防災

updated: 2024 

自治体の防災に関する取り組み20選

自治体の防災に関する取り組み20選

日本では、地震や津波、洪水、豪雨など、地域ごとにさまざまな自然災害が起きるため、防災面で地域特有の課題を抱えています。

海に近い地域は津波による浸水被害のリスクがあり、古い木造住宅が密集している地域では火災による被害拡大が懸念されています。防災については、その土地の地形や気象、住民の特徴を考えながら対策を立てることが大切です。

自治体は、抱えている課題やリスクを詳しく把握し、民間にはないさまざまなデータを活用しながら、地域住民と長期的な付き合いを続ける必要があるでしょう。

本記事では、自治体が住民と協働し、防災・減災に大きな役割を果たしている取り組み20選について紹介します

 

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自治体による防災の種類

東日本大震災のように大規模な災害が起きた時、自治体が全ての被災者を支援するのには時間がかかります。そこで自治体は、地域コミュニティの力をうまく引き出しながら、防災力の向上を進める取り組みを行っています。

自治体が行う防災の取り組みには、一般的に以下のようなものがあげられます。

  • 防災計画の作成
  • ハザードマップの作成・公開
  • 指定緊急避難場所・指定避難所の指定
  • 企業や他の市区町村との協定締結
  • WEBなどを利用した情報提供
  • 防災教育(出前講義など)
  • 防災訓練の実施

防災計画とは、自治体と住民が、まちあるきや意見交換をしながら一緒につくる計画のことです。災害による被害を予測したハザードマップは、自治体が作成し、避難場所など住民に役立つ情報を掲載しています。

また、住民の防災意識を向上するためには、防災教育や訓練が大きな役割を果たします。災害時にできるかぎり被害を拡大させないように、行政職員は地域ごとの防災リスクを把握し、日頃から住民との協力体制をつくっておくとよいでしょう。一人ひとりが災害対応能力を磨くことが、災害に強いまちづくりにつながります。

各地の防災の取り組み20

各地の自治体では、職員が自治会の役員に会うなどして、「沿岸ぞいで津波のリスクがある」「台風の時に強風が吹きつける」「避難が困難なお年寄りが大勢暮らしている」といった地域ごとの課題を把握し、データを集めています。こうしたデータの蓄積が、いざという時、被害の拡大や早期復旧に大きな力を発揮します。

ここでは、避難訓練や防災力向上のための都市計画など自治体の防災に関する取り組みを紹介します。

1.【宮城県山元町】車を使った避難訓練

津波の時に車を使って避難すると、道路の渋滞を招き、逃げ遅れる可能性があります。そこで内閣府は、津波や地震の時は、原則徒歩で避難することを推奨しています。

宮城県山元町は、沿岸部が平坦な土地のため、歩いて避難すると津波に飲み込まれてしまう危険があります。そのため、渋滞を招かず車で避難する方法について検証する訓練を行いました。

訓練では、国道の下を通る2か所の抜け道を通り、知り合い同士が同乗することで車の台数を減らした避難訓練を実施しています。その結果、想定していた津波到達時間より早く避難することができました。

2.【千葉】瓦屋根「耐風診断」の補助制度

住宅の「耐震診断」はよく知られていますが、千葉市には「耐風診断」の補助制度があります。耐風診断とは、瓦を屋根にしっかり留める方法を定めた基準に適合しているかを確認するものです。補助制度では、診断に必要な費用の3分の2、上限21000円が補助されます。住宅屋根の被害防止だけではなく、強風で飛んだ瓦による怪我などを防ぐ取り組みです。

参照: 千葉市:住宅の瓦屋根耐風診断・耐風改修補助制度

3.【東京都】古い木造住宅が密集した地域で大火を防ぐ

東京都には今でも、古い木造住宅が密集して建っている地域があります。大地震の時、古い住宅が倒壊して道をふさいでしまい、緊急車両の通行の邪魔になったり、火災が広がったりする危険性が指摘されています。

このため、老朽建築物の除却や建て替えに費用を助成したり、延焼をくいとめる道路・公園の整備を進めたりして防災性の向上に取り組んでいます。

参照:不燃化特区制度と特定整備路線の取組 | 東京都都市整備局

4.【東京都江戸川区】要支援者を福祉避難所と紐づけ

大規模な災害が起こった時、高齢者や障害のある人達は、自力での避難や避難生活が難しい場合があります。そういった周囲の配慮が必要な人達を「要支援者」といいます。

東京都江戸川区は、配慮が必要な人が避難できる福祉避難所と、優先度が高い要支援者を紐づけた個別避難計画に取り組みました。こうした個別避難計画は、要支援者、住民、福祉専門職の人達が「顔の見える関係」をつくり、日頃から助け合うことにつながると期待されています。

