フレームワーク・学習法

updated: 2024 

ゲーミフィケーションとは?メリット、導入方法、事例を解説

ゲーミフィケーションとは?メリット、導入方法、事例を解説

ゲーミフィケーションとは、ゲームのデザイン要素や原則をゲーム以外の分野に応用することを指します。サービスや企業のイベント等にゲーム性を持たせることで、参加者の積極性や没入度の向上、コミュニケーションの活性化を期待できるため、新人研修や企業イベントなどのビジネスシーンや、教育現場などで導入する事例が増えています。

本記事では、ゲーミフィケーションの導入を検討している企業・自治体の担当者向けに、ゲーミフィケーションの特徴や、メリット・効果、成功事例、導入手順、注意点を解説します

 

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ゲーミフィケーションとは

ゲーミフィケーション(Gamification)とは、ゲームの要素をゲーム以外のシーンに取り入れることです。例えば、ポイントシステム、バッジ、ランキング表などのゲームでよく見られる要素を、仕事や学習、企業研修、社内教育に取り入れるといった活用法があります。ゲームの要素を取り入れることで参加者の関心を惹きつけ、生産性を促進させることが目的です。

20228月に経済産業省がゲーミフィケーションをDX人材の育成に活用する検討を開始するなど、ゲーム分野の技術や視点を、様々な異分野で応用する動きが出ています。

また、ゲーミフィケーションは、スマートフォンなどのアプリ開発とも相性が良く、すでに多くの学習アプリや生活に役立つアプリでゲーミフィケーションが活用されています。

特に、Z世代から働き盛りの40代は、生まれたときからゲームが身近にあったゲームネイティブ世代です。ゲームネイティブ世代は、ゲームのシステムや考え方に慣れ親しんでいるので、仕事や教育にゲーミフィケーションを取り入れることで、知的好奇心の喚起や参加意識の向上を見込めるのが特徴です。

参考:令和4年版 情報通信白書総務省|総論

参考:「ゲーミフィケーションをコアナレッジにしたDXに資する人材育成に係る調査及び検討会」を開始します (METI/経済産業省)

ゲーミフィケーションを取り入れるメリット・効果

ゲーミフィケーションの導入は、仕事や社内イベントに対する没入感を高めるだけでなく、コミュニケーションの活性化、自発的な学習の促進、社員のエンゲージメント向上に役立ちます。以下、メリットを見ていきましょう。

モチベーションの向上

ゲーム要素を仕事に取り入れることで、参加者は楽しみながらタスクに取り組むことができます。例えば、社員が目標を達成するたびにポイントを獲得し、一定のポイントで報酬を得られるようなシステムは、仕事や学習に対するモチベーションを高め、自己成長を促します。また、ゲーム要素のある魅力的な体験は、参加者を夢中にさせて関心を持続させる力があります。

積極的な参加による主体性の向上

ゲーム要素を研修プログラムに取り入れることで、社員はより積極的に参加し、ビジネススキルを楽しく身に付けられます。例えば、研修プログラムを複数のステージやレベルに分割し、各ステージで特定のスキルや知識を習得できるように設計すると、学習の進捗が可視化され達成感を得やすいため、研修のモチベーションを維持しやすくなります。

チームビルディングの強化

チーム内での協力を促すゲーム要素は、参加意欲を刺激しながらチームの結束力を強化し、共同作業をより楽しく効果的にするため、組織の活性化に繋がります。また、ゲームを通して仕事の進め方を疑似体験できるゲーミフィケーションは、即戦力となる社員の育成やビジネススキルの向上に役立ちます

ゲーミフィケーションの成功事例

ゲーミフィケーションは、社員社員や顧客満足度の向上に繋がるため、様々な企業で導入されています。以下では、仕事や教育にゲーム要素を取り入れて成功した企業の事例を紹介します。

社内公用語の英語化(楽天グループ)

楽天グループの創業者である三木谷氏は2010年に社内の公用語を英語化するプロジェクトを発表。TOEIC平均スコアの共有や英語トレーニングの提供など、社員の英語学習を支援しながら、ゲーミフィケーションとして「Rakuten Super English」という総合英語学習サービスを提供することで、社員全体の英語力を大幅に引き上げた事例です。

