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updated: 2023 

アクティブラーニングをわかりやすく解説!メリットや手法の例も紹介

アクティブラーニングをわかりやすく解説!メリットや手法の例も紹介

1980年代のアメリカの高等教育のなかで提唱されたアクティブラーニングは、今や日本にも浸透し、学校教育だけでなく、企業にも活用されるなど、幅広い分野の学習方法として確立しつつあります。

アクティブラーニングは、正解のない課題に対しても積極的に自分で考え、対応する力を身につけることができます。これは情報社会やグローバル化が進み、変化の多い現代において、勉強や仕事の場だけでなく、日常生活や、これからを生き抜いていくうえでも必要とされる力になるでしょう。

本記事では、アクティブラーニングとはなにか、求められている背景、メリット、重要な3つの視点や、アクティブラーニングな手法例、実施する際の注意点を解説します

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アクティブラーニングとは

アクティブラーニングとは、「能動的学習」のことで、従来の受動的な座学や講義とは異なり、受講者自らが能動的に学習に取り組める学習方法の総称ですアクティブラーニングに取り組むことで、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験が養われるとされています。

アクティブラーニングでは、複数人でおこなうディスカッションやグループワーク、現地に赴いて課題を見聞きし、考えるフィールドワークなどが主におこなわれます。講師も受講者に答えを直接教えたりするようなことはせず、場を回し、出た意見に対して疑問を呈するなど、サポートする役割を担います。

文部科学省におけるアクティブラーニング

文部科学省では、全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするための教育の基準として「学習指導要領」を公開しています。そのなかで、アクティブラーニングの考え方を取り入れた授業改善を提唱しており、そこではアクティブラーニングを「主体的・対話的で深い学び」としています。

アクティブラーニングの実施は、古くからある、座学による先生や講師が一方向的に教え、知識を習得・暗記するといった「知識の蓄積」を第一とする受動的な学習方法からの転換を目的としています。アクティブラーニングでは正解のない課題を考えることが多く、既にある知識で解決するのではなく、自らで考え、人と協力し、問題を解決していく能動的な学習です。なお、アクティブラーニングによる授業改善には、従来の受動的な学習の削減の意図はなく、バランスをもち、両立していくことが求められます。

アクティブラーニングが求められる背景

アクティブラーニングが求められる背景はいったいなにがあるのでしょうか。

それには、これまでの知識をつけ、暗記していくといった学校教育の方針と、実際に社会の現場の乖離が要因のひとつになっています。

現代は情報化社会や、グローバル化が進み、インターネットで必要な情報をすぐに得られる反面で、情報の移り変わりや、トレンドの変化も激しくなっています。これまでは正しいと思っていた知識や正解にも変化が起き、旧来の「知識の蓄積」だけでは対応できなくなっていく可能性があるため、能動的に学ぶスキルが重要になります。

こうした背景があるなか、2020年には教育改革がありました。新たな「学習指導要領」では、以下の3つの軸を「社会に出ても学校から学んだことを生かせるように」という目的で設定しており、知識の習得だけにとらわれず、その知識を生かしていくことが伺えます。

  • 学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養(※1
  • 生きて働く知識・技能の習得
  • 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成

(※1)涵養(かんよう)……水が自然に染み込んでいくイメージで、無理をせずにゆっくりと養い、育てること

平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介│文部科学省

実際に、小中高の学校教育の場において(※2)、これまでの知識や授業への理解度を試すテストから、必要な情報を自分で探し、活用する能力を重視することとなりました。また、将来的には大学入試でも、こうした知識よりも思考する力を問う可能性があるとしています。

(※2)小学校は2020年、中学校は2021年、高等学校は2022年より全面実施

教育以外でも、AIITの発展は目覚ましく、社会としても今まで以上に「今までにないもの」を生み出すことが求められています。新たなアイディアを生み出すには、能動的な姿勢、協働できる力が必要で、アクティブラーニングによって身につけられる能力は今後の未来に大きく関わるといえるでしょう。

アクティブラーニングのメリット

アクティブラーニングを実践することで得られる具体的なメリットを紹介します。

問題解決能力の向上

アクションラーニングでは、答えを教えてもらうのではなく、自分や、時には誰かと協力して答えを考えていきます。

自分で答えを探す姿勢と、誰かに協力してもらえるように説得する過程を経験することで、問題解決能力の向上が期待できます。

主体性が身につく

講師はあくまでサポートに徹し、受講者の話を促す、疑問を呈するといった役割を担います。

そのため、受講者は自分で能動的に考え、答えを導き出す必要があり、自然と主体性が身についていきます。

コミュニケーション能力の向上

ディスカッションやグループワークなど、複数人での作業や協力が多いのがアクティブラーニングです。

自分の意見を伝えるだけでなく、相手の意見も聞き入れて議論するなど、コミュニケーション能力が養われます。

発想力や創造力が身につく

アクティブラーニングでは、答えのない課題に取り組むことも多いです。

【例】

  • 地域のゴミの分別ができていない問題の解決策
  • 地球上の海を綺麗にする方法
  • 企業の情報漏洩を防ぐためのセキュリティーを考える

 

