updated: 2021
福利厚生の住宅手当とは?住宅関連の補助制度まとめ
福利厚生には、住宅補助に関わるものがあり、住宅手当はその一つです。住宅手当があると従業員の生活の負担が軽減されます。地域によって家賃相場に差があり、場合によっては企業の近くに住むために家賃の高い賃貸アパートやマンションを契約することもあります。
今回は、福利厚生の住宅手当の概要、支給するメリット、住宅関連の補助制度、住宅手当の支給金額、税金や課題について紹介します。
住宅手当とは
住宅手当とは、引っ越し費用や家のローンなどの住宅に関わる費用を企業が支援する福利厚生制度です。法定外福利厚生にあたり、法律で住宅手当は義務づけられてはいません。住宅手当を従業員に支給するかどうかは企業が自由に選択できます。
住宅手当を支給するメリット
住宅手当を支給することで、企業が得られる可能性のある主なメリットを以下にまとめます。
通勤ストレスが軽減されて満足度が上がる
住宅手当を支給することで従業員が勤務先の近くに引っ越すことを選択すれば、それまでよりも通勤時間が短くなり、通勤ストレスが軽減される可能性があります。
また、自転車通勤が可能になった従業員に対して、自転車通勤手当を支給するという選択肢もあります。自転車通勤により一日あたりの運動量が増えれば、従業員の健康への良い影響が期待できるでしょう。複数の福利厚生を組み合わせれば、さらに従業員満足度が上がる可能性があります。
優秀な人材の獲得
持ち家の購入を検討している人や、クリエイティブ思考を刺激するためにこまめに引っ越しをする人にとっては、住宅手当の有無が転職時の企業選択理由の一つになる場合があります。住宅手当の支給額が高く、生活補助になれば優秀な人材が転職に興味を示す可能性があるでしょう。
離職率の低下
家のローンは完済するまで毎月支払う必要があります。住宅手当があることで月々のローンの支払いによる負担が軽減されている従業員は、住宅手当がなくなると生活に影響するため、転職を踏みとどまる要因の一つになる場合があるでしょう。
福利厚生を整備し、従業員にとっての働くメリットが大きければ離職率が低下することが期待できます。
企業イメージの向上
住宅手当を支給していれば、そうでない企業に比べて企業イメージが良くなる可能性があります。就職や転職について検討する際に、求職者は福利厚生をチェックします。他社と比べて住宅手当が充実していれば、求職者からのイメージの向上が期待できるでしょう。
その他の住宅関連の補助制度の種類
住宅手当のほか、家賃補助、社宅や寮などの住宅関連の補助制度があります。
家賃補助
アパートやマンションの賃料の一部または全額を補助する制度です。家賃補助は、上限金額を定めることが一般的です。また、原則として雇用形態によらず従業員に対して一律の金額の家賃補助を支給する必要があります。
家賃補助を支給する場合には、会社からの距離、住宅がある地域(市区町村)などを明確にし、規定を作成する必要があります。
社宅・寮
企業が管理する社宅や寮も住宅関連の補助制度の一つです。家賃補助は、企業が従業員に対して金銭を直接支払うため給与と同様に課税対象になります。しかし、社宅や寮は従業員が家賃の一部を負担することで、課税の対象にならない場合があります。
社宅や寮があることで、一人暮らしをする従業員にとっては、比較的安い家賃で勤務先の近くに住めれば働くメリットの一つととらえる可能性があります。社宅であれば、配偶者のいる従業員も住める場合があり、それによって従業員の家族の満足度が向上することもあるでしょう。
住宅手当の支給金額
住宅手当の支給金額は、1~3万円程度が平均的な金額といえますが、5,000~1万円の支給額では従業員が満足しない恐れがあります。住宅にかかる費用の何割程度を企業が負担すれば、従業員が満足できるのかは各々異なりますが、支給する場合には2万円以上に金額を定めることを検討する必要があるでしょう。
しかし、住宅手当を全従業員に対して支給すると、企業の負担が大きくなります。とくに非正規雇用の従業員を含めて従業員数の多い企業は、負担が大きくて住宅手当を制度化することが難しい場合もあるでしょう。
従業員のために制度化する福利厚生は住宅手当だけではなく、従業員にとってより求められるものがほかにある場合があります。住宅手当を支給することが重要なことなのかどうかをヒアリングし、従業員に寄り添って制度化することが重要なポイントでしょう。
住宅手当の金額を定める場合には、主に下記の3パターンがあります。