課題

グローバル企業を目指す上で課題となるのが日本人社員の英語力です。ビジネスレベルの英語力として求められるのはTOEIC700点前後ですが、当時の楽天社員の平均点は526点(201010月)と、大きく下回っていました。

方法

ゲーミフィケーションの要素を盛り込んだ総合英語学習サービス「Rakuten Super English」を導入したほか、学習者の成長状況を可視化し、達成感を味わえる仕組みを構築。また学習で苦労しているスタッフ全員に無料の英語トレーニングを提供しました。

結果

20155月時点で楽天社員(単体)のTOEIC平均スコアが800点を突破。20172月には社員の平均スコアが834点に達するなど、7年余りで300点以上アップさせました。

参考:楽天の“Englishnization”(社内公用語英語化)におけるゲーミフィケーションの実践方法について(PDF)

Language Quality Game(マイクロソフト)

Language Quality Gameは、マイクロソフト製品の翻訳業務を楽しいものに変化させたゲーミフィケーションです。Windowsなど世界中で発売されているソフトウェアのバグ(欠陥)を見つけ出す作業は、開発者にとって膨大かつ退屈になるため、その解決策として、ポイント制やリーダーボード等のゲーム要素が導入されました。

課題

マイクロソフト製品は世界中の言語に対応しており、バージョンアップするための修正が繰り返し行われています。同時に、複雑なソフトウェアの修正はエラーが付き物なので、全てのエラーを見つけ出すために、気が遠くなるほどの膨大で退屈な確認作業が必要でした。

方法

Language Quality Gameでは、エラーの発見作業にポイント付与やランキング制度を追加。エラーを見つける度に1ポイント付与され、ポイントに基づいてランキングで表彰されるため、世界中のマイクロソフト社員が他の同僚を打ち負かそうとゲーム感覚で競い合いました。

結果

参加した社員総数は4500人、チェックされたエラー数は50万件以上に及びます。しかし、参加者からは、「面白くて熱中した」「休日まで費やした」などの声が多く上がるなど、苦痛な単純作業を魅力的で楽しい体験に一変させた結果、生産性の向上に繋がりました。

参考:ケビン・ワーバック他「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」CCCメディアハウス 2013年11

ゲーミフィケーションを活用した大学教育(東京工科大学)

ゲーミフィケーションデザイナーの第一人者である岸本好弘氏が、東京工科大学メディア学部の特任准教授だった際に行った研究事例です。学生の学力低下が叫ばれる昨今、その原因を学習意欲の低下にあると分析し、通常の講義にゲーミフィケーションを導入することで、学生が積極的に授業参加するようなったケースです。

課題

大学教育において学生の学力低下は大きな問題です。文部科学省は、その要因として、①大学生全体の平均的な学力水準が昔に比べて落ちていること、②一般的に「学ぶこと」に対する大学生の意欲、関心、動機、心構えが昔に比べて劣っていることを挙げています。

方法

東京工科大学で行われた講義科目の「ゲーム制作技法の基礎」内にゲーミフィケーション要素を追加。具体的には、称賛演出や自己表現などのゲーム要素を取り入れたグループワークや対話型授業を積極的に行い、毎授業ごとの振り返りや、成績評価システムおよび中間結果の開示、アドバンス課題の達成によって高い評価を与えるなど全14種類の新たな授業デザインを加えました。

結果

受講者124名にアンケート調査を行ったところ、ゲーミフィケーションが授業の能動的な参加に繋がったと答える学生が多数を占める結果となりました。

岸本氏は、ゲーミフィケーション要素の授業への導入は、大学生の受講意欲の向上、さらに自主的な深い学びへの意欲の喚起に一定の効果があったと結論付けています。

参考:ゲーミフィケーションを活用した大学教育の可能性について(PDF)

Starbucks Earth Month Game(スターバックス)

