updated: 2024
地域活性化の事例20選!全国の取り組みをテーマ別に紹介
目次
地域活性化とは、それぞれの地域にある資源を活用して経済活動や文化活動を盛り上げ、地域を発展させていく活動を指し、都市部と地方の人口格差などを理由に、その必要性が注目されています。
本記事では、手本となるような全国の地域活性化の事例をテーマ別に20選紹介します。
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地域活性化とは
地域活性化の活動は、地域の経済活動や文化、産業を発展させ、地域そのものを活気づけたり地域住民の意欲を向上させたりすることを目的としています。
以下では、地域活性化が必要な理由や取り組みを成功させるポイントを紹介します。
地域活性化が必要な理由
日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少を続け、2024年には1億2409万人(概算値)となっています。人口の減少に伴い労働人口も減少しており、過疎が進む地域では経済活動の維持が難しい状況が懸念されています。さらに人口が減ることで税収の減少を招き、公的サービスの充実も望みにくくなるでしょう。
また、地域経済の縮小は雇用の縮小を生みます。仕事を求めて若い世代は都市部に出ていくことで、地方には未来を担う人材が不足するため、経済が停滞するという悪循環が起きています。
総務省の調査によると、2024年には東京圏、名古屋圏、大阪圏の三大都市圏で転入超過(出ていく人より入ってくる人が多い状態)が起こっており、東京圏では12万6515人の転入超過を記録しています。これは前年と比べて2万6996人拡大しており、都市部への人口流入が増え続けていることがうかがえます。
出典:総務省統計局|住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果
地域活性化を成功させるポイント
地域活性化を成功させるには、以下のポイントを押さえましょう。
- 地域住民が主体的に取り組める仕組みを作る
- 持続可能な事業を目指す
- DX(デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を駆使してビジネスを変革し、新しい価値を生み出すこと)を進める
- グリーンツーリズムの観点から取り組む
- 若い世代が関心を持つ取り組みを行う
地域活性化を成功させるためには、地域の住民が主体的・意欲的に取り組める活動を継続することが重要です。しかし、参加者のボランタリー精神に頼った活動は長く続きません。きちんと戦略を立てて、利益や雇用を生み出せる事業をつくることがポイントです。
DXを進め効率化を追求したり、地域ならではの自然環境を生かしたグリーンツーリズムに着目したりすることが有効でしょう。特に未来を担う若い世代が地域に目を向けてもらえるよう、力を注ぐことが大切です。
農業における地域活性化の事例4選
日本全国に及ぶ地域活性化の取り組みは、さまざまな形で行われています。まずは農業に関わる事例を紹介します。
1.【集落環境の改善】岩手県二戸市
19戸の世帯で構成される岩手県二戸市門崎集落は、稲作や葉タバコなどの栽培を行っています。平成6年頃から、盆や正月に若者が帰省しなくなってきたことに危機感を持ち、平成8年から集落の環境改善に取り組み始めました。
景観づくりや村民同士のふれあいの場、コミュニティづくりのための各種整備事業を通じて、幅広い世代や都市住民との交流を実施した結果、取り組みを始めた平成8年以降4名の若者のUターン就農に成功。それからは村の人口も減少することなく横ばいで推移しました。
2.【有機栽培によるむらづくり】埼玉県小川町
埼玉県小川町下里地区では、今までブロックローテーション栽培(圃場をいくつかの区画に分け、毎年転作を実施する方式)で稲作や小麦、大豆を栽培してきました。
地域活性化のため、地域で長く有機栽培を続けている農場に協力を仰ぎ、さらに地域の豆腐店、酒造店などの加工業者と協力して、有機栽培で育てた特産物を販売。特に、有機栽培の在来品種大豆で作る希少な豆腐が評価され、大きな売上につながりました。
さらに、有機の純米酒を醸造する酒造会社と協力して運営する「米作りから酒造りを楽しむ会」を通じ、会に参加する消費者と地域住民が農作業を介して交流する関係構築が叶っています。
3.【6次産業化によるブランドづくり】千葉県香取市
千葉県香取市にて活動する和郷園は、約100軒の農家からなる農事組合法人です。野菜の需要と供給が飽和状態となった20年前から、野菜生産者の自律を目指し、野菜の差別化やブランド化に取り組んできました。
加盟農家の栽培スペックを共通化し、作物の生産から消費までの過程を公開してブランド化を図り、鮮度を保った状態で消費者の元に届けるために流通の仕組みも整えました。
また規格外野菜を加工するための加工場の建設や、野菜を仕入れる側の心理を掴むために自らスーパーを経営するなど、徹底した6次産業化に取り組み、加盟農家の平均売上高は5000万円となっています。
4.【ワインづくり】新潟県新潟市西蒲区
