posted:2020 04.28
updated: 2022 08.05
企業がSDGsに取り組むメリットと事例をご紹介

最近では、電車の広告や企業のサービスなどで「SDGs」という単語を目にすることが多くなりましたよね。
SDGsとは、日本語で「持続可能な開発目標」といい、2015年9月に行われた国連サミットにて採択された世界共通の目標のことです。
SDGsは行政だけでなく企業も取り組む課題であり、また、新たなビジネスチャンスとしても活用できるので、「うちの会社もSDGsに取り組みたい」と考える企業担当の方も増えています。
しかし、SDGsの実態を理解しなければ、SDGsをどのように取り入れたらいいかわかりませんよね。
そこで今回は、SDGsについての簡単な概要と企業が経営にSDGsを取り入れるメリット、そしていくつかの事例をご紹介します。SDGs経営を検討されている企業担当の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
SDGs(エスディージーズ)とは?
SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟国193カ国共通の目標のことをいいます。SDGsはSustainable Development Goalsの略であり、日本語訳は「持続可能な開発目標」となります。
国連加盟国193カ国が2030年までの間に達成すべき17のゴールが定められています。
SDGs17のゴール
SDGsには、2030年までに達成すべき17のゴールが定められています。「貧困をなくそう」「全ての人に健康と福祉を」といった、人々の生活や社会に関するものから、「つかう責任、つくる責任」「海の豊さを守ろう」などの環境問題に関するものまであります。17のゴールはそれぞれ、「経済」「社会」「環境」に大きく分けることができます。17のゴールの下には、169のターゲット目標と232個のグローバル指標が存在しています。
169のターゲット目標は、17のゴールを達成するために必要な具体的な目標を定めており、232個のグローバル指標は、169の目標を達成するための具体的な数値目標を定めています。
SDGsの17のゴールは以下の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも 経済成長も
- 産業と技術革新の基礎をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
企業が経営にSDGsを取り入れるメリット
SDGsのすべての目標を達成するには年間5〜7兆ドルもの投資が必要とされており、これを達成するためには、行政だけでなく企業の協力も必要不可欠です。
また、SDGsが達成されると仮定した場合、様々な外部経済効果を考慮すると、2030年までに年間12兆ドルの新たな市場機会が生まれうるとも言われています。SDGsは企業が取り組むべき課題であるとともに、企業に新たな機会を生み出すチャンスでもあるのです。ここからは、企業が経営にSDGsを取り入れることによるメリットを解説します。
生存戦略・リスク回避
SDGsの目標は、現在、そして未来の地球に起こりうる問題をもとに立てられたものです。そのため、SDGsについて知り、積極的にSDGsの取り組みを行っていくことは、世界の社会や経済、環境の変化が、自社にどのような影響を与えるのかを考えるきっかけになります。そのような状況の変化に照らし合わせて自社の将来を考えていくことにより、起こりうるリスクを見定めることができます。SDGsはいわば世界の現状を映し出すものであり、そこにフィットする事業開発や経営戦略を行っていくことが必要なのです。
社会課題解決とビジネスの両立
民間も含めすべての人が関わることが大切とされているSDGsには、企業の努力によって解決できる課題も多くあります。これまでも企業は「CSR(社会的責任)」の観点から様々な施策を行ってきましたが、事業と関係のない活動も多かったのではないでしょうか。SDGsに積極的に取り組むことで、自社ができることと社会課題を結びつけ、自社の製品やサービスによって利益を生み出しながら、課題解決に貢献することができます。
新規事業の創出・新規市場の開拓
SDGsの課題に着目すれば、世界のニーズを洗い出すことができ、新たな製品・サービスを生み出すことができます。また、既存の製品やサービスの新たな活用方法が見つかり、新規市場の参入もねらえます。
ステークホルダーとの関係構築
SDGsは世界共通の目標であり、それに真摯に取り組むことは、投資家や顧客、従業員、取引先や地域といったステークホルダーからの信頼につながります。良好な関係を築き多くの信頼を得ることで、企業の価値も向上します。
人材確保
近年では就活生や転職者が企業に求める条件も多様化しており、単に「利益が高い」という理由だけで求職者を惹きつけるのは難しいでしょう。「社会に貢献したい」「やりがいのある仕事がしたい」という声も多く挙がる中で、「SDGsに積極的に取り組んでいる企業」が企業選びの一つの基準となりつつあるのです。
地域貢献
SDGsの活動は、ビジネスと結びつけられるものが多いですが、ビジネス以外の形で関わることもできます。例えば、寄付・ボランティア・防災・雇用創出などの取り組みもSDGsの一環といえるでしょう。これらの取り組みを行うことで地域に貢献することができ、地域から愛される企業となります。
社員のモチベーション・帰属意識の向上
SDGsを積極的に行っている企業というイメージは、会社にとって一つのブランドとなります。そのようなブランディングを行うことで、社員のモチベーションや帰属意識の向上が見込めます。
実際に企業がSDGsを取り入れるには?
