updated: 2024
自治体SDGsとは?取り組むメリットや事例をご紹介
目次
2015年の国連サミットで採択された「SDGs」。その目標達成には、国や企業だけではなく、地方自治体単位での実行も必要不可欠です。また、自治体がSDGsを推進して取り組んでいくことは地方創生にもつながり、住民の生活の質の向上をはじめとした様々なメリットもあります。
今回は、自治体SDGsの概要や、実際に地方自治体がSDGsに取り組んでいる事例をご紹介します。自治体SDGsについて理解を深めたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
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SDGsとは
SDGsの概要
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された、国際社会共有の目標です。SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略であり、「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年までに達成すべき17のゴールと、それらを細分化した169のターゲットにより構成されています。SDGsがめざすところは、「誰一人取り残さない社会」です。地球で暮らすすべての人が安心して幸せに暮らせるような環境を作っていくことが、今世界の普遍的なテーマとして掲げられているのです。
すべての国が取り組むべきSDGs
SDGsを考える際の比較対象となるのが、その前身であるMDGsです。2000年の国連サミットで採択されたMDGsが2015年までの目標として掲げていたのは以下の8つのゴールです。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 初等教育の完全普及の達成
- ジェンダー平等推進と女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
- 環境の持続可能性確保
- 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
このように、MDGsは先進国による途上国支援という構図で策定されていました。
しかし、MDGsの達成期限を迎えた2015年にその見直しがされ、新しい目標を策定するにあたり、方向性が大きく変化しました。途上国で未達成の目標は継続して取り組みつつも、今後は先進国も含めて世界の課題解決に取り組まなければならないといった方針にシフトしたのです。そこで新たに立てられた目標が、SDGsです。
SDGsの定める17のゴールは以下の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも 経済成長も
- 産業と技術革新の基礎をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは、発展途上国・先進国に関わらず、すべての国が関わっていくべき目標といえるのです。
自治体SDGsとは
自治体SDGsとは、全国の自治体による、SDGs達成に向けての取り組みのことです。自治体SDGsには、地域の様々なステークホルダーとの連携が必要不可欠です。
地方創生とSDGs
日本の課題の一つである地方創生とSDGsには、大きな関連があります。地方創生とは、東京圏への人口集中を是正して、地方の住み良い環境づくりを促進することによって、日本に活力を生み出そうという施策です。
現在、多くの地方が、少子高齢化や経済規模の縮小、エネルギー問題などの様々な問題を抱えています。自治体には、これらの課題を解決して住民にとって住みやすいまちづくりを行うことが求められているのです。
そして、この「住民が安心して住み続けられるまちを作ってくこと」は、SDGsの「持続可能な目標」「誰一人取り残さない社会」というコンセプトと重なる部分があります。そのため、地方創生を推進する際に、SDGsのアプローチを活かすことができるのです。日本全国の自治体で、でSDGsを活用した地方創生が進められています。
自治体=国と民間の橋渡し
自治体は、国の掲げるグローバルな問題と、そこに暮らす地域住民たちの抱えるローカルな問題の、両方に関わる存在です。自治体はそのような「橋渡し」としての責任をもち、SDGsに対する積極的な取り組みを行うことが求められています。
SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業
ここからは、自治体SDGs施策の一環で日本政府が行なっている、「SDGs未来都市」や「自治体SDGsモデル事業」の選定についてご説明します。これから自治体のSDGs推進を始めようという方は、これらへの選定を目標にしてみるのも良いでしょう。
SDGs未来都市
SDGs未来都市とは、SDGs達成への優れた取り組みを提案した自治体を選定する、国の事業です。
SDGs未来都市の選定は2018年度から開始され、2020年度までの3ヶ年計画で進められています。SDGs未来都市の選定は以下の4つの項目を基準としています。
- 将来のビジョン
- 自治体SDGsの推進に資する取り組み
- 推進体制
- 自治体SDGsの取り組み実現可能性
初年度である2018年度には29都市が、翌年の2019年度には31都市がSDGs未来都市として選定されました。選定都市による取り組みを国内外に発信することで、SDGsへの取り組みの普及につなげる目的があるとされています。
自治体SDGsモデル事業
SDGs未来都市の中でも、特に先導的な取り組みを行なっている事業は「自治体SDGsモデル事業」として選定されています。2018年度・2019年度ともに10事業が自治体SDGsモデル事業に選定されました。
地方自治体がSDGsに取り組むメリット
地方自治体がSDGsに取り組むことで生じるメリットを、4つご紹介します。
住民の生活の質が向上する
自治体がSDGsに取り組み持続可能なまちづくりを行うことで、住民にとって住みやすい環境づくりが推進されます。そのような環境整備が進めば、住民の生活の質の向上が望めます。生活の質が向上することでその土地に住むことへの満足度が高くなるため、都市への人口流出を防ぐことができ、過疎化防止にもなります。
様々な関係者の協力により地域が活性化する
自治体SDGsは、自治体の力だけで進められるものではありません。エネルギー施策ならエネルギー事業者や電力会社などの協力が必要ですし、教育の施策に力を入れるのであれば小中学校や高校、大学などとの連携が必要不可欠です。なかには、異なる分野の事業者と手を取り合って課題解決に取り組むこともあるでしょう。
このように自治体を中心とした様々な関係者を巻き込んでいくことで、自治体と事業者の、または事業者同士の連携が活発になり、地域の活性化へとつなげることができます。
課題解決、発掘の手段となる
普遍的な目標であるSDGsのゴールやターゲットは、自治体の目標と重なる部分も多くあります。そのため、SDGsのアプローチを参考にすれば、課題解決への道筋を明確に把握でき、解決のための有効な手段を見つけられます。また、SDGsで掲げられている目標をもとに自身の自治体の現状を分析することで、今どんな課題を抱えているかを発掘することができます。
強み・弱みを知るきっかけになる
世界的な取り組みであるSDGsは世の中の高い関心を集めており、日本全国・世界各国で日々情報交換がなされています。積極的にSDGsに関わることで、他の自治体や世界の都市の情報も仕入れやすくなります。それらの情報をもとに他の地域との比較をすることで、自身の地域の強みや弱みに気づくことができ、施策の立案などにも役立ちます。
地方自治体におけるSDGsへの取り組み事例
実際、地方自治体ではどのような形でSDGsが進められているのでしょうか。ここからは、SDGs未来都市に選定された5つの地域の取り組みをご紹介します。自治体SDGsに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
富山県富山市
富山市は2018年度のSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に認定されました。富山市では、市街地の低密度化で街の活気が失われていることや、車を使えない高齢者が不便な生活を送っていることなどが課題として挙がっていました。
そんな富山市が目指しているのは、コンパクトな街づくりです。同市は「富山市都市マスタープラン」の中で、「鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」をまちづくりの理念として掲げています。
そんな富山市がこれまで行ってきた、コンパクトなまちづくりに関する施策を2つご紹介します。
- 日本初のLRT導入