スターバックスの「Starbucks Earth Month Game」とは、ゲーミフィケーションを用いた環境意識の啓発と顧客エンゲージメントの向上を目的としたキャンペーンです。ゲーミフィケーションの基本となるポイントシステム制やバッジ、ランキング等の要素を盛り込んだ事例です。

課題

持続可能な開発目標(SDGs)など、環境に配慮した企業活動が求められる中、スターバックス社では、顧客との関係性をより深化させてブランドロイヤルティを高める方法を模索しており、ゲーミフィケーションの導入を検討していました。

方法

会員限定のゲームである「Starbucks Earth Month Game」は、環境に優しい行動を利用者に促すアプリです。例えば、プラスチックストローの使用をやめたり、ビーガンメニューを利用したりすることでポイントが付与され、リワード(報酬)としてドリンクやフードの割引券を貰える仕組みです。

結果

ゲームが多くのユーザーに受け入れられた結果、社員は環境保全の意識を向上させた一方、スターバックスは、キャンペーンを通じて環境問題に配慮する企業としてのイメージを強化させることができました。

参考:Celebrate Planet Earth with New Starbucks Earth Month Game, Odyssey Blend, and Merchandise

ポケモンスリープ(株式会社ポケモン)

20237月にリリースとなった株式会社ポケモンが開発したアプリケーション「ポケモンスリープ」もゲーミフィケーションが活かされています。毎日の睡眠とゲーム要素と組み合わせることで、ユーザーの睡眠習慣の改善が期待されています。ゲーミフィケーションの中でも収集欲を満たしたくなる内容であることが特徴です。

課題

睡眠不足は健康に悪影響を及ぼします。特に日本人は睡眠不足で悩む社会人が多く、睡眠習慣の改善が求められています。一方、睡眠改善をテーマとするアプリは多いものの、ユーザーが継続的に関心を持ち続けることが難しく、継続的な利用に繋がりにくい点が課題でした。

方法

ポケモンスリープは、ユーザーの睡眠パターンを追跡し、そのデータをゲーム内の進行に反映させることで、睡眠を通じてポケモンとの相互作用が生まれるように設計されています。

例えば、睡眠パターンによって現れるポケモンの寝顔図鑑を完成させたり、ユーザーの睡眠時間をエネルギーに変えてポケモンを育てたりすることが可能です。質の良い睡眠を取ることで特定のポケモンの寝顔が見られるなどの独自要素も含まれており、ユーザーは積極的に良質な睡眠を意識することができます。

結果

ポケモンスリープは、日本のApp Store(※)でリリースから3週間連続でダウンロード数ランキング1位となりました。

(※)iPhoneなどのApple製品向けアプリのダウンロードサービス

参考:好スタートを見せたポケモンスリープは日本が世界最大の市場、健康&フィットネスジャンルでも独走状態|PressWalker

ゲーミフィケーションの導入手順

仕事や社内イベント、研修でゲーミフィケーションを導入する手順・方法を理解しておきましょう。

目的の設定

ゲーミフィケーションを導入する目的を明確にします。例えば、社員のモチベーション向上、社内教育の浸透、顧客エンゲージメントの強化、業務パフォーマンス向上などが挙げられます。目的に対して達成可能な目標を設定し、社員の参加意欲を促しつつ、達成可能なタスクを用意することが重要です。ゲーミフィケーションは、楽しさと成果の両方を追求するものなので、社員が自己成長と組織への貢献を実感できる環境を構築することがポイントです。

クエストの設定

次に、クエスト(参加者が挑戦するミッションや課題)を設定します。クエストは、社内教育や生産性向上などの目的を達成するのに不可欠なため、参加者にとって理解しやすく、魅力的な内容に設計しなければなりません。また、参加者がクエストに取り組む際に、ヒントやアドバイスを用意することで、初心者でも楽しみながらチャレンジでき、達成感を高めることができます。

報酬の設定

ゲーム要素として重要になるのが、クエストをクリアした際の報酬(リワード)です報酬がゲーミフィケーションの面白さやモチベーションの維持に直結するため、丁寧に設計することが重要です。代表的な報酬はポイントシステム、バッジ、リーダーボードなどが挙げられます。