参照:令和3年度個別避難計画作成モデル事業報告書の概要|内閣府防災情報

5.【横浜市】災害時要援護者支援ガイドを作成

避難に支援が必要な人を支える取り組みは、横浜市も行っており、ホームページで「災害時要援護者支援ガイド」を公開し、地域で要援護者を支え合う体制づくりのヒントを紹介しています。

災害時要援護者支援ガイドでは、一人ひとりにきめ細かく避難支援ができるように、避難場所や支援者をあらかじめ決めておく「個別避難計画」をつくることをすすめています。

参照:災害時要援護者支援ガイド|横浜市

6.【静岡】【山梨】【神奈川】富士山噴火の避難計画

過去に何度も噴火を繰り返してきた富士山が再び噴火した場合、火口から出た噴石や火山灰が被害をもたらす可能性が指摘されています。火砕流はさらに危険です。江戸時代に噴火した際には、火口に近い村で多くの家屋が焼失したと伝えられています。

そこで、静岡、山梨、神奈川の3県と国が、富士山噴火を想定した避難計画をまとめました。避難の対象となる地域に住む人は80万人。気象庁が噴火警戒レベルを引き上げた場合など、自主的に避難することを呼びかけています。登山客の場合は、噴火警戒レベル1が発表された時点で下山を指示します。

7.【新潟県】防災教育プログラムを活用

新潟県では土砂災害や雪崩災害への理解を深めてもらうため、県内の小中学校で「新潟県防災教育プログラム」を活用した防災教育に取り組んでいます。副読本では、がけくずれ、地すべり、土石流といった土砂災害、雪崩災害からの身の守り方が説明されており、ホームページからダウンロードして読むことができます。

参照:防災教育に役立つ資料を掲載しました。|新潟県ホームページ

8.【長野市】マイ・タイムラインを動画で解説

長野市はホームページで「マイ・タイムライン」のつくり方を詳しく説明しています。「マイ・タイムライン」とは、どの段階で何をするかをまとめた防災行動の目安のことです。住民一人ひとりが災害知識を身につけ、自分の行動を考えることで防災意識を高めることができます。

洪水と土砂災害の両方に対応した長野市版の「マイ・タイムラインシート」は、取るべき防災行動が書かれたシールを貼ることで、簡単に作成できます。チェックシート、避難行動判定フローなど解説動画があるので参考にしてみてはいかがでしょうか。

参照:『マイ・タイムライン』について|長野市公式ホームページ

9.【岐阜県恵那市】ボランティアによる家具転倒防止金具の取り付け

地震に備えて家具の転倒を防ぐことは、怪我防止のために大切です。しかし、一人暮らしの高齢者の場合、家具を固定する作業を難しいケースもあるでしょう。

岐阜県恵那市は、65歳以上の一人暮らしの世帯などを対象に、家具の転倒を防止するため、ボランティアによる金具の取り付けを行っています。加えて、身の回りにある危険な家具の配置換えや火災警報器の取り付けなどのサポートも行っています。

参照:家具転倒防止作業ボランティア募集|恵那市

10.【愛知県犬山市】ペットと同室に避難できる避難所の設置

災害時、ペットを連れて避難することができるかは、飼い主にとって切実な問題です。避難所には動物が苦手な人もいるので、迷惑をかけると考え、車中泊をする人も珍しくないでしょう。災害時には、ペットは避難所の外、飼い主は避難所の中という「同行避難」で折り合いをつける傾向にあります。

愛知県犬山市は、33か所ある指定避難所のうち、3か所をペットと飼い主が同室で過ごすことができる避難所にしました。飼い主とペット、双方がストレスを減らし、安心して避難生活をおくることができると期待されています。

参照:災害時のペット対策(震災)|犬山市

11.【滋賀県】 Facebookグループで意見交換

滋賀県は防災の話題について気軽に投稿し、交流できるFacebookグループ「しが防災ベース」を運用しています。生活に根差した防災のアイデア、取り組み事例、イベント情報について発信したり、意見交換したりすることを目的としています。

参照:生活防災プラットフォーム「しが防災ベース」(Facebookグループ)の開設と防災アイデア募集について|滋賀県ホームページ

12.【京都市】路地・まちの安全を高める計画づくり

京都市に残る路地は特有の雰囲気があり、日本にとって重要な観光資源です。しかし、路地は大地震が起きた時、家が倒壊して大通りに出られなくなる危険性があります。そのため、京都市は古都の雰囲気を守りつつ、災害に強い路地やまちをつくる取り組みを進めています。

たとえば、住民達が防災まちあるきや意見交換会をして「路地・まち防災まちづくり計画」にまとめ、京都市が認定をするといった取り組みでは、町家の横にある「トンネル路地」の壁や建物の耐震・防火改修にもつながっています。

