posted:2022 02.28
updated: 2022 10.21
ワークエンゲージメントとは?高める方法についても紹介!

従業員の心身の健康の維持やパフォーマンスの向上を目指すための取り組みとして、ワークエンゲージメントが注目されています。この記事では、ワークエンゲージメントの概要や、ワークエンゲージメントを高めるメリット、測定方法を紹介。さらに、ワークエンゲージメントを高める方法も解説します。
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ワークエンゲージメントとは?
ワークエンゲージメントとは、熱意・没頭・活力が満たされている状態です。
具体的には、活力は仕事における高いエネルギーや、精神面における回復力、モチベーションの高さなどを指します。
また、熱意は、仕事に強く関与し、仕事に熱中したり、誇りを持ってチャレンジする意欲がある状態のことです。なお、没頭とは、夢中で仕事をこなす幸福感や時間が早く経つ感覚を得られることを指します。
ワークエンゲージメントは、従業員や組織に対して肯定的な影響を及ぼす概念であることから、学界だけではなくビジネス界でも注目を集めています。
ワークエンゲージメントと対極の関係にある心理状態として、「バーンアウト」があります。「燃え尽き症候群」とも言われる状態であり、「自分はこんなに頑張っているのに、なぜ成果が上がらないのか」という思いが募ったときに、なんらかの原因が引き金となって燃え尽きることです。突然休職したり、離職したり、うつ病になってしまったりします。ちなみに、バーンアウトは、人間を相手にするヒューマンサービス業に起こりやすいと言われています。
ワーカホリズムとは似ているようで違う
ワークエンゲージメントとワーカホリズムは、仕事に没頭していて仕事以外のことが考えられない状態になっているという点では似ています。しかし、仕事に対するメンタルの考え方が大きく異なっています。
ワークエンゲージメントは、前述のように「活力・熱意・没頭」という3つの要素から構成されているのが特徴。仕事に没頭してのめり込む前提として、仕事に対するポジティブな「活力」と「熱意」が存在しています。
一方、ワーカホリズムは、「やらされ感」が強いのが事実。「他社との競争に負けないため」や「不安を回避するため」に必死になっている状態であり、ネガティブなメンタル状態が特徴です。
したがって、ワーカホリズムよりも、ワークエンゲージメントが高い状態を目指す方が、仕事に対する継続的な意欲が湧きます。結果的に、心身が疲弊することなく良い状態を保てるでしょう。
ワークエンゲージメントを高めるメリット
ここからは、ワークエンゲージメントを高めるメリットを5つ紹介します。
心身の健康維持に繋がる
心身の健康維持に役立ちます。ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事をする上での心理的苦痛が少ない傾向にあるのです。身体に問題があるわけではないのに、不調を感じることも少なくなります。
ワークエンゲージメントが向上すると、仕事をする上での心理的なストレスや苦痛を感じにくくなり、従業員のメンタルヘルスを守ることに繋がるのです。
さらに、心理的なストレスが軽減するため睡眠の質が向上し、身体の健康状態を改善する働きも期待できます。多くの組織では従業員のストレス低減のために、ストレスマネジメントを実施しています。しかし、これはあくまでもストレスの発生が前提です。
ワークエンゲージメントが高くなると、従業員はストレスを感じにくくなるので、結果としてストレスが発生しにくい組織になります。結果的にストレスでイライラする従業員を減らせるかもしれません。
これにより、ストレスの伝染を防ぐことにも繋がります。
コミットメントを意識するようになる
ワークエンゲージメントの向上は、仕事に対するコミットメントを意識させたいときに役立ちます。ワークエンゲージメントは、そもそも従業員個人と仕事との結びつきの強さに注目しているもの。ワークエンゲージメントが高くなると、仕事に対する満足感が高くなり、仕事に対するコミットメントを意識するようになってきます。
さらに、仕事そのものだけでなく、他の従業員や組織全体に対する愛着やポジティブな発想が生まれやすくなります。結果的に、組織全体に対する帰属意識や貢献度の向上が期待できるでしょう。
組織に対するコミットメントを意識するようになり、コミットメントそのものが向上します。
離職率の低下
ワークエンゲージメントの向上は、離職率を抑えることにも有効です。
前述のように、ワークエンゲージメントが高くなると、仕事や組織に対するコミットメントが高くなります。そのため、従業員の離職率の低下に繋がるのです。
ワークエンゲージメントが高まれば、仕事や組織に対する従業員満足度も上がります。仕事や組織に誇りや意欲を持っている状態であれば、「会社を辞めたい」という気持ちが起きにくくなるでしょう。