新潟県新潟市西蒲区の株式会社欧州ぶどう栽培研究所は、ドイツでワイン作りを学んだ経営者が「日本で育てたブドウで本物の国産ワインを作る」ことを目的に設立されました。
「東京からワインを買いに来てもらう」をコンセプトにオープンしたワイナリーでは、敷地内にガーデンを作り、レストランやカフェ、温泉など、ワインを存分に楽しめる空間を整備。年間販売量の95%がワイナリーのショップやレストランでの直接販売となっています。
まちづくりにおける地域活性化の事例3選
次に、まちづくりの観点から取り組む地域活性化の事例を紹介します。
1.【コンパクトシティづくり】北海道富良野市
北海道富良野市では、市や商工会議所と数名の有志が、廃業や転業で生まれた中心市街地の空き地を活用して、まちづくりに取り組みました。
富良野産野菜や果物、富良野ブランドの加工品、地元の食資源を活用したテイクアウトの名物などが揃った施設「フラノマルシェ」を作り、休日は最大1日1万6000人超の人を集めるほどの賑わいをつくり出しています。
マルシェづくりは衰退していた中心市街地に観光客を呼び込むと同時に、利便性に優れた施設を集約させる「コンパクトシティづくり」の面で地域に貢献。来たる超高齢化社会で、安心して暮らせるまちづくりに繋がっています。
2.【外部人材の登用】長野県飯田市
長野県飯田市を含む南信州地域は、観光資源に乏しく、集客の課題を抱えていました。そこで飯田市が中心となって「体験」を軸にした取り組みをスタート。体験観光を行う農家や住民同士の交流の場づくりに繋がっています。
事業の拡充に伴い、首都圏の旅行代理店経験を持つ移住者を支配人とした(株)南信州観光公社を設立しています。自然・歴史・食を生かした農家民泊や田舎料理体験といった体験観光の創出に成功しました。飯田市の本物にこだわったプログラムや手法は全国から注目され、成功体験を講習・研修プログラム化しています。
3.【昭和の町をテーマに商店街を再生】大分県豊後高田市
大分県豊後高田市では、地元経営者と県外から戻ってきた、地域出身の若者らが中心となって衰退した商店街の再生策を議論。コンセプト作りのため、全国の街を視察するとともに、町内の観光資源を調査しました。
参考にしたコンセプトは、当時人気だった「新横浜ラーメン博物館」の「昭和の町」です。参加・不参加店舗の差別化や、昭和にそぐわないプランは却下するなど、まちの統一感づくりを徹底させました。
その結果、年間の観光客数が2万5,712人だった平成15年と比べ、平成23年には40万1,036人と大幅に増やすことに成功しています。
教育における地域活性化の事例2選
人材教育や企業誘致に力を注いだ地域活性化の事例を紹介します。
1.【まちづくりのプロを育てる】栃木県内各地
栃木県にある宇都宮大学では、地域を支える人材を育成するため、文理を融合する教育課程を作り、地域活性化の拠点となれるような機能を強化しています。教育課程で地域の課題を伝えることで、地域課題への理解を促し、地域資源を生かしたまちづくりの専門家育成に取り組んでいます。
授業にはディスカッションやフィールドワーク、プレゼンテーションなどのアクティブラーニングを取り入れ、学生の主体的・能動的な学びを強化し、まちづくりに必要なコミュニケーション能力を高める授業を実施しています。
2.【ベンチャー企業育成】京都府宇治市
京都府宇治市では、市内の大規模工場が撤退したことで、雇用状況が全国平均を大きく下回りました。そこで、企業誘致を積極的に促進し、工場跡地の有効活用に取り組んでいます。
- 宇治ベンチャー企業育成工場・産業振興センターの整備
- 企業誘致助成金の創設・拡充
- 許認可手続きの一本化
- 開発協力金などの免除
これらの施策により、大規模工場が閉鎖した4年後にはすべての工場跡地を売却。「京都フェニックス・パーク(KPP)」と名づけ、産業振興の拠点としました。
雇用創出における地域活性化の事例4選
雇用を生み出す取り組みにより、地域活性化を導いた事例を紹介します。
1.【産学官金連携】北海道十勝地域
北海道十勝地域では、生産から販売までをシステム化した「十勝型フードシステム」の構築を目指しました。農林漁業団体や商工業団体、大学研究機関、金融機関、行政機関が協議会を設置し、食と農林漁業を中心とした経済活動「フードバレーとかち(食に関連するものが集まる場所)」を掲げています。
農林漁業の成長と食の価値を生み、十勝の魅力を発信する産業振興を展開。都市部の企業や飲食店と生産の現場をマッチングさせる事業にも注力しています。
2.【シングルペアレント受け入れ】島根県浜田市
島根県浜田市では、介護サービス事業の人材が不足している状況を踏まえ、都市部で増加しているシングルペアレントの受け入れを行いました。
次の要件を満たす対象者には、研修手当や住宅手当、養育費を助成しました。
- 高校生以下の子と共に移住できる人
- 介護サービス事業に就労可能な人
- 研修終了後も定住する意思がある人
引越し支度金の支給や中古自動車の無償提供など、ひとり親家庭の移住を徹底的にサポートし、平成27年度から平成28年度10月までで、延べ6世帯12名の移住者の受け入れに成功しました。
3.【事業所誘致と商店街再生】徳島県神山町