実際に企業にSDGsを取り入れるには、どのような流れで行うのが良いのでしょうか。答えは1つではありませんが、今回はその流れの1例をご紹介します。
自社と17のゴールを照らし合わせる
自社の事業を洗い出し、SGDsの17のゴールにつながるものがないかをチェックしましょう。自社の企業理念や目指す将来像に近いゴールは親和性が高いといえるでしょう。事業内容だけに限らず、省エネ、節電、節水、簡易包装、高齢者雇用、働き方改革、地産地消、防災などの活動もSDGsに関連させることができます。
施策を考え、具体的な行動計画や指標を決める
ゴールに合わせた施策を考え、内容を具体的なものに落とし込んでいきます。施策は一つとは限らないので、複数の施策がある場合はそれぞれの優先順位を決めておきましょう。
- SDGsの17のゴールのうち、どれを目標とするのか
- 何をいつまでに行うのか
- 目標達成の可否はどのように判断するのか
などを意識しながら細かい内容を練っていきます。
社内でSDGsの取り組みに向けた内容やビジョンを共有
決めた施策やSDGsの取り組みのビジョンについては、しっかり社内に共有しましょう。社内での共有が行き渡ることで、スムーズにプロジェクトを進行することができます。
活動の実施と振り返り
SDGsに向けた取り組みを実施し、定期的に振り返りを行います。達成できなかったことがあれば、なぜできなかったのかをしっかり見直し、次のアクションにつなげましょう。
活動内容を外部へ発信する
日本企業の弱いところとされているのが、この「外部へ発信する」力です。せっかくSDGsに対する取り組みを行っても、それを周知しなければ、SDGs導入によって得られるメリットも半減してしまいます。ホームページやSNSなどを活用し、積極的に活動報告をしていきましょう。
企業のSDGs事例5選
「SDGsを取り入れるメリットは色々あるけど、実際に何をやったらいいの?」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。ここからは、企業で実際に取り入れられているSDGsの取り組みの一例をご紹介します。
小川珈琲株式会社
コーヒーの製造や販売などを行う小川珈琲株式会社では、バードフレンドリー®認証コーヒーの取り扱いを行っています。バ―ドフレンドリー®認証コーヒーとは、渡り鳥が休息する森で生まれたコーヒーのことです。
近年、鳥が住むための森林が伐採されていることが問題となっており、その解決のためにスミソニアン鳥センターによって生み出されたのが、このプロジェクトです。これは、熱帯の森林を利用して木陰栽培・有機栽培で育てられたコーヒーを、同センターがプレミア価格で買い取るというものです。生産農家の生計を支えながら、森林伐採を防いで鳥を守る役割を果たしています。
小川珈琲株式会社では他にも、フェアトレードコーヒーやオランウータンコーヒーなど、労働環境や自然に配慮した様々なコーヒーを取り扱っています。
(参考:わたしたちができること【京都 小川珈琲 SDGs宣言】|小川珈琲株式会社)
株式会社ジモティー
中古品の譲渡や求人などを無料で行えるサービス「ジモティー」を展開する株式会社ジモティーでは、ひとり親を支援する取り組みを行っています。
同社の調査によると、日本のひとり親の約半分(65万世帯)がジモティーを利用していることがわかりました。そこで、協力企業から提供された支援物品をひとり親優先で受け渡す、物品受け渡し会を実施。元々ある自社のサービスによって「つくる責任、つかう責任」の課題を解決するだけでなく、「貧困をなくそう」という課題にもアプローチしています。
(参考:SDGs関する取り組みについて|株式会社ジモティー )
アクセンチュア
総合コンサルティング会社のアクセンチュアは、アイルランドに登記状本拠を置くグローバル企業であり、積極的なSDGsへのアプローチを行っています。LGBTに関する取り組みが進んでおり、同性パートナーを持つ社員に対し、ライフパートナー制度を福利厚生制度として提供する、職場での性別移行ガイドラインを制定するなど、日本がなかなか取り組めていない問題にも足を踏み入れています。
(参考:SDGs統合推進プログラム|アクセンチュア)
凸版印刷株式会社
凸版印刷株式会社は、「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」「エレクトロニクス事業分野」など、幅広い分野で活動をしている総合印刷会社です。
同社では、食品ロスを減らす活動として、スマート流注サプライチェーンを考案しました。スマート流通サプライチェーンとは、受発注データや物流データなどに地域イベント情報、気象情報などを掛け合わせ、正確な需要予測を可能にするものです。必要な時に必要なものだけ供給できるので、食品の廃棄が減り、環境保護につながります。まだ、無駄な労働を省くことができるという点で、労働環境の改善にも貢献できているといえます。
(参考:SDGsの先にあるトッパンが目指すミライ 「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」|凸版印刷株式会社)
佐川急便株式会社
物流事業を行う佐川急便株式会社は、地域にシルバーセンターを設置し高齢者に雇用機会を提供することで、生涯現役社会の構築を行っています。この取り組みは、高齢者に働きがいを生み出すとともに、地域のコミュニケーションを活性化させる役割も担っています。また、トラックではなく自転車等を用いた運送を行うことで、環境保全にも貢献しています。
(参考:持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み|佐川急便株式会社)
まとめ
SDGs達成には企業の力が必要不可欠であり、それぞれの分野の企業が強みを生かし、課題を解決することが求められています。SDGsを取り入れることは、社会課題を解決できることはもちろん、企業にとっても多くのメリットがあります。ぜひ自社の事業や経営にSDGsを取り入れてみてはいかがでしょうか。
「SDGsを知ることから始めたい」という方は、まずはゲームで楽しくSDGsを学んでみてはいかがでしょうか。SDGsのゲームについてご興味のある方は、こちらの記事をご覧ください。
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