する「合戦」を繰り返すことで、チームで試行錯誤し、改善することが学べます。また、研修プログラムの一部として実施することもできます。
ゲームのなかでPDCAを回していくことで少しずつ合戦も上達していき、小さな成功体験を積んでいくことができるでしょう。また、年代や性に左右されないゲーム性のため、上手い人を観察すれば、「自分でもやれるはずだ」という自信にもつながります。
チームの一員として楽しく主体的に取り組んでいくなかで、コミュニケーションが活性化し、ポジティブな声を積極的に掛け合うケースが多いでしょう。研修後もチームワークがよくなり、普段の業務においても声掛けが増えることが期待できます。
このような成功体験の積み重ねや、他者の観察、コミュニケーション活性化など、自己効力感を高めることにつながる要素が多いビジネスゲームです。
まずは一度、お気軽にお問い合わせください。
チャンバラ合戦公式サイトはこちらチャンバラ合戦の資料ダウンロードはこちら
まとめ
ここまで自己効力感に影響する4つの要因や自己効力感を高める方法を解説してきました。
自己効力感は認知であり、自己効力感が低いというのは、ただ気づきを得ていない状態ともいえます。そのため、気づくことを意識し、1つの要因に偏らないようにするとよいでしょう。また、社員の自己効力感を高める場合は、日ごろからコミュニケーションをとり、相手に気づきを得てもらうためのサポートを心掛ける必要があります。
自己効力感が高ければ、仕事だけではなく、私生活においても前向きになることができ、人生が明るいものになるといえるでしょう。
本記事を参考に、自己効力感を高めてみてください。資料ダウンロードはこちらお問い合わせはこちら