さらに、仕事上のチャレンジを受け入れてくれる環境があれば、「この会社で働き続けたい」と考える従業員も増えるはずです。
このような離職率の減少は、その組織に大きなメリットをもたらします。社員が辞めにくくなるので長期的な育成施策を実施したり、人材採用のコストや新入社員教育・人材育成・教育などに関するコストを削ったりすできます。会社の人件費を無駄にしたくない企業に有効です。
仕事のパフォーマンスアップ
ワークエンゲージメントを高めることで、仕事のパフォーマンスアップに繋がります。
従業員が仕事に対する熱意や誇りを持つので、「もっと頑張りたい」という感情が強くなり、積極的に職務能力を成長させようとします。
仕事に役立つ技術や知識を身につけるために、自主的に仕事に関連する学習をするなど、自己啓発の機会が増えます。そして、自己啓発学習によって技術や知識を身につけた従業員は、質の高い仕事を積極的に行うだけでなく、役割行動やそれ以外の業務にも前向きに取り組むようになります。
また、従業員は自分の可能性を広げるために困難な仕事にも挑戦するようになり、組織が対応できる仕事の範囲も広がっていくでしょう。このように、学習機会が増えた従業員がいる組織では、従業員同士がお互いに良い影響を与え合うので組織全体が活性化し、各々のパフォーマンスがアップするのです。
ワークエンゲージメントを高めることによって、従業員が会社との関わり方をより良くしてくれます。最終的には組織の活性化に繋がるでしょう。
社内の士気アップ
社内の士気アップを狙っている人にとって、ワークエンゲージメントの向上は必須です。
ここまで説明してきた通り、ワークエンゲージメントが高まると個々の従業員の心身の健康が保たれ、コミットメントを意識するようになります。
さらに離職率が低下し、仕事のパフォーマンスアップも期待できるのです。これらの相乗効果により、サービスの質や顧客満足度も高まれば、企業の業績アップも夢ではありません。
上記の通り、ワークエンゲージメントを改善することで、多方面への好循環を生み出します。目に見える効果が出てくれば、組織全体の士気がアップするでしょう。
ワークエンゲージメントを測る方法
ワークエンゲージメントを測るときの方法はいくつもあります。ここでは方法を3つ紹介します。
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)
MBI-GSは下記の16項目を基準に測定するものでMaslach Burnout Inventory-General Survey(マスラック・バーンアウト・インベントリ–ジェネラル・サーベイ)の頭文字からきています。
この測定方法ではワークエンゲージメントそのものを測定するわけではありません。測定する項目は、ワークエンゲージメントとは真逆の「バーンアウト」です。
次の合計16項目の質問に対して、7段階スケールで回答をしてスコア化しバーンアウトの度合いを測定します。
- 「疲弊感(Exhaustion)」×5項目
- 「シニシズム(Cynicism)」×5項目
- 「職務効力感(professional efficacy)」×6項目
MBI-GSの測定結果が低ければワークエンゲージメントが高い、測定結果が高ければワークエンゲージメントは低いと判断できます。
ここで言う「疲弊感」とは、仕事に由来する疲弊のことです。
「シニシズム」とは、仕事に対する熱意や関心を失い、もうどうでも良いと仕事に対して心理的に距離をおいてしまう態度のことです。
「職務効力感」は仕事に対する自信ややりがいであり、バーンアウト状態ではこれが低下します。
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)
OLBIもMBI-GSと同じく、バーンアウトを基準にして測定します。Oldenburg Burnout Inventory(オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリー)の頭文字をとったもので、MBI-GSと同様に、バーンアウトを測定することによってワークエンゲージメントを求めるものです。
OLBIは、先に開発されていた前述のMBI-GSの測定項目を補足するために開発された測定方法で、質問内容は,「疲弊(exhaustion)」と「離脱(disengagement)」というネガティブな2項目で構成されています。
これらの質問への回答をスコア化して、バーンアウト度合を測定。OLBIの測定結果が低ければワークエンゲージメントが高い、測定結果が高ければワークエンゲージメントは低いことがわかります。
UWES(Utrecht Work Engagement Scales)
UWESは「活力・没頭・熱意」の17項目によって、尺度を測ります。Utrecht Work Engagement Scalesの頭文字をとったもので、ユトレヒト大学のシャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授らによって開発され、別名「ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度」とも呼ばれています。