このように正しい解答がないからこそ、自分ならどうするかを考えることができ、独創的な意見も出やすく、発想力や創造力の向上につながります。

アクティブラーニングの3つの視点

文部科学省では、アクティブラーニングを「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という、3つの視点のイメージを提示しています。

これら3つ押さえることが講師側にも、学ぶ側にも、アクティブラーニングの効果を十分に発揮させるうえで重要です

主体的な学び

主体的な学びとは、学ぶことに興味や関心をもって取り組むことです。

この際、ただ学ぶのではなく、自分が将来どうなっていくのか、そのキャリアを立て、関連付けて学ぶことが重要です。キャリアに目を向けた長期的な視野をもった粘り強い学習をおこない、学習した内容も振り返り、次につなげていきます。

対話的な学び

対話的な学びとは、自分だけで学ぶのではなく、他者と対話して自分の考えを広げていくことです。

ここでいう他者とは、自分と同じ受講者や、講師との会話のみならず、社会で働く人たちや、地域の人たちの課題を知り、考えたりすることも含みます。また、本に書かれていた考えを自分の考えと照らし合わせて考えることも対話になります。

自分の考えを他者と意見交換し、自分の意見が本当に合っているかを検討する機会にし、新たな気づきを得ていきます。

深い学び

深い学びとは、得た知識の「見方・考え方」を働かせ、知識を相互に関連づけるなどをし、深い学びへとつなげることです。やや抽象的ですが、簡単にいうと「身につけた知識を、知識として保管せずに、発展させていくこと」といえ、これこそが従来の「知識」におさまらない「思考する力」といえます。

得た知識がもつ特有の「見方・考え方」をもとに、他の知識との相互に関連づけられる点がないか、情報を精査することで見えてくるものがないか、などを考えることで、新たな解決策やアイディアが創出されていきます。

深い学びが欠けてしまうと、表面的なアクティブラーニングになってしまうという失敗例もあり、非常な重要な視点になります。

アクティブラーニングの手法の例

ここではアクティブラーニングの手法の例を3つ紹介します。

ジグソー法

ジグソー法とは、チームやグループの「協働学習」を促す手法のひとつで、アメリカの心理学者であるエリオット・アロンソンが提唱したものです。

ジグソー法を用いることで互いに教え合い、協力し合うことが自然とおこなえるようになります。

【やり方】

  1. 最初にホームグループとして、4人1チームを計4チーム作る(※人数やチーム数は一例であり、規模や課題によって変更可能)
  2. 講師が課題内容を発表し、ホームグループ内で課題に応じた役割をA、B、C、Dと各人に割り振る。割り振られた役割の内容がその人の「エキスパート」となる(Aであれば、Aの内容のエキスパート)
  3. 各グループから役割に応じたエキスパートを集め、AからDまでの4グループに分かれる(Aグループであれば、各ホームグループのAの役割の人だけを集めたグループになる)
  4. 課題解決に必要な内容をそれぞれのグループが役割に応じて学んでいく。これを「エキスパート活動」と呼ぶ
  5. エキスパート活動を終えたら、もとのホームグループに戻り、AからDまでが学習した内容を共有し、互いに教え合う
  6. 協力し、コミュニケーションを取り、合意形成をとりながら各グループで課題解決をおこない、最後に全体の場でホームグループごとの発表をおこなう

ケースメソッド

ケースメソッドとは、実際に起きた事例をもとに、なにが課題であったかを探り、解決策をグループで導き出す手法です。

解決するまでの道のりを疑似体験できるほか、事例をもとにするため、似たようなケースに遭遇した際に解決できる可能性が生まれ、倫理観や心構えの面でもプラスの効果があるとされています。

【やり方】

  1. はじめに個人で事例をもとに分析をおこなう。原因はなにであったのか、どうすれば解決するのか、自分の考えのフローから誰かに説明できるように整理しておく
  2. いくつかの小グループに分かれ、自分の考えを発表し、議論を交わし、小グループとしての結論を出す
  3. 最後に小グループごとの結論を全体で発表し、同じように全体で議論をし、全体としての結論を出す