徳島県神山町は、人口減少が課題でした。そこでNPO(特定非営利活動)法人グリーンバレーが中心となり、サテライトオフィスの誘致を推進。多くのIT企業やデザイン会社の誘致に成功し、それに伴い移住者も増えました。
誘致開業したレストランに地元農家が有機野菜を納入するなど、地域の基幹産業である農業の活性化も見られています。
4.【漁船廃油と冬季遊休労働力の活用】長崎県壱岐市
長崎県壱岐市では、給餌の必要がないナマコや牡蠣などの自然養殖を行い、低コストかつ低環境負荷な形で事業を創出。水産品のボイル加工には、漁船廃油を使用することで、年間約27万円のコスト削減に成功しました。
この事業では冬季・荒天時の漁業における遊休労働力を活用し、地域内の所得の安定化を図りました。さらに、古くから受け継がれてきた海女の繊細な加工技術により、高付加価値の加工品を製造しています。
観光における地域活性化の事例3選
観光資源を生かして地域活性化を成功させた事例を紹介します。
1.【スノーボードの国際大会開催】北海道東川町
北海道東川町では、客数が減少する冬季観光需要を拡大する取り組みとして、スノーボードの国際大会を開催。大会終了後には選手によるスキー・スノーボード教室を実施し、リピート客の増加を図りました。
さらに大会前には「東川町国際文化フォーラム」を開催し、文化交流のある海外関係地域の観光業者や行政関係者や観光業者を招き、意見交換を行うことで、外国人を誘客する販路開拓を行いました。
2.【漁師の作業小屋を交流拠点に】岩手県大船渡市三陸町
岩手県大船渡市三陸町では、獲れた魚介類を産地でそのまま加工できるCAS(cells alive sustem)センターを作りました。これにより、漁獲量が多く市場には出回らなかった低価値の魚介類や漁獲量が極端に少ない高付加価値原料の加工・流通が可能になり、売り上げの向上に成功しています。
また、産地に興味を持った消費者が観光できるように、観光客対応できる番屋(漁師の作業小屋)を設置。牡蠣むきなどの漁業文化体験を行うなど、観光客と地域住民との交流の場となっています。
3.【芸術祭開催】新潟県越後妻有地域
新潟県越後妻有(エチゴツマリ)地域では、里山を舞台にした国際芸術祭「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」を3年ごとに開催しています。この祭典は、760平方キロメートルの広大な敷地に多数の芸術作品を展示する、世界に類を見ない芸術祭です。
全国の若手クリエイターによる地域特産品の再デザインにも取り組み、特に若い女性へのアピールに繋がっています。
住民参加・支援型の地域活性化の事例4選
住民が参加し、互いに支援し合うことで地域を盛り上げる事例を紹介します。
1.【全世帯がNPO法人に加入しまちづくり】山形県川西町
山形県川西町では、町の行財政改革に伴い、さまざまな課題が浮上。地域を再生させるため、住民説明とワークショップを3年に渡って行い、全世帯加入のNPO法人を設立してまちづくりに取り組んでいます。
子育て支援や、高齢者の安否確認や買い物サービスが可能なタブレット端末を用いた見守り活動、農業の6次産業化のための都市部との交流を行うほか、18〜25歳の若者がNPOに加入し活動に参加することで、地域指導者を育成する仕組みを構築しました。
2.【妊娠期からの切れ目ない支援】埼玉県和光市
埼玉県和光市では、妊娠期から子育て期に渡る相談支援をワンストップで行う拠点を立ち上げ、子育て世代を切れ目なくサポートできる体制をつくりました。
医療・母子保健の専門職から子育て支援の専門職までを配し、家庭のさまざまな課題に対応。若い世代が安心して出産・子育てを迎えられるよう支援しています。
3.【生涯活躍できるまちづくり】石川県金沢市
石川県金沢市が運営する「シェア金沢」は、学生から60~90代に至るまでの、幅広い世代がボランティア、農業、多世代交流、住民自治に取り組みながら暮らしています。参加団体には無償で部屋を貸し出し、それぞれの特性を生かした、まちづくりへの主体的・積極的参加や工夫を促しています。
そして、ケアが必要になった住民は、併設事業所から介護サービスを利用できるなど、居住者と事業者が協力して地域経済を回す仕組みとなっています。
4.【市民参加型で健康づくり運動】静岡県藤枝市
静岡県藤枝市では、市民と事業者、行政が一体となり、「健康予防日本一ふじえだプロジェクト」に取り組みました。運動や食事などの健康行動やNPO健診の受診などを行うとポイントが貯まる仕組みで、参加者は協力店から買い物の割引やドリンクサービスの特典が受けられます。
健康と観光を組み合わせ、複数の健康スポットを結んだウォーキングイベントを開催しました。
まとめ
地域活性化を成功させるには、住民を上手に巻き込む仕組みや持続可能な事業を目指すなど、いくつかのポイントがあります。取り組む際は、これらのポイントをしっかりと押さえることで、より効果的な施策を打ち出せるでしょう。
紹介した事例のように、地域活性化はさまざまな観点から取り組めます。事例からどのような資源が生かせるかを学び、自地域にある魅力を見直すことから始めてみましょう。
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