- 住宅手当は一律とする
- 上限額を定め、住宅にかかる費用の何%を住宅手当とする
- 給与金額の何%を住宅手当とする
住宅手当の金額に差があると、支給額が少ない従業員が不満を抱く危険性があるので注意が必要です。従業員がどのような印象を持つのかを想像し、不満が少なく満足できる金額に設定するのがよいでしょう。
住宅関連補助の税金
住宅手当は課税の対象になりますが、社宅や寮であれば非課税になる場合があります。社宅や寮の賃料を企業が定め、給料から天引きしたほうが、結果として従業員の税金の負担が減ることもあるのです。
住宅関連補助を制度化する目的は、従業員の生活を支援するというものです。住宅手当を支給することが目的ではないため、社宅や寮を企業が管理することを含めて検討し、どうすれば従業員の生活をより支援できるのかを検討する必要があるでしょう。
住宅手当を支給する際の注意事項
住宅手当を支給するための書類を作成するには、従業員の住民票が必要になる場合があります。ただし、住民票は個人情報にあたるため、企業が「住民票の提出が必須」としてしまうと、個人情報保護に関するトラブルになる場合があります。住民票の提出を任意にしていればトラブルを回避できる可能性があるので、住宅手当の支給を行う際には、注意する必要があるでしょう。
また、賃貸契約の証明をするために、賃貸契約書をコピーした書類を従業員から提出してもらう必要がある場合もあります。これも個人情報にあたるため、従業員に対して提出を義務づけてしまうとトラブルになるかもしれません。
書類の取り扱いや、従業員に対して強制しないように注意する必要があるでしょう。
住宅関連補助の課題
住宅手当、家賃補助、社宅・寮の管理などは、引っ越しを除く毎月固定の費用を負担する必要がある福利厚生です。そのため、必然的に企業にかかる負担が大きくなりやすい福利厚生の一つだといえます。
働き方改革の推進にともなって、雇用形態に関わらず、同一労働同一賃金が義務づけられています。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月からパートタイム・有期雇用労働法が適用され、原則として雇用形態によって待遇に差をつけてはいけなくなりました。
出典:同一労働同一賃金 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省
責任の有無や業務範囲が異なる場合には、待遇に差があることを認められる場合があるため、すべての従業員の待遇を完全に一致させなければならないというものではありません。しかし、住宅手当を支給する場合には、業務内容にかかわらず、すべての従業員に支給する必要がある可能性があります。
住宅関連補助を従業員に支給することで企業の負担が大きくなります。住宅は生活に欠かせないため、補助をすれば従業員は助かるでしょう。しかし、制度化することが現実的でなければ、定めることが難しくなります。ほかの福利厚生と比較し、何を制度として定めるのかを検討する必要があるでしょう。
住宅手当は、公務員を含めても廃止されるケースがあります。住宅手当を支給することによる金銭的な負担が大きいことや、従業員のメリットが少ないことなどが要因でしょう。
住宅手当を支給することよりも、従業員の賃金を上げることのほうが結果的に従業員の所得が増える可能性もあります。住宅手当は基本給に含まれないため、ボーナスや残業手当の金額に影響しないためです。住宅手当を支給することよりも、企業と従業員の双方にとってメリットの大きな福利厚生を優先することが必要でしょう。
まとめ
福利厚生の住宅手当や住宅関連補助について紹介しました。
住宅手当は、任意の福利厚生の中では一般的といえますが、それを重視している企業ばかりではありません。住宅手当よりも制度化すべき福利厚生がほかにある可能性もあるので、さまざまな選択肢の中の一つとして検討する必要があるでしょう。
福利厚生は、企業が何を重視し、従業員の何を補助することで企業としてどうなりたいかを示します。法定外福利厚生にはユニークなものもあるので、幅広い選択肢の中から、より良いものを選択する必要があります。
従来の福利厚生にとらわれずに、企業として福利厚生の制度を整備する目的を明確にし、それに密接に関係するものについて検討することで、良い選択ができる可能性があります。
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