代表的な報酬(リワード)の例

ポイントシステム……ゲーム内で使用できるポイントを付与する機能

バッジ……クエストをクリアすることで得られる実績を可視化する機能

リーダーボード……プレイヤーを順位付けして表示する機能

即時フィードバック要素の設定

ゲームでは、ボタンを押すと主人公がジャンプするなど、「即時フィードバック」の概念が取り入れられています。例えば、参加者が特定の行動やクエストをクリアした際、ポイントやランキングの更新、デジタルバッジの獲得などリアルタイムに反応することで、参加者は行動と結果の因果関係を理解しやすくなります。即時フィードバックは参加者を熱中させる重要な要素です。

進行度の可視化

目的達成までの進捗状況を目に見える形にします参加者自身の現在位置が可視化されることで、タスク達成に対するモチベーション維持に繋がります。例えば、リーダーボードはライバルの存在を意識させるため競争をさらに促進させます。

ゲーミフィケーションに欠かせない要素

ゲーミフィケーションのシステムを構築するうえで考慮しておきたい心理学的観点として、英ゲーム研究者のリチャード・バートルが提唱する「バートルテスト」がありますバートルテストは、人がゲームに熱中する心理や性格の特徴を4つのタイプに分けたものです。ゲーミフィケーションに参加させたい社員がどのタイプに大別されるのかを知ることで、システムやゲーム要素の設定に役立てることができます。

アチーバー(Achiever

単独行動を好み、ゲーム目標を達成することに没入感を得るタイプです。他のプレイヤーと成績を比較したり、コミュニケーションしたりすることに関心を示さないのが特徴です。難易度の高いクエストや段階的に報酬を積み上げることに達成感を感じられるゲーミフィケーションが効果的です。

エクスプローラー(Explorer

集団行動を好み、新しい知識を得ることや新たな発見をすることに満足するタイプです。ゲーム内に隠しクエストや特別な報酬を用意しておくと、他の参加者と一緒に探索を楽しんでくれます。

キラー(Killer

単独行動を好みながらも、他者との競争にやりがいを感じるタイプです。典型的なイメージとしては、一人称視点のシューティングゲーム(FPS)や対戦格闘などのゲームを好みます。ランキングボードなど他者との比較が可視化されるゲーミフィケーションに没入しやすいのが特徴です。

ソーシャライザー(Socializer

集団行動を好み、他者との協力プレイで達成感を得るタイプです。ソーシャライザーはゲーム自体よりも、他者とのコミュニケーションを重視するため、協力しながら進めるゲーミフィケーションが向いています。

ゲーミフィケーションを導入する際の注意点

ゲーミフィケーションは、バランスの設計が大切ですゲーム性が強すぎると本来の研修や学習の目的が失われる一方で、参加者の興味を引けなければ本末転倒になります。また、没入感を高めすぎるとチーム内の不和や対立を引き起こしやすくなるほか、豪華な報酬に頼りすぎてもそれ以外の仕事でモチベーションが低下してしまいます。

ゲーミフィケーションでは、結果を求めることも大切ですが、プロセスを評価することが重要です。トップレベルへの到達が必須条件ではなく、参加者が定量的な成果を達成する過程で学び、成長できるように設計しましょう。目標はあくまで達成可能なレベルにとどめ、具体的なKPI(重要達成度指標)で進捗を測定・評価します

ゲームバランスの設計では、上手な人にはより高難度のクエストに挑戦してもらいつつも、初心者には難易度が低めのステージを用意するなど、チームの特性や文化に合わせて調整することが大切です。ゲーミフィケーションを参加者のスキルに応じて丁寧に設計することができれば、社員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させる強力な武器になってくれます。

まとめ

ゲーミフィケーションは、ビジネスや教育、地域活性化と相性の良い手法です。様々な仕事や社会的課題をゲーム化することで、参加者の積極的な行動とチームの結束力強化に繋がります。各企業ではゲーミフィケーションが導入されており、多数の成功事例が報告されている一方、ゲーム要素の選定とバランスの調整は特に重要となるので、慎重に検討することが大切です。

 

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