LRTとは、乗り降りが簡単にできるデザインや環境への配慮、スムーズな運行などを特徴とした、次世代の軌道系交通システムです。富山市では、地域住民の公共交通機関の利用を活性化するために、日本で初めて本格的なLRTシステムを導入しました。2006年から2017年までの間で利用者は増え続け、その数は、平日は1倍、休日は3.4倍にまで増加しました。 - おでかけ定期券の発行
おでかけ定期券とは、市内の高齢者(満65歳以上)が公共交通機関を利用する際にお得なサービスを受けられる券です。この定期券があれば、市内各地から中心市街地を出かける際は公共交通機関を1乗車100円で利用できます。また、おでかけ定期券を提示すると、協賛店で粗品がもらえたり、体育施設・文化施設の割引が受けられたりといった特典もあります。
結果として、定期券がきっかけになり、高齢者が歩いて外に出る機会が増えました。この施策を実施しところ、定期券を利用した高齢者は、1日の歩数が1人あたり平均2000歩ほど増加しました。
富山市は2030年のあるべき姿として「コンパクトシティ戦略による持続可能な付加価値創造都市の実現」を掲げており、今後の活動が期待されています。
(参考:富山市SDGs未来都市計画)
山口県宇部市
山口県宇部市では、「人財が宝」という理念を中心に据え、多様なSDGs推進活動がなされています。宇部市は、2018年度のSDGs未来都市に選定されました。
宇部市では、企業・行政・市民・大学といった様々なステークホルダーが連携することで、2030年に以下の目標を達成したいと考えています。
- 産業力強化・イノベーション創出のまち
- 生きる力を育み、子どもの未来が輝くまち
- 健幸長寿のまち
- 共に創る魅力・にぎわいあふれるまち
- 安心・安全で、快適に暮らせるまち
そんな宇部市が特に力を入れているのがICTやIoTの導入です。これらの技術を活用しながら様々な行政課題、地域課題の解決を図り、取り組みを積極的に展開することで、「イノベーションのまち」のイメージが定着してきています。
「うべスタートアップ」は宇部市から新たなビジネス・地域づくりを誘発するイノベーション創出拠点です。うべスタートアップは、起業・創業・経営などに関する相談窓口や、起業家・実業家の交流促進の場として機能しており、各種セミナーなども提供されています。またコワーキングスペースの提供も行われており、志のある人たちが集まり自由に交流することができます。
(参考:宇部市SDGs未来都市計画)
岩手県陸前高田市
岩手県の陸前高田市は、2019年のSDGs未来都市に選定されました。陸前高田市が掲げるテーマは「ノーマライゼーション 言葉のいらないまちづくり」です。
「ノーマライゼーション」とは、高齢者、障害の有無などの年齢や社会的マイノリティに関係なく生活や権利などが保障された環境を作っていく考え方を指します。
陸前高田市では、障害のあるなしだけでなく、国籍や文化、宗教、政治的信条などにかかわらず、誰もが多様性を認め合えて個性を尊重される状態を目標とし、すべての人が安心して自分らしい生き方ができる社会づくりを進めています。
進めている施策としては、以下のようなものがあります。
- 雇用機会の創出
ふるさと納税の返礼品発送の仕事は、地元の高齢者の方々や障害を持った方々が行なっています。生産者からのお礼品の集荷は高齢者の方々、お礼品の梱包・発送業務は障害を持った方々が担当しており、「経済的弱者」と言われる人たちへの働く機会の創出を行っています。 - ユニバーサルデザインの推進
ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍・性別・障がい・能力の如何を問わずに利用できる施設や商品、情報の設計を指します。陸前高田市では市役所庁舎内駐車場やトイレをはじめとし、ユニバーサルデザインを積極的に取り入れる取り組みをしています。
「ノーマライゼーション」という言葉を意識しなくても、すべての人が安心して自分らしく生きられる。そのようなまちづくりを、陸前高田市は目指しています。
(参考:陸前高田市 SDGs未来都市等提案書)
京都府福知山市
福知山市では、エネルギーの自給率が低く、約200億円ものエネルギーコストが域外に流出していることが問題視されてきました。そんな福知山市で計画されているのが、再生可能エネルギーを域内で産出し循環させるという、再生可能エネルギー事業を基点とした新たな産業展開です。福知山市はこの事業モデルをはじめとする取り組みを高く評価され、2019年度のSDGs未来都市に選出されました。
福知山市の再生可能エネルギー施策は以下のようになっています。
- 事業体との提携
地元金融機関や市民等の協力のもと新再生可能エネルギー事業体と連携し、市内公有地に太陽光発電設備や、市内の河川・上下水道を活用した小水力発電設備を設置します。 - 市民への働きかけ
市内の年間新築戸建数の 50%を目標に太陽光パネルを設置するよう、工務店等と連携し、市民にも働きかけを行います。
福知山市の取り組みは、事業者との強固な連携や市民への働きかけが肝となる、多くのステークホルダーを巻き込んだ取り組みといえるでしょう。
(参考:福知山市 SDGs未来都市等提案書)
鹿児島県大崎町
鹿児島県大崎町は、「ごみ問題」に着目した取り組みを行い、2019年のSDGs環境未来都市に選定されました。
大崎町は、隣接市の埋め立て処分場の処理能力が限界になってきていることや、容器包装リサイクル法の施行などの影響を受け、ごみ問題への取り組みを始めました。従来の埋め立て処分場を増やすという発想から、徹底した分別収集により埋め立てるごみの量を減らすといった方向に大きく舵を切ったのです。
町役場や集落のリーダーと共催し、約4000世帯を対象に450回以上の説明会を実施。ごみ問題の「自分ごと化」をすすめ、住民の深い理解を得ることに成功した大崎市では、行政・企業・住民協働型のリサイクル事業を行っており、27品目の分別が徹底されています。
そのような取り組みの結果、2017年にはリサイクル率84.7%を達成。11年連続で、資源ごみリサイクル率日本一となりました。
(参考:大崎町 SDGs未来都市等提案書)
SDGsを浸透させるワーク・研修のご紹介
SDGsマッピング
「SDGsマッピング」は、普段行う業務などとSDGsの17目標を紐付けて整理するフレームワークです。自治体の現状とSDGsのつながりを感じることで、SDGsを身近なものとしてとらえ、自分ごと化できるようになります。
ワークに入る前に、SDGsの基礎的な内容について解説や、さまざまなSDGsへの取り組み事例などをご紹介するので、SDGsの知識があまりない方でも気軽に取り組むことができる入門編としておすすめです。
オンラインSDGs謎解き「ある惑星からの脱出」
SDGsビジネスゲーム「ワールドリーダーズ」
「SDGs ビジネスゲームワールドリーダーズ」はSDGsにおける組織の役割を学ぶことができるビジネスゲームです。
- SDGsを浸透させたいが、無理に勧められない
- 職員へのSDGs浸透方法に悩んでいる
- SDGsを通じて、レクリエーションやグループワークをしたい
と考えている自治体様におすすめです。
SDGs カードゲーム「2030SDGs 」
カードゲーム「2030SDGs(ニーゼロサンゼロ エスディージーズ)」は、SDGs17の目標を達成するための“道のり”を体験できるカードゲームです。プレイ人数は最低5人から、最大で200人規模まで対応可能です。
このゲームは、SDGsの目的やゴールについて学ぶゲームではなく、「SDGsの本質」について体感的に学べる内容になっており、SDGsについての理解や興味がない人でも、プレイすることで「SDGsとはこういうものなんだ」と理解できます。
2030SDGsは、与えられたお金や時間を使ってプロジェクト活動を行うことで、最終的にゴールを達成することを目的としたゲームです。
お金や時間といった制約の下で自分の価値観を満たしつつ、世界の状況を整えるにはどうしたらいいかをプレイヤー自身が考えていくゲームとなります。
2030SDGsの特徴は、「それぞれの異なる価値観を達成するためにプロジェクトを進行するが、世界の経済・社会・環境にも配慮しなればならない」という状況設定が、現実世界に極めて近い状態であることです。
SDGsというと遠い世界の話と思っている方も多いかもしれませんが、ゲームを実施してSDGsを「自分事化」することで、SDGsへの理解を深めることができます。
また、2030SDGsでは、参加者間でのお金や時間といった資源の交換を自由に行えますし、基本ルールに則ってさえいれば何をしてもOKということになっています。そのため、個人と世界の目標を達成するためにどうするべきかを参加者同士が自主的に考え、意見交換を行えるのです。
まとめ
本記事では、自治体とSDGsとの関連性やSDGsを取り入れるメリットをご紹介しました。また、実際にSDGs未来都市に選定された事例もいくつか掲載させていただきました。自治体SDGsにご興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
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