全体の結論に対して講師が正解か、不正解かを無理に決める必要はありません。あくまでグループで思考していく過程が重要になります。

マイクロ・ディベート

マイクロ・ディベートとは、31組でおこなうディベートの縮小版です。

与えられたテーマに沿って議論を交わし、瞬時の判断力や論理的思考力、自分がどう思ったかを簡潔に伝える能力などが養われます。

【やり方】

  1. 講師は対立するような課題を発表する(例:お金があれば幸せである)
  2. 受講者は、肯定派、否定派、それぞれの立場になった場合を想像して、論拠を5つ以上書き出す
  3. 3人1組を作り、「肯定派の人」、「否定派の人」、「その2人の論拠のどちらに正当性があるかを判断する人」の3役を順番に回して、計3回のディベートをおこなう

アクティブラーニングの注意点

アクティブラーニングを実施する際の注意点を紹介します。

目指す先を決める

アクティブラーニングは学習法であり、形式のひとつでしかありません。

そのため、形式的におこなっても、ただ他者と会話して終わってしまう、ディスカッションやグループワークは実践したものの「楽しかった」という感想しか出てこないなど、深い学びを得られない可能性が高いです。

そうならないためにも、アクティブラーニングの目的とゴールを明確化し、実施する内容に意義をもたせる必要があります

講師にも技術が必要

講師は、受講者につい口出しをしてしまったり、解釈を促したりしてしまいがちですが、受講者が能動的に学習していくことが重要なため、我慢する力も必要です。

しかし、どこまでが受講者の意見で、どこからアドバイスすべきか境目が曖昧で、判断が難しいことも多いでしょう。

そのため、講師のファシリテーション能力を鍛えることも重要です。以下は講師の方針の参考です。

  • 最初に目的を共有する
  • 中立を保ち、公平に接する
  • 意見を正確に受け止め、深掘りする
  • ファシリテーターの判断で意見を却下せず、積極的に取り上げていく
  • 話が課題から逸れていないかに注目し、逸れている場合には指摘をする

受講者の性格に左右されることがある

すべての受講者が能動的にアクティブラーニングに参加できるとは限りません。能動的に参加したのではなく、参加させられている場合もあり、個々の性格にも左右されます。

誰かと協力することの多いアクティブラーニングですが、ひとりでもモチベーションの低い受講者がいると、周囲のモチベーションも低下してしまうなど、影響は大きいです。

そのため、最初にどのような目的で実施しているかを提示し、受講者に「能動的に取り組む意味」を理解してもらうことが重要です。

また、ゲーム形式のアクティブラーニングであれば、自然と参加しやすく、楽しんで取り組んでもらえることもあるでしょう。うまく取り組めていない場合には導入を検討してみるのもよいかもしれません。

グループで能動的な学習がおこなえるビジネスゲーム「合意形成研修コンセンサスゲーム」

「合意形成研修コンセンサスゲーム」とは、株式会社IKUSAが展開するサービスです。

コンセンサスゲームとは、ある課題をもとにグループで話し合い、合意形成していくゲームです。

ゲーム全体の流れは、はじめに課題の対処法を個人で考え、その後にグループで話し合い、結論を導き出します。そして、専門家の結論と見比べ、妥当性を判定し、合意形成を得るための要点を解説して、各チームで振り返りをおこないます。

個人ワークとグループワークの流れを通じて、他者との考え方のちがいを理解し、自分の考えの幅を広げることができるでしょう。

こうした一連の流れは、アクティブラーニングの主体的な学び、対話的な学び、深い学びを実現しているといえます。

また、コミュニケーションをとるなかで、相手の話に耳を傾ける傾聴力や、グループでの協調性を学ぶことができ、チームビルディングにもなります。全員の考えをもって結論を決めていく必要があるため、誰かが置いていかれることなく、自然と全員で能動的にコンセンサスゲームに取り組むことができます。

合意形成研修コンセンサスゲームには、取り組む課題となるストーリーに以下の2種類が用意されています。

ジャングルサバイバル

ジャングルをクルージング中に大破してしまった船から、必要な積み荷をグループで話し合い、生き残る最善策を探し出します。

帰宅困難サバイバル

実際の都市で起こり得る災害をもとに、グループで必要な物資に優先順位を付けていきます。防災知識も一緒に身につけることができます。

当日の運営や、機材についてもスタッフに全て任せることができるため、初めてでも安心です。

まずは一度、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

ここまでアクティブラーニングについて解説してきました。

変化の激しい現代は、未来においてさらなる変化があり、大きな困難が待ち受けている可能性も少なくありません。アクティブラーニングにより、状況に即した知識を自ら見つけ、思考する力を身につけることで、困難にも立ち向かいやすくなるでしょう

本記事で紹介した、アクティブラーニングの3つの視点や、手法を活用し、皆が能動的に取り組めるアクティブラーニングを実践しましょう

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この記事を書いた人

湯川 貴史
1989年生まれ。趣味でゲームを作ったり、文章を綴ったりの日々。前職はゲーム開発関連に携わる。現在は素敵な妻と、可愛い二人の子どもと共にフリーランス生活を謳歌。
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