参照:路地・まちの安全を高めるための「防災まちづくり活動団体」及び「路地・まち防災まちづくり計画」の認定証授与式について|京都市

13.【大阪市】大規模な地下空間の浸水対策

大阪市は、JR大阪駅周辺に広い地下街が迷路のように広がっており、南海トラフ巨大地震が起きると、大阪市の中心部にも津波が押し寄せるのではないかと懸念されています。

この地下空間は、地下街管理会社や鉄道会社など、複数の事業者が管理しているため、定期的に地下空間浸水対策協議会をつくり、津波を想定した訓練や、事業者間の連携を進める取り組みを行っています。

参照:大規模な地下空間の浸水対策の取り組み|大阪市

14.【兵庫県】訓練でドローンによる物資輸送

兵庫県は丹波地域との合同防災訓練で、ドローンで避難所に救援物資を運ぶ実証事業を行いました。ドローンは飛行までの準備が少なく、素早く飛び立てるメリットがあります。また、上空から被災状況を確認できるなど、さまざまな役割が期待されています。

参照:令和5年度兵庫県・丹波地域合同防災訓練の実施|兵庫県

15.【岡山県】災害時学校支援のハンドブック

岡山県教育委員会は、豪雨災害の経験をもとに「災害時学校支援チームおかやま」をスタートしました。大規模な災害が発生した時に、被害を受けた学校の再開サポートや、児童・生徒の心のケアなどを目指しています。また、平時は防災教育や学校の防災体制の整備を進めており、ハンドブックを作成しました。ハンドブックはホームページからダウンロードできます。

参照:「災害時学校支援チームおかやま」ハンドブック – 教育委員会|岡山県ホームページ(教育政策課)

16.【広島県】小学校などに出前講座

広島県は、避難のタイミングについて決めておく「ひろしまマイ・タイムライン」の普及を進めるため、小学校などを対象に「ひろしま防災出前講座」を行っています。マイ・タイムラインの学習の他にも、人形ロボットを使った講座、豪雨災害を疑似体験できるVRなどを用意しています。

参照:事業の紹介(減災に向けた取組の推進)| 広島県

17.【高知県黒潮町】戸別津波避難カルテの作成

太平洋に面した高知県黒潮町は、南海トラフ巨大地震が発生すると、最大震度7、最大津波高34.4メートルを記録すると予測されています。国と高知県からこの数字が公表されたのをきっかけに、黒潮町はそれまでの防災計画と対策事業を見直しました。

「犠牲者ゼロ」を目指して、「総力戦」をキーワードに防災における20の指針を定めています。津波から急いで逃れられる避難道を整備し、津波避難タワーを建設するほか、町の全職員を対象に地域担当制を導入しました。また、全住民の避難行動を調査するため「戸別津波避難カルテづくり」に取り組みました。

参照:黒潮町の津波・防災への取組│黒潮町

18.【長崎市】危険な空き家を公園などに整備

長崎市は、全国で増え、社会問題になっている空き家を防災に活用する試みを行っています。危険な空き家の持ち主から土地・建物を寄付してもらい、避難場所を兼ねた小さな公園(ポケットパーク)などに整備しています。

参照:長崎市老朽危険空き家対策事業│長崎市

19.【大分県別府市】福祉の専門職と協力した個別避難計画

大分県別府市は、支援が必要な人達のことをよく知っているケアマネージャーや相談支援専門員と協力して個別避難計画づくりに取り組んでいます。高齢者や障害がある人など、避難する際に支援が必要な人のため、いつ、どこへ、誰と、どうやって逃げるかを、あらかじめ決めておきます。支援が必要な人達がどうすれば安全に避難できるか、よく理解している専門職の意見を取り入れることで、実効性のある計画をつくることができるでしょう。

20.【熊本県】広域防災拠点として防災訓練

大規模な災害が発生した際、自治体をまたいで広域にわたる災害対策活動をするためには、活動の拠点となる広域防災拠点が必要です。広域防災拠点は、救援物資の中継・分配、広域支援部隊の一次終結・ベースキャンプ機能などの役割を果たします。

九州のほぼ中央に位置する熊本県は、広域防災拠点としての役割が期待されています。そこで熊本県は、南海トラフ巨大地震を想定し、隣県への支援態勢を確認する総合防災訓練を行いました。広域で災害が発生した時は、限られた職員を県外と県内にどのように配置するかを考えていくことが今後の課題です。

まとめ

自治体ができる大きな役割は、地域への働きかけを長期間継続し、住民の防災意識を高めることだと考えられます。個別避難計画づくりのように、支援が必要な人の個人情報がかかわってくる分野は、自治体がすべき分野といえるでしょう。

まちづくりは、都市計画といったハード面と、担い手育成などのソフト面を両輪で進めることが大切です。自治体によって防災上の課題はさまざまですが、職員と住民一人ひとりが意識を高め、いざという時に協力して対応できるようにしておくことが大切でしょう。

 

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