ワークエンゲージメントの測定方法として高い安定性を持っているので、世界中で使用されています。
UWESでは、ワークエンゲージメントの3要素である「活力」「熱意」「没頭」を17の質問項目に盛り込んで質問をし、回答を「いつも感じる(=6点)」「とてもよく感じる(=5点)」「よく感じる(=4点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=2点)」「ほとんど感じない(=1点)」「全くない(=0点)」の7段階スケールでスコア化します。
合計は54点満点。38点(平均4.2点)より高いと「エンゲージメントが高い」、28点(平均3.1点)より低いと「エンゲージメントが低い」、と診断されます。
ちなみに、日本では、日本人に合わせた日本版UWESがよく用いられています。これは9つの質問項目に限定された短縮版です。
ワークエンゲージメントを高める方法
最後にワークエンゲージメントを高める方法を見てみましょう。
仕事に取り組みやすい環境を作る
ワークエンゲージメントを高めるためにも、従業員が仕事に取り組みやすい環境を作りましょう。
「仕事に取り組みやすい環境」とは、言い換えれば「働きやすい環境」です。「働きやすさ」は、自分の仕事の意義・重要性に関する説明が行われること。また、自分の意見や希望が受け入れられる環境が整っているという「自己効力感」が重要です。さらに、社内で「相談できる体制」や「福利厚生」などの雇用管理が整備されている場合に、ワークエンゲージメントが高まる傾向にあります。
このように自分の職場が「働きやすい環境」になっていれば、ワークエンゲージメントの要素である仕事に対する「活力」や「熱意」が湧き、仕事に「没頭」できるようになるでしょう。
仕事とプライベートを充実させる
仕事とプライベートを充実させることで、ワークエンゲージメントの向上を期待できます。
仕事とプライベート(ライフ)の関係を表す言葉に、「ワークライフバランス」があります。この「ワークライフバランス」は、「一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できること」と定義されています。
「ワークライフバランス」に関して、仕事とプライベートのどちらかを取捨選択することと誤解しているケースもあります。しかし、本当の意味は「プライベートの充実によって、仕事のパフォーマンスを向上させ、さらにプライベートが充実する」ということです。
つまり「ワークライフバランス」で仕事とプライベートを充実させることで、ワークエンゲージメントを高められるのです。
自己肯定感を上げる
自己肯定感を上げることは、ワークエンゲージメントを高めるときに効果的です。
自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定する、好意的に受け止められる感覚」のこと。自己肯定感が高いと希望や自信を持って日々を過ごすことができ、仕事や健康に良い影響が出てきます。
逆に、自己肯定感が低いと諦めやすくなったり、トラブルが起こりやすくなったりして、未来に対する建設的なものの見方ができなくなります。
自己肯定感を高める方法として、「気づき」「受け入れ」「許可」の3つのステップが挙げられます。
ステップ1では自分がダメだと思っていることを、「私は」を主語にして文字で書き出します。たとえば、「私は仕事ができない人間だ」などです。
ステップ2では、ステップ1で書き出した否定的な文言に対して、「と、今は思い込んでいる」または「と、今は感じている」という言葉を追記します。
たとえば「私は仕事ができない人間だと、今は思い込んでいる」などです。
ステップ3では、心の中でつけている制限を緩和させて、新しい希望を見出す「◯◯してもよい」という言葉に変えていきます。
具体的には、「私は仕事ができない人間だ」を「仕事ができる私になっても良い」です。
この3つのステップは、自分が持っている否定的な考えに気付き、それを事実ではなく思い込みであることを受け入れ、最初の一歩を見出していくための方法です。
とくに自身を受け入れられなかったり、自分の否定的な面ばかり感じたりする人は、この3ステップを実践した方が良いでしょう。
まとめ
ワークエンゲージメントの概要と高める方法について解説しました。少子高齢化の進展により労働人口の減少が深刻さを増しています。
近年では、働き方改革などの取り組みも進められていますが、それぞれの組織では従業員一人ひとりのパフォーマンスを上げていくことが求められている状況です。
自分の会社をより良い組織にするために、ワークエンゲージメントの向上は欠かせません。ワークエンゲージメントを高めることで、従業員は主体的に考えて働くようになり、大きなパフォーマンスを発揮